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イザナギ現象

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 僕は彼女の事を心から愛していた。見た目、セックス、性格のほとんどを愛していた。一流会社で仕事は出世頭だったし、一生の伴侶も見つかったと思っていた。


 ただ、僕の車を彼女が運転するとき、性格が豹変した。自転車・バイクへの幅寄せ。車間距離ギリギリの煽り運転。ちょっと前の車がもたもたしていると、舌打ちしてクラクション連打。横断歩道で止まっている車を反対車線に出て追い抜く。渡ろうとした子供に見向きもせずに。


 いつもそんな運転しているの? と聞くと、

「何、なんか文句有るの?」と返ってきた。


 同棲を始めたばっかりで蜜月の時期だったけど、このマナーの悪さは僕の心にずしりと来た。

 結婚を考えていたが冷めてしまった。


 彼女は僕に接するとき猫を被っている。

 僕は日頃飲まない酒を買ってきて彼女に飲ませてみたら、バッグからタバコを出すと吸い始めた。そして、絡み酒。


 幻滅した。どうみても別人格だ。僕は彼女いる部屋に帰るのが嫌になった。顔も見たくないし、話もしたくない。仕事で遅くなったと言ったが、実は別れる算段をしていた。


 ある日会社の行事で定時で帰る羽目になり、重い心で帰ったところ客がいた。

 知らない男。

 どういうこと? と言いながら、別れる理由ができたと内心喜んだ。


――違うのよ!

 彼女は必死だった。多分僕は優良物件だったので結婚する気満々だったのだろう。

――別れるくらいなら、あなたを刺して私も死ぬ!

 包丁持ち出して迫ってくる彼女に、僕は逃げ出した。


 どうしたらいいのか? 僕は悩みつつ、ふと、縁切り神社なるものが割と近くにあることを思いだした。車で行った……はず。


 そこまでは覚えている。縁切り神社に行ったことは。その後何があったのかなぜか覚えていない。いつの間にか彼女は家から居なくなったし、


 そもそも、彼女の名前が思い出せない。LINEのIDも消えている。


 断片的な情報しか残ってない。紹介した友人も彼女の事を思い出せないようだ。


 心配なのは縁を切るのに何を代価にして祈ったのかということだ。


 そんなことすら思い出せない。

 この神社はこの地方に実在する。

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