12.今後の話
わたしの話を聞き終わったプラロさんは、静かに息を吐きだした。
「それは予言かい?」
「そうですね。そうなる未来もあるという可能性の話ですわ。でも、このまま動かなければ領地と森が燃やされるのは避けられないと思うわよ」
「……そうかい。なら黙っているわけにはいかないな」
プラロさんはわたしをまっすぐに見つめてきた。
「ミラーシスのことを言い当てたお前さんの言うことなら、それなりに信憑性はあるね。あの国ならやりそうだ」
「信じてくれるの?」
「信じずに森を焼かれるのはごめんだからね。なにもなければそれでいいし」
プラロさんはそう言うと瞼をかいて、口元に笑みを乗せた。
「でもお前さんのことだ。ウチに話したってことは、なにか策があるんじゃないのかい?」
にっこりと笑みを浮かべる。
彼女のいう通り、対策は考えてあるのだ。
「あの国に属していては安寧が訪れることがないのなら、独立してしまえばいいのよ」
「独立?」
「そう。平和に暮らせる国を作り、カタフニアの陰謀を阻止するの」
カタフニア王国の侵略の糸口は古代樹の森にある。
となれば、森を死守すれば未来に起るであろう戦争を食い止めることができるはずだ。
そのためにもカタフニア王国の一領地としてではなく、一つの国として独立することが必要だ。
領地を燃やす口実を潰すために。
「……何を言い出すかと思えば、国をつくるねぇ。ずいぶんと大きく出たもんだ」
そう思って話すと、プラロさんはくつくつと笑い出した。
国をつくると言ったのがよほど面白かったらしい。
「そうでもないわよ。独立に必要なのは民と領地、主権……つまり他国の承認。それさえあれば国として成立するの。承認を受ける国の目星もついているし、あなた達の暮らすこの森と共にあれば領土も申し分ないわ」
「つまりウチらとお前さんらの異種族国家ってことかい? そんな国、人間たちからしたら認めたくないと思うがねぇ」
「あら。人間だろうが獣人だろうが、大事なのは人となりでしょ? 種族がなんであれ関係ないわよ。そんなことわたしが言わせないわ」
「ぶっ、くくく! あっはっはっは!」
ついにプラロさんは噴きだした。
ひとしきり笑うと滲んだ涙を拭い、手を差し出してくる。
「お前さんが言わせない、ねぇ。面白いじゃないか。いいだろう。森を守るためなら手を貸すよ」
「ふふ。よかった。よろしくね」
差し出された手をしっかりと握り返す。
また一歩、未来を変えるための歩みを刻むことができた。
この調子で進んでいけば、独立の日も遠くないだろう。
「それで? あの国の野望を阻止するためにどうすればいいんだ?」
プラロさんは手を離すと、さっそく今後のことを聞いてきた。
やる気は十分といったところだ。
「そうねぇ。今は水面下で力をつける必要があるわね。わたし達はほら、健康状態とかもあるし、あなた達は猛獣化に備える必要があるでしょう?」
「そんな悠長にしていて大丈夫かい? 国にウチらが手を組んだのがバレるかもしれないんだよ?」
「ああ、それなら大丈夫だと思うわ。だって罠をいくつも用意してきたもの。力を溜める時間くらいは稼げるはずよ」
「罠? いったい何を仕掛けてきたんだい?」
ふしぎそうに首を傾げた彼女ににっと笑いかける。
「大した事ではないけれど、世話になった家の家業を落とす罠だったり、婚約者の不貞を大々的に発表できるような罠だったり、婚約者を奪ったご令嬢の信用を落とすための仕掛けだったり? どれももう動き出しているはずよ」
いたずらっぽく答えると、プラロさんは苦笑いをした。
「恐ろしいな。奴らへの復讐のつもりかい?」
「まさか! わたしはただ、大切なものを守りたいだけ。そのために国力を削る必要があったから、彼らをターゲットにしただけよ?」
「わはは! これはこれは。聖女様は悪女でいらっしゃる」
「いやね。わたしは彼らが付けたレッテルを正しく使ってあげているだけなのに」
にっこりと笑って見せる。
わたしを悪女と呼んだのはあの国だ。
だったらその責任は取ってもらわねばならないだろう。
お望み通り、国を亡ぼす稀代の悪女になってやろうではないか。
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