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てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


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変わらずの指輪 6

家にあった『水晶通信(すいしょうつうしん)』であたし達はウィザードギルドとファイターギルド(ファイターギルドは関心薄そうだった・・)に報告し、

ドールテイマーギルドへはテパリアーカ様が報告し、その後でテパリアーカ様は他にもあちこち連絡を取り出したけど、


あたし達と既にドラミンぬいぐるみをベッド代わりに『ガッツリ昼寝』をしていたユパアーカを習って仮眠を取ることにした。


エリオストンは回復薬(ポーション)1本飲んでケロっとしてたけど、あたしは無理!


仮眠の後で野菜中心で薄味の遅めの昼食を御馳走になり、もたもたし過ぎてテパリアーカ様にドヤされて半泣きになってたユパアーカの支度が整うと、出発と相成った。


取り敢えず、近くにムーンハート家のドールテイマー達が拠点にしているらしい魔除けの野営地があるから、そこを目指す。

色々な勢力が動いてるけどあたし達が使える最大のコネクションはここだろ、と。


「お婆様、見送りに出てきてくれない・・」


また頬を膨らませてるユパアーカ先輩は変わらず暗色系だけど、フリフリの装飾は控え目のチノパンスタイルの旅装に着替えていた。髪も纏めてる。

見送りは7体の小さなサーバントドール達だけだった。


「片付いたらまた会えるさ」


「告げ口魔に里心が付かないように気を遣ってくれてんだよ」


「・・お前、嫌い!」


ちょっと半泣きになったユパアーカはドラミンをあたしの方の騎竜の鞍の後ろにポイっと投げて変形させて固定具付きのクッションのようにした。

いきなり何か変なの乗せられて騎竜もギョッとしてる。


「座席? というか、あたしよりエリオストンの方が騎竜の扱い上手いよ?」


「ドラミンの上なら振動が少ない。お前は嫌いだけどアイツにしがみ付くのは嫌!」


「ほぇ~、エリオストン氏~、チビっ子にもすんごい警戒されてますよぉ~? へっへっへっ」


「嫌味だなぁ」


多少チョケつつ、あたし達3人は騎竜に乗った。


「お婆様、行ってきます・・」


「オ達者デェ~」


「ゆぱあーか様頑張ッテー」


人形達に見送られて、


「よし!『ミドリコ隊』出発だよ!!」


「・・お前がリーダーなの?」


全然懐いてくれそうにないユパアーカに脇腹の下辺りを持たれてるのがこそばゆい中、あたし達はテパリアーカ様の家を後にした。




その様をテパリアーカは2階の窓のカーテン越しに見送っていた。


「わざわざ来るなら会って助言の一つでもしてやればいいんだよ。アレは放っとくと糸が切れた凧だよ?」


後ろに話し掛け、人形の自走車椅子を反転させるテパリアーカ。


「あまり構うと図に乗ったりうるさがったり扱い難い子何だ」


古いティーテーブルに着いて、菓子皿とティーカップを空にしていたウィザードギルド3級指導官のヴァルトッシェが、ややうんざり顔で答える。


「ギルドの図書館で半端に調べただけでここを特定してすぐに来たのも驚いたけど、ヴァルトッシェ、あんたが血相変えて様子を見に来たのはより驚いたね。ふふっ」


「血相は変えてない」


ムッとするヴァルトッシェ。


「君の『短絡的かつ実践主義的態度』は学生の頃から一貫してるから危ぶんだだけだ」


「学生の頃ね。昨日のことのように言う。これだからハーフエルフは」


「テパリアーカ、君の人生最後の役割をこの古びた家の墓守にはしたくなかった。ここからは私達とドールテイマーギルドに任せてくれ、踊り手は手強い」


「元よりとっくに引退した身だ。あとは若者達と、時間を越えられる長命種のあんた達に任すさ」


「ああ。確かに。それじゃもう行くよ、家の始末はギルドに任せて君も一刻も速くここから去るように。茶と菓子、美味かった。砂糖は使わない蜂蜜まみれのチェリーパイ、何十年ぶりだったよ?」


ヴァルトッシェは笑って言い残し、左手の腕輪を使って中距離転送術(てんそうじゅつ)で去っていった。


「今はドールに作らせてるけどね。・・さて、足手まといはごめんさ。お前達、手早くしな。店仕舞いだよ?」


テパリアーカは部屋に引き入れた小さな7体のサーバントドール達に指図して、家から引き払う準備を始めた。


この部屋の片隅には、表情は明るく眉も凛々しいがユパアーカによく似た若かりし頃のテパリアーカと、やはり若々しく服装も落ち着いて眼鏡を掛けたヴァルトッシェが親しげに並んで描かれている魔法道具『動く絵画』が飾られていた。



すっかり日が暮れてる。こうなると魔除けを提げた騎竜でも街道から外れて走れば、魔物に絡まれまくるっ。


一応、遠目に魔物が反応し難い『陰火魔法(ネガトーチ)』の青白い火を数個先導させてるあたし達は、『魔犬(ワーグ)』数十体の群れに追われていた!


「ユパっち! ブレスで追っ払ってくんない?」


「・・今、ドラミンはお尻の下。無理。あと、その呼び方やめて」


ユパアーカ先輩の呼び方安定しね~。そして腰、重いなこの子!


「取り敢えず先頭は崩してみようっ」


エリオストンは器用に身を捻って刺激臭を出す『臭い玉(においだま)』を数個投げ付けて、

ワーグ数体の眉間や鼻先に命中させて臭気ガスで前列に「ギャウンッ」と悲鳴を上げさせて総崩れにしたけど、まだまだ何十体も続いてくるっ。何かどんどん増えてない??


「倒す分には何とでもなるけどっ、他の魔物招きそう何だよね!」


どーしよ? 件のムーンハート家の野営地までもうすぐ何だけどな。


と、前方から気配!


「何何?」


「魔物じゃないな。騎馬の音だっ、5騎!」


「野盗じゃないよねっ?」


念の為に片手で手綱操るのにヒヤヒヤしながら左手だけでストライカーワンドを抜きつつ、ネガトーチの陰火(いんか)を1つかなり前に先行させる。

エリオストンはウワバミの腕輪から『ジャベリン』を1本取り出す。十数本、投擲用の小振りな槍も腕輪にしまってる。


「・・ミドリコ、上手く対処して。ワタシ、もう眠い」


「お眠なの?!」


まさかこの状況で眠気が高まってるとはっ。ドラミンクッションの圧倒的性能に驚愕していると、


こっちも前に走ってるから前方から来る者達の正体はすぐ知れた。

『騾馬型のサーバントドール』に乗ったパンツタイプのローブを着た人達っ。ドールテイマーだ。たぶん暗視用のゴーグル型の魔法道具を全員付けてる。


「親戚だ。先頭の人、たぶん再従兄弟か従兄弟の親」


「親戚の把握が朧気じゃん?」


「ムーンハート家のドールテイマーか」


言ってる内に、


「任せろ!」


『再従兄弟か従兄弟の親』だと言う人が呼び掛けながら5騎のドールテイマー達はあたし達を避けて抜けると、騾馬型サーバントドールの口から一斉に針の弾を連射してワーグの大群をあっという間に撃退し始める!

火力じゃなくてあの針に麻痺毒が塗ってあるらしく効果抜群だった。固まって自分から向かってくるのと暗闇で連射される高速の針だもんね。


6割程が麻痺させられると、ワーグ達は慌てて退散していった。


私達も止まって、援護をしようかと思ったけど必要無かった。


「ありがとうございました。ムーンハート家の方々ですね?」


「ども~」


騾馬の頭部構造をそのまま砲身に利用してんだ。その分、自立性が低いから手綱捌きも必要っぽいね。ふぅん。


「いかにもムーンハートだ。普段はそう集まって動くこともないんだがな。怪我はないか? ユパちゃんも久し振りだな」


「・・うん」


ゴーグルを上げて、再従兄弟か従兄弟の親の人は話し掛けてきた。童顔なフェザーフット族だけに年齢はちょっとわかり難いけど、男性。


う~ん、やっぱ微妙にユパアーカ先輩やテパリアーカ様に似てる感じだね。

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