表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

39/40

野分けのハープ 21

水平線から徐々に迫る津波を背後にした、嫉妬の魔女と対峙する。


髪が無数の蛇に変わったオーシャンピープルの少女。ラクシーンの1人娘。

先代の嫉妬の魔女は海底王国に誕生し、災いの招いていた。結果、氏族によって死産として秘匿され続けた子。


「完全にそっちの始祖に呑まれてんね」


あたしは2本のワンドを結晶化させ、双剣のようにする。


「ギィイイイッッッ!!!『堕ち沈む生命どもの(アビス)淵々魔法(スポッティング)』!!」


「アークノヴァクレスト!!」


触れた物を劣化させて滅ぼす液体を放つ魔法を放ってきた嫉妬の魔女に対して、あたしは分解する光の紋章の魔法を放つ!


ガガガガガガガガガッッッッ!!!!!


数え切れない互いの滅びの魔法が沖の上空で打ち消し合う。

未分化な原始の力同士がぶつかり合う!!


埒が明かないけど、津波はジリジリ迫ってきてるっ。


どうする? あたしも始祖に呑まれても津波だけでも優先してどうにかするか? それ自体は別にしょうがないんだけど、


『ウチの始祖が町を守ることにどれだけ関心を持ってくれるか? めちゃ怪しい問題』


がガッツリある!


「ややこしいなぁっ、もうっっ」


(どうする? どうする? 替わる?)


(キュウッ)


「始祖、面白がってますよねっ? つかオジラ黙んな!」


(キュウ・・)


オジラは黙らせたけど、相手は滅びの魔法の他に豪雨から水を操って刃を作り、ちょいちょい撃ち込んでくるっ。


大して火力無いけど、これがウザ~っっ。対処に気を取られる分、微妙に押される。


(嘘、お前はあの子供を助けたいから手加減してる。それは、弱いぞ?)


「くっ」


あたしの内心のプライバシー0何ですけどっ?!


(あたち達は原始の魔女。世界は、あたち達の思うまま! うっほぉ~~いっ!!)


幻想だからって耳元で喚くのやめて欲しいんッスけど?!


「あたしらの思うまま、ね」


あたしは腹を括り始めていた。と、


ヴゥンンッッ!!


大型のクーダハがあたしの後方に転送してきた。すぐに開いてヴァルトッシェ3級指導官、アリシャ隊の3人、アルが出てきた。


指導官とアリシャ隊は既に法式練り済みの強力な魔法書を所持し多数のジェムを纏っていて、アルは+2級の杖を所持しアクアジェム二十数個を纏っていた。


アルはジェムを使って、


「やりまぁすっ!」


と渦潮をクーダハの周囲に起こし、速攻できた嫉妬の魔女の水の刃の攻撃から自分達をガードし始めた。


「ミドリコ! 以下略だっ」


「うッス!!」


伏兵のインチキも上等!!


「てなもん屋だいっ!」


あたしは一時的に魔法の出力を上げ指導官達の負担を減らした。


陽明妃(ようめいひ)の書っ!!」


「真・氷帝の書っ!!」


アリシャはヨミーとナマハムに補助されながらファイアジェムとライトジェム合わせて二十数個を対価に、強烈な炎と光の力を宿した魔法書を鼻血を出しながら発動!


ヴァルトッシェ指導官はアイスジェム40個余りを対価に、この間アリシャが使った物より段違いに強力な氷の魔法書を発動!


アリシャは分厚い雨雲を全て打ち払い、指導官は見渡す限りの海と津波を全て凍結させた!!!!


「後は、存分にやれ・・」


さすがにバテたヴァルトッシェ3級指導官は気絶したアリシャ隊を蛇の短剣のワンドで引き寄せ、渦をガードを粘って維持してるアルと共にクーダハに避難して閉じ、再転送で逃れていった。


「よーーしっ!! スッキリしたねっ。ちょう快晴っ! 超煌めきフリージング!! 嫉妬の魔女! 聴こえてるっ?!」


「ギイィッッ!!!」


「あ、ごめんごめん。『中の人』じゃなくて、『ガワの人』ね」


「ギィ??」


あたしは大きく息を吸い込んで呼び掛けた。これは、魔法じゃない。


「あたし達って自由らしいよ? 産まれた時から大変だったね。でもそんな子や、もっと残酷なことになった子はたくさんいる。だから我慢しろ、って言ってないよ? 全て敗残のっっ!!! 全ての死の棺の奥底のっっ!! 朽ち果てた肉塊があたしらの故郷!! 嫉妬の魔女! もっと嫉妬しろっ!! 生命を妬め!! 今からあんたに与えるっ、あんた達に与えられたっ、死の全てを書き換えてみせろ!!! ハイリーディング!!」


視覚による時間停止認識に相手は即応した。


(『速聴魔法(ハイリスニング)』)


聴覚によって時間停止認識してきた。


(エコーハート。・・ねぇ? 始祖はあんたの事、そんな興味無いってさ)


(ギィイイイッッッ!!! アビススポッティング!!!!)


(アークノヴァクレスト!!!!)


止まった時の中で、さっきより不自由なりに滅びの魔法を撃ち合いっ、互いに接近してゆく!


(あたしを倒したら相手してやるってさ!)


(ギイィッッ! 無垢ぅううっっ!!!)


0距離になると、思い切り障壁ごと結晶化パリィワンドを『拳打(けんだ)』で砕かれ、右の頬をブン殴られた。奥歯折れたわっ。

だけどそんな『癇癪お子ちゃまパンチ』で!


(エリオストンキィィーーック!!!!)


あたしは甲虫のアンクレットにめちゃんこ魔力を乗せて発光&結晶化させてっ、嫉妬の魔女を津波の大氷壁に向けてブッ飛ばしてやった!!


「ギャウッッ?!」


相手の時間停止認識が解けたからこっちも解いてやるっ。正々堂々じゃない。『ボロンカスに負けた』てわからせてやんよっ!


「キャッチリング!!」


氷壁に激突した嫉妬の魔女の238重に重ねた捕獲魔法の法式で捕え、


「ハイジャンプ」


眼前に転送する。


「無垢! お前ばっかりズルいっ!!!」


泣いて抗議しつつ、速攻で40枚くらいキャッチリングを破ってくる嫉妬の魔女。


(嫉妬。お前、人間好きじゃないから人間もお前を好きにならない。またね)


「アークノヴァクレスト」


あたしは167発! 一切手加減せずに身動きできない嫉妬の魔女に撃ち込んだ。


滅びの衝撃に、着弾点に限らず全ての津波の氷壁が分解消滅して光の粒子に変わって遠くから吹く海風に巻かれて上空に登ってゆく。


「あ、ああ・・」


(ギィイ、ギィ・・)


光の粒子に変換されかけながら、オーシャンピープルの少女の髪が海蛇からただの柔らかい髪に変わってゆく。


(ギィイ・・無垢・・)


嫉妬の魔女の気配は引き剥がされ消えていった。残る少女は光と形の中間の姿。


「知ってると思うけど、このわりとクソッタレな世界、まだ、留まってみる?」


手を差し伸べてみた。


「・・いいの?」


「好き勝手するのがあたしらの手口!」


「・・ふふふ」


ちょい塩っぽい粒子の風の中、笑って、その子はあたしの手を取り光から形を成し、ガワの人からタダの人になったんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ