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てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


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野分けのハープ 14

野営地にユパっちの熊型の予備パーツを使って強めの魔法障壁を張って、転送用の基点も作った辺りで時間切れ。

錬成術そんな得意じゃないから負担大きかったか。


「ふぁ~・・」


原始のマナの一次解放が切れてふにゃふにゃになっちゃったよ。


「・・お疲れ。朝まではワタシ達でどうにかする」


手早く自分のサイキックタクトであたしを寝床に移し、額に濡らして絞ったハンカチを置いてくれるユパっち。


「頼んにゃ・・・」


「はい、はい、わかりました。ミドリコさん達に伝えておきます」


ナサイはあたしと通話苦手なユパっちの代わりに水晶通信でウィザードギルドとドールテイマーギルドに連絡を取ってくれていた。


「どちらのギルドも既に対応してくれているようです。ゴロロの町も今、大騒ぎになってるみたいですね」


「にゃ」


口が回らんっ。


「・・アルは?」


「現地商会は関与していないようですが、今ゴロロの衛兵分署(ぶんしょ)で取り調べを受けているようです。不在の地域を統括していた上役の方は無関係ではないような気配も・・・」


「・・醜聞でも、脅す段階を飛び越えていきなりワタシ達を殺そうとしたのは不自然だと思う」


「ですね」


同意、と思ってるよっ。


「・・ワタシ達への増援は?」


「もうすぐ転送基点を目印に1人来られるそうです」


1人か。この流れでエリオストンは考え難いね。まだ仕事終わってないだろうし。

誰だろ? アリシャが『1人』で来るってこたぁないし??


「・・取り敢えず、ナサイはこれを持ってて。指輪に仕舞わずベルトにでも付けて。防水防塩だから」


ユパっちはさっきまで何か小さな人形? を有り合わせの材料で作っていた。


「これはっ?! カワイイ~~っっ」


それはキーホルダー的な『小さなクマさん人形』だった。


「・・魔法障壁を張ってくれる。あまり長くは持たないから、頼り過ぎないで」


「はい! ありがとうございますっ。ユパアーカさん!!」


いいなぁ。


「にゃ」


「・・ミドリコには特に無い」


「にゃ~・・・」


ケチっ!


何にしても現時点でやれることはやったあたし達は待機するしかなかった。


ただそう言えば転送してきてから何も入れてなかったので、

ナサイが転送酔いがまだ治りきってないのにここに飛ばされて落ち着かない騎竜と銀毛の馬の世話をしている間に、珍しくユパっちが夕飯を作ってくれた。


冒険者用の粉末スープで作ったコーンスープと棒状糧食ぼうじょうりょうしょくと煎り豆茶だったけど。


あたしの分の棒状糧食は砕いて、瓶入りココナッツミルクとお湯とバニラ粉末で粥っぽくして、スプーンをサイキックタクトで操って食べさせてくれる。


「にゃにやとう(ありがとう)」


「・・お湯沸かしただけ。ドラミンでもできる」


ドラミンお湯沸かせるんだ。『自動警戒させる』て、何か雲丹(うに)? みたいな形状に変形させて障壁の外の宙に浮かせてずっと見張らせてるけど。


「私もお腹空いたです!」


騎竜のウ〇チの処理をしていたナサイ。食べるの好きだもんね。


そうして一先ずゆっくりしてたんだけど、


ヴゥウンッッ


仮設した転送基点に長距離走転送の方式が浮かび上がって、1人の人物がバリっと荒っぽく転送してきた。


「だぁっ? 魔力の強さだけで強引に方式編んでるっ。これだから『血統頼り』のヤツは嫌何だよ!」


はい登場から即、ディスってきました。スティールチズル姉弟の弟の方! ゼゼオム・スティールチズルだった。


お前かよ・・


「おい、ミドリコ・アゲートティアラ! 原始の魔女っ。姉さんを巻き込むなよっ?」


「にゃーっ」


巻き込んでないしっ、ヘッドロックされたし!


「・・落ち着いて。文句を言いに来ただけ?」


ユパっちがちゃんとしてるっ?


「ぐっ、ムーンハートの宗家か。どいつもコイツと血統血統!」


「私は普通の森エルフです」


「『暇人のモブ』に言ってないっ! 森でキノコでも採ってろよっっ」


「酷いっ」


あー、もうっ。


「にゃにゃ~」


落ち着け。話にならんし。マジ何しに来たし。


「・・・俺もまだ仕事は終わってないが、物資は持ってきた」


ドサドサと、断罪室のデフォなのかな? ウワバミ仕様の袖から色んな属性のジェムやお金を地面に雑に落とすゼゼオム。


「私費でもツテのあるヤツらに頼んでる。ドールテイマーギルドからは砂漠の方から、前にお前らと組んでたドールテイマーの、何だっけな? ポッピだかタッピだか」


「・・トッピだよ」


「そう! そいつが明後日にはこっち入って合流するってさ。お前らはなる早でポポヨッテに行け。姉さん1人じゃ心配だ。あ~もうっ、俺も仕事が片付いたらすぐ入るからな! とにかくお前らは早く海底に行って、姉さんの弾除けになれっ」


「嫌です!」


「・・シスコン」


「にゃっ!」


「チッ、段取り要員に明日別のヤツら来る。一晩くらいは自分で何とかしろ。血統で! どうにでも何だろっ? ハッ。・・またこの雑い転送門で帰んかよっ、最悪!!」


ゼゼオムは最後までディスって転送して去っていった。


「にゃにゃ」


「・・うん、ムカ付いたけど、置いてったジェムで障壁と見張りのドラミンを強化しよ」


「私もドリアードにグリーンポーション飲ませてパワーアップさせときますっ!」


海底だ? 状況ハッキリするまで絶対お断りっ。と思いつつ、あたしらはまずは一晩生き残る為に色々準備を始めた。


まぁ今のあたしは寝かされてニャーニャー言うだけ何だけどさ・・

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