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てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


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野分けのハープ 13

「結局、解決するまで担当する、みたいになっちゃったけどさ。ユパっちとナサイはどうする? 特にナサイ。あの、『どこまで』って意味で」


「そうですね・・・」


充填させた魔力の消費が大きいから、アルとの水晶通信は一旦切って、一回の食堂でピザとサラダとルートビアを買ってきたあたし達は資料をひっくり返しつつ、確認作業に入った。


「・・ミドリコはギルドの依頼だろうけど、ワタシは雇ったナサイの安全を優先する。ウィザードギルドはミドリコはいざとなったら原始のマナが使えると考えてる、というか、経験を積まそうとしてる感じがする」


「それはまぁ、ね」


血筋的に微妙なとこ。


「私もやれるだけはやってみようと思います。正直、バサ郷もちょっとだけ関わりがありましたし『冒険してみたい!』というだけで来てしまってるところはありますけど」


「うん。間合いは気を付けなよ。変わらずの指輪の時は最初からヤバかったけど、今回はいつの間にか、だし」


「・・まず、資料を確認する。ドラミンも散逸古物の回収だけだと思ってたから考慮が足りなかった、て言ってた」


今、洗濯されて干されてるかんね。


あたし達はピザとサラダを平らげつつ、資料を確認した。要点としては、


『当時の魔物の騒動は瑪瑙海の海辺の海神の祠や神殿近くに集中』


『被害はポポヨッテのオーシャンピープル達主体で未然に防がれた』


『ゼドは祠のいずれか近くでオーシャンピープル達と協力し、野分けのハープを以てもっとも大きな災いサーペントの大群? を鎮め、大きく損耗し、蘇生不能な形で死亡』


『ゼドはオーシャンピープルの有力者の妹と交際していた模様だが、有力者親族からは快く思われていなかった』


『防がれたとはいえ、大規模な魔物の攻撃であったにも関わらず詳細はほぼ各方面に知らされていない』


『ゼドは内陸部淡水域の旧ウォーターピープルの支配地を管理する古い家系のバルタンの出であると思われる。ただし当該氏族は交渉困難で調査は停滞』


『ウィザードギルド及びドールテイマーギルドは本件に関し、ポポヨッテのオーシャンピープルが何か重大な過失を抱えており、それが恥部と判断されている可能性が高いと見ている』


『ポポヨッテと聖ユルソン王国との間に正規の行き来は無く、対応難度が上がってしまっている』


『但し、ゼゼミオが独断でポポヨッテに向かった模様』


「ゼゼミオ『パイセン』はワケわかんないから取り敢えずほっとくとして、あたしらはゴロロでアルに改めて確認してみよう。場合によっては同行してもらえなくなるかも、だけど・・・」


立場複雑そうだし。


「現地にゆくまで水晶通信でちょこちょこ小出しに聞いて様子を見ておきましょう」


「・・あの人は、関わり方が遠い気がする」


「まぁね。でもパワーあるからできれば引き続き同行してほしいな」


「・・パワー・・・エリオストン、どうする?」


「今、別の仕事してるみたいだけど、水晶通信で連絡は取って軽くファイターギルドに前金も入れとく。一応ね」


腕利きなのは間違いない。


ルートビアも飲みきる頃には大体方針は固まった。

バイトの冒険モードから切り替えよ!


前よりちょい多めに経費が下りたんで、エリオストンの前金を差し引いても、コストを掛けて距離の出る転送門でポンポン飛び、翌日の午後にはまだまだ小雨のゴロロの町に着いた。


「うっ、さすがに転送門使い過ぎたね」


「ちょっと安んでから商会にゆきましょう」


「・・賛成。ドラミン、も」


ちょっと酔ってしまったあたし達はアルに水晶通信で後で行くと連絡してから、宿で休むことにした。


手足と顔を洗って、平服に着替えて、まだ持ってるスクールの懐中時計を確認してから、2時間くらい仮眠を取るつもりだった。


・・・夢の中、あたしは平服のままフワフワ気持ちよく浮遊している。と、神代(かみよ)っぽい服を適当に着崩してるアゲートティアラ始祖様が、まだ連れてるファンシーラットのオジラを頭に乗せて宙を泳いで近くまで来た。

妙なもんで、あたしは眠ったまま見えてる。


(子供の踊り手はもう一緒じゃないんッスね)


寝たまま話し掛けちゃったよ。


「あの子はもう行ったよーっ? この子はまだ!」


ファンシーなオジラを撫でてやる始祖様。どういう立場なの??


(面倒見がいいんッスね)


「そう! お前達も助けてやる。そろそろ死んじゃうぞ?」


(え?)


「起~き~ろ!」


ぴょこっ、と人差し指であたしの額を突ついてきた。


「っ?!」


カッと額が熱くなるっ。強制的に原始の力を一次解放され! あたしは目覚めたっ!!


部屋に甘い香りっ。『眠りの(こう)!』既に夕方っ。何時間眠った? 眠らされたっ。


部屋にはフルフェイスの兜を被って武装してオーシャンピープルの兵達が入り込み、あたしや、眠っているユパっちとナサイにトドメを刺そうとしていた。


あたしを殺ろうとしていたヤツはギョッとしている。


「マナボムっ!!」


あたしは十数発は爆発魔法で全員部屋からブッ飛ばしっ、ついでに部屋の壁と屋根もブッ飛ばした!


「何だ何だぁああっ?!! ミドリコさんは寝起き悪いぞうっ!!!」


「・・ミドリコ?!」


「えっ? 何です?!」


ユパっちとナサイも起きてくれたようだ。香もブッ飛ばしたかんねっ。


部屋にいた連中は道や屋根や壁に飛んで昏倒したけど、宿の外には他にも多数、オーシャンピープル兵がいた!


中には手練れそうなヤツが1人っ!


「原始の魔女か・・殺し難いな」


+2級の槍を持ったその男のオーシャンピープルがそう呟き、水(海水?)を周囲に纏って槍を構え直そうとしたが、


「何の騒ぎだっ?」


「オーシャンピープル?」


「衛兵呼んでくれ!」


宿の従業員や近くの町の住人が騒ぎだした。


「失敗か。後手に回るからだ・・・」


忌々しそうに槍の男は呟き、転送効果らしい腕輪を使った。配下らしい他のオーシャンピープル兵達もノビてるヤツらを抱えて転送で撤退していった。


「・・ミドリコ、人前でダウンするのマズい。ワタシ達も撤退しよう。事後処理はギルド任せでいい」


「わかった。ナサイ」


「はいっ」


あたしはサイキックタクトでナサイとユパっちと、あとはドラミンやら熊やら荷物やら騎竜やら銀毛の馬を纏めて近くに集め、方式で囲んだ。


「『転送魔法(ハイジャンプ)』!」


状況やアルや、色々気になるけど、たぶん小一時間であたしはクールダウン。

一番近い野営地へと取り敢えず纏めて転送するより他無かった。


どーなってんだよ??

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