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てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


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野分けのハープ 7

『思ったより海辺の祠探索がヤバい』と思い知ったあたし達は、メイロロの祠と次に調査に向かう予定の『ダロロの祠』の中間辺りにある『ゴロロの町』に寄って準備することになった。


「・・エリオストンがいないから人形を強化する。天候も悪くて故障し易いし、予備のパーツも必要だからコレを買ってきて。ミドリコとナサイも何か揃えた方がいい。あと作業中、糖分と少しは魔力も回復したいからマジカルドロップも買ってきて」


ユパっちは宿に残って作業に専念するつもりらしい。珍しくドラミンはソファに置いて、ツナギに着替えて頭にバンダナ巻いてる。

渡されたメモはめちゃ字が小さかった。


「だから、今回ミドリコ隊は金欠だって~。何かバイトしてから買い物しない?」


「私、売れる森の素材をいくらか持ってますが?」


「それはダメ、ナイサはワタシ達が雇ってる。それに『バイトを続行する為にバイトする』の? バサ郷で買った木像を『踊り人形』に改造しておいた。コレを売って、お金を作って」


「お、おう。ユパっち、段取りいいね」


「・・ドロップはメロン味は必ず買うこと、ドラミンもそう言ってた」


というワケであたし達はもうずっと降ってる小雨の中、革の合羽を着て買い出しに出た。


「ユパアーカさん、時々理路整然としますよね?」


「スィッチが入るとさ。アレはお婆ちゃんの血だね。テパリアーカ様もドンドン話進めちゃう人だから」


「へぇ」


何て話しながら、2人で売却と買い物を済ませた。


あたしとナイサ用の補強は、あたしは霊石(ジェム)類は高かったから属性関係なく単純に魔力を少し担保できる『魔法石の欠片』を買い足し、

ナイサ用には回復力は劣るけど滋養は高くてドリアードと相性のいい『栄養薬(グリーンポーション)』を購入。


「結構早く済んじゃいましたね。カフェで甘い物でも頂きましょうか? あ、でもユパアーカさん、ドロップ待ってますね?」


「ユパっちも食糧持ってるし、宿の食堂でも何か食べれるって。むしろ『隙あらばカフェに寄ってこう』じゃないのっ!」


「ふふ、背徳感ありますね」


「背徳の無いスィーツはスパイスの無いカレーみたいなもんよ」


「いいますねミドリコさ~ん」


「へへへっ」


隙があったのであたし達は手近なカフェに向かったんだけど、


「あっ!」


「これって」


石像があった。ゴロロの町の特に目立つ場所でもないカフェへの近道で入った路地の一角に唐突に建ってた。

マルコスOBの所と水晶通信で確認した資料まんまの、バルタン族のアーチャーにして野分けのハープの持ち主、ゼドの像だった。


20年前とはいえ海の魔物を退けたにしてはここらの街で話を詳しい聞かないし、ギルドでも『海の魔物の騒動はあったが、海中の町のオーシャンピープル達主体ですぐに解決してしまって詳細不明』といった具合。

こんな目立つゼド関連の痕跡は初めてだった。


「聞き込み・・の前に碑文ないかな? メモリータッチだと建てた業者の作業の様子とかの観測になっちゃうか」


「たった20年でも海風等で随分傷んでいますね」


「お? ああ、まぁ指とかね」


特にハープを持つ人差し指がハープから離されたデザインで、ここが脆かったみたいでヒビが入ってた。もうすぐ折れそう。


「私は木製の製品ならドリアードに直させることができるのですが、ミドリコさん、直せませんか?」


「えーっ? どうかな? 錬成(れんせい)術はそんなに得意でもなかったけど」


すんごい期待した顔でこっち見てくるナイサ。


「・・やらないではないけど」


「頼もしいです!」


ストライカーワンドやパリィワンドは繊細な作業に向かないので、あたしはちょっと恥ずいけど、スクール時代からそのまま使ってる『教練用ワンド・改』をウワバミのポーチから抜いて構えた。


「指だろ? ええっと」


集中してみると、降ってる小雨と指の周りの苔がすんごい邪魔だった。


ただヒビを直すだけ。スクールの錬成術の試験の方がよっぽど難しかったぜっ。


「よ~し、『石の奏者魔法(クリエイトストーン)』!」


水分と苔を弾き、無から少しだけ発生させた石の粒子を糊の様にしてヒビで満たし、あとは無理なく固定、


「この像イケメンだよねぇ」


「おふっ?!」


「えっ?」


いきなり真後ろから褐色の肌のロングフット族の革のポンチョを着た婆さんに話し掛けられたっ。


ドパっ! 手元か狂って指を中心に石が炸裂して妙な具合に定着してしまいっ、手とハープの部分だけ前衛芸術みたいになっちまった!


「あれまぁ??」


「いやいやいやっ、我々補修を担当しておりまして、こうして一度石材を増やしてから再調整する、最新の工法を採用しておりますっっ」


「い、イーストガーではこれがトレンドですねーっ!」


必死で取り繕うあたし達っ。


「ふぁ~、やっぱり都会は違うねぇ、コレを建てた『ミゾガス工房』の職人もビックリだろうさ~」


婆さんは珍しがりながら去っていった。


「・・ミゾガス工房、確認してみよっか?」


「その前にコレ直さないとっ」


「そうだった!」


メモリータッチとクリエイトストーンを駆使して『大体元の感じ』には直せた。古い部分と新しい部分のツキバキ感は凄いけど、壊れ難くはなったと思う。たぶん、きっと・・


碑文を確認すると、やはり建てたのはミゾガス工房。設置年月日は約19年前。ゼドはスキュラ退治から半年後に亡くなったらしいから、石像はそのおよそ半年後にここに建てられていた。

マルコスOBからは何も聞いていなから、全く別に誰かが資金を出しているはず。


「場合によってデンジャーな祠巡りをここでショートカットできちゃうかもしれないぜ?」


「核心に迫っている感触はあります!」


あたし達はゴロロの町にあったミゾガス工房の軒先まで来ていた。


「ナイサ隊員! この石材工務店っ、攻めないでかっ!」


「行きましょうっ、ミドリコ隊長!」


我々ミドリコ隊は覚悟を決めて勢い付きっ、石材工務店ミゾガス工房へと入店したのだった!!

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