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てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


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野分けのハープ 4

海辺の町ウーナロロは生憎の小雨模様。

漁港の先の開けた瑪瑙(めのう)海の水平線と潮の匂い、風の通り具合、どこなく塩っぽい大気は普段海から離れた陸で暮らしているあたし達には刺激的だった。


海人(オーシャンピープル)族もいくらかいて、ロングフット族は黒髪の東方系や熱帯系の褐色の肌の人達もわりといる感じ。


「ウーナロロきたーっ!」


「8ヶ月ぶりくらいかもしれません」


「・・雨、塩っぽい、かも?」


あたしは騎竜、ユパっちは熊型・改弐、ナイサは魔力の強い銀毛種(ぎんもうしゅ)の馬に乗って、革の合羽を羽織っていたけど、野営地からここに来るまでに首周りと手元足元は結構濡れてる。

徒歩で探索する前にドライエアの魔法使わないとだ。


ナイサが仕事で止まる宿は騎竜は預けられないから、竜借で場所を借りて預け、それからその宿『シーエルフ亭』に向かった。

高級でもないんだけど、紹介制でエルフ族関係者専用。

木製の宿は魔法建築で生きた木が使われていた。虫除けできる木らしく精油の匂いが強め。


「外回りの仕事以外では初めてですっ。やっぱり『海蛇竜(サーペント)』とかと戦うんでしょうか?! 私、アーチャーとしては4級並みの心得がありすし、『植物の精霊(ドリアード)』も召喚できます!」


「いや、野分けハープ探してるだけだからっ。今回、何かの悪党とかとも揉めてないしっっ」


「・・お風呂行こ。何かこの辺りの雨でドラミンがベタベタしてる」


興奮気味のナイサと、ドラミンを洗濯したいユパっちに対処しつつ、初日はただの観光客とそう変わらない感じで過ぎていった。


海の見える食堂でシーフードコースとか食べちゃったもんね・・


翌日、引き続き小雨なウーナロロを合羽を着て、ウィザードギルドOBマルコス・ブルーコーラルの魔法薬店『ブルーコーラル魔法薬店』に向かった。

熊に乗ってると相手が魔法使いだと怒られそうだから、ユパっちにも歩かせてる(出掛けにゴネはした)。


魔法薬店にも色々あるけど、ここは珍しい原料や初期加工品を主に取り扱う玄人向きの店だった。


「お話伺えるでしょうか?」


「ギルド経由で行く、って伝わってるはず何だけどさー」


「薬品臭い。ドラミンも臭いって言ってる」


そりゃ薬品店だしね。


「すいませーん。マルコスさんいらっしゃいますか~?」


「オイっ、濡れたまま入って来るなっ! 魔法薬原料が台無しになるっ。軒で乾かしてこいっっ」


奥にいたローブ着た爺さんに速攻怒られたっっ。


「ああっ、はいはいっっ。マルコス様ですねっ?」


「乾かせっ! ヴァルトッシェ氏の生徒は態度の悪いヤツばかりだっ」


「ええ~っ?」


批判の範囲が拡がったっ。あたしらは慌てて軒に引っ込んでドライエアの魔法で水気を払って、合羽も取って再入店した。


「失礼しました。え~とですね。大体、ギルドから話は聞いてらっしゃるも思うのですが」


「禁忌古物対策室からの依頼でもないんだろう? 随分、『お節介』をするじゃないか?」


ファミリーネーム通り青い珊瑚の装飾のワンドを手に詰めてくるマルコスOB様っ。


「あの、それは・・」


もっともだけど、ちと言い辛いな。


「この間の変わらずの指輪の件でミドリコの師匠が、ウィザードギルドの禁忌古物対策室を飛ばして勝手に対応して指輪も壊したからクレームが来て、代わりに野分けのハープを探させることにした」


ズバッと言っちゃうユパっち!


「ほう」


「変わらずの指輪って、ソルトロック領の騒動のですか?」


そう言えばナサイに言ってなかった。


「うん、ごめん、後で話すっ、ナイサ。はい、そういうこと何です! 何か御存知ないでしょうかっ? 最終的にハープが見失われたした場所や経緯くらいは突き止めたいんですっっ」


「ふむ・・」


近くの年代物の椅子に座り、控えていた小型ゴーレムにパイプ煙草を持ってこさせ、一服するマルコス様。溜めるねっ。


「ゼドに関しては、もう死んだらしい。蘇生できなかったとか」


「え?」


バルタン族は寿命200年くらい。20年前の時点で100歳未満だったはず。


「事故? 魔物? 他殺? 病気? 野分けのハープは??」


ぐぐっと詰め寄ったけど、青珊瑚のワンドで頬の辺りを押し返された。


「ムギュっっ」


「近い近いっ、順を追って話す! 落ち着かんかっっ」


その後、甘く煮た小豆を寒天で固めた東方の茶菓子『ヨーカーン』を出してもらって順を追ってきっちり話してもらったあたし達は、シーエルフ亭に戻った。


整理すると、


「パーティー解散後、ゼド氏は『海神の祠』近くでサーペントの群れを野分けのハープで鎮めたけど、その戦いが元で亡くなり、ハープも失われたと」


「ほら、サーペントです!」


「いやそこはいいでしょ?」


「それだけ報告できたら十分。シーフードヌードル食べて、もうイーストガーに帰ろう、ってドラミンも言ってる」


「え~? いやでもさぁ、もうちょい行けるでしょ??」


「ワタシは悪い予感しかしない」


超嫌そうな顔するユパっち。


そして実際、この後大変だったんだ・・

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