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てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


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野分けのハープ 2

バサ郷は森暮らしのエルフらしく、結晶化した木々、葉、土壁、石材、で作られたほぼ平屋の簡素な郷。


でも普通に大小の水晶通信器使ってる人達がいたりするから昔風の暮らしをしてるんだかしてないだか、って感じ。


「ナサイの案内のお陰で日暮れまでに着けたよ。ユパっち、暇にしてると日暮れには眠くなっちゃうからさ」


「・・・」


言ってる側から熊型・改弐の上で寝そうなユパっち。まだ少し雨降ってるけどお構い無し。

あたしは見張り台の側の空きが合った馬屋に騎竜を預けてきたけど、ユパっちは歩けそうに無いのと熊型はドールだから何となくそのまま郷内をのし歩いちゃってる。


「ふふ、良かったです。里長の家か酒場の2階で泊まれますからね」


「里長とか緊張するし、交渉面倒臭いから酒場でいいよ。エルフのナッツケーキわりと好きだし」


「そう? バサ郷で夜開いてる店はあそこだけだから、私もよろず屋に寄ってから夕飯食べに行くつもり何ですよ」


ナサイは何人かいるバサ郷の森の外での物々交換や売却を担当しているエルフだった。


「固い仕事してるよな? そういうのできるの憧れるよ、あたし何て血筋でさ。何か落ち着かないからフラフラしがち何だよ」


「血は私も関係ありますよ? ほら」


ナサイは片耳を見せてきた。うん?


「ちょっと、先が丸い?」


「そ、私はロングフットのクォーター何です。だから森の中の仕事はあまり回してもらえないし、やっぱりずっと森にいると少し落ち着かない気がしちゃうんですよ」


あっさりした感じの笑顔を向けてくるナサイ。同年代に見えるけど、クォーターのエルフの人生はめちゃ長い。

それにここまで家族の気配が会話や立ち回りに無かった。それなりにあんだろね。


ま、人それぞれか。


「めちゃ奇遇~。あるよねー」


大雑把に話してよろず屋近くでナサイと一旦別れ、あたしは完全に寝落ちしたユパっちを乗せた熊型を連れて教えてもらった酒場に行って部屋を取り、

ユパっちを寝かせ、多少使役権限を委譲されてるから(ユパっちの生活力の低さから必然的にっ)熊型にユパっちの警護を命じ、宿の風呂と一階の酒場のラストオーダーの時間の確認するついでに、酒場で聞き込みをすることにした。


ナサイは例外として、森暮らしのエルフ達はシャイな上に警戒心が強いからそこそこ話し難いけど、そこは押してく!

何人か聞き込んでから、警戒心強そうだけど元自警団副団長だったっていう男のエルフを捕まえた。


「今、狩人やってんだ~? やっぱエルフの弓は霊木(れいぼく)だから火縄より強そうだね」


「・・あんなドワーフ式のカラクリには劣らない」


カラクリ、ときたもんだ。しばらく、火縄と霊木の弓談義からドワーフをディスりまくる酒の入ったエルフの毒舌を聞き流し、


「ところで野分けのハープって聞かない? 20年くらい前に、この森の主? だか何だかを倒した冒険者の(パーティー)が持ってたって、聞いたんだけど」


「んん? ああ、いたな。当時、ガラスの森の東の沼に大水怪(スキュラ)が棲み着いて参っていたんだが、方々のギルドに再三以来して、ようやく退治に来たんだ。その中の有翼人(バルタン)族の男が持っていた。キザなヤツだった」


「へぇ~、詳しい人、いる?」


「里長の家に宿泊していたから里長が詳しいんじゃないか? 郷の人間とは大して交流は無かった。合わせて3日程度滞在しただけだからなぁ」


なる程、ここまでは普通に『腕利き冒険者の装備品』として携帯されてたんだね。


明日、里長に聞き込みしてみるか。ギルド依頼なら特に問題無いっしょ?


あたしは酒場聞き込みを切り上げ、ユパっちも連れて大きな桶にお湯入れるだけの簡素な風呂屋でさっぱりしてからバブルウォッシュとドライエアの魔法で2人分洗濯も済ませ、また酒場に熊型に乗せたユパっちを連れて戻っていった。


すっかり夜だけど、雨は止んでた。


すると酒場のカンテラの前まで来たらさっきから聴こえていた歌がナサイの声だとわかった。


入れ違いというか、出違いというか、先に来てたんだ。


郷のエルフ達の素朴な楽器の演奏に合わせて歌っている。



今日来たの 赤い髪の子 谷の花持って来た


荒れ()の庭に茎を挿し 帰ったよ


一夜 二夜 幾夜過ぎた日 荒れ家の庭谷の花 埋めていた


いつか来た 赤い髪の子 二度とは来ぬ子


荒れ家の庭に茎を挿し もう帰った もう帰った



・・熱唱だね。ナサイはちょっと、酒も入ってるようだった。

エリオストン連れて来てたら面倒になってるとこだったよ。


「ナサイ、いいじゃ~ん」


「ミドリコさん、ユパアーカさん。お帰りなさい。ハープの話を聞いたから何か歌いたくなっちゃいました。いつもじゃないんですよ?」


照れ臭そうなナサイだった。カワ~っ

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