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てなもんや魔女ミドリコ  作者: 大石次郎


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変わらずの指輪 2

「ふ~ん?『変わらずの指輪』ねぇ・・」


知性派のあたしはすぐには動かず、普段は色々ヤバいから寄らないイーストガーのウィザードギルド本部に『指導官の依頼受けてますから』という体で赴き、本部の図書館で資料あさりをしていた。


魔法的は本や巻物だらけで、やたら浮遊する書物が多いのと設備管理用の小型ゴーレム達がうろうろしていて、結構うざったい環境だけど資料はさすがに豊富。関係有りそうな物をざっと積んだだけでテーブルの上に軽く小山ができちゃってる。


念力が効率良く使える理の指揮棒(サイキックタクト)を使って書物を一度に数冊展開させつつ、高速読解魔法(ハイリーディング)でどんどん斜め読みをして重要そうな箇所を読み込んでく。


変わらずの指輪は旧世紀の戦中に作られた禁忌指定の魔法道具。その呼称に反して、あらゆる物をその『存在性』を対価に無限自在に変化させる効果を持つ。強制力はかなり凶悪らしい・・


あたしはコレの探索、発見、回収を最初の依頼として受けていた。というか、受けさせられていた。


「うわっ、キッツ。ギルドの特務隊(とくむたい)が対応するレベルのヤツじゃん。あたし、やんわりヴァルトッシェ指導官に処刑されてんのかな??」


まぁ最悪、所在地なり所有者なりを特定してギルドにチクるだけでもそこそこ評価になるかな、と。


「はぁ~っ、ウィザードスクールでもフィールドワーク系の課題するの嫌いだったんだよねぇ」


2年飛び級で入ったけど2年留年したんだよ、あたし・・


どんよりしながら有用そうな情報を探っていると、


「オ~ッホホのホっ!! 誰かと思ったら5級止まりの半グレ魔女のミドリコ・アゲートティアラじゃないっ、よくもまぁギルド本部に入って来れたものね!」


「そうだそうだ!」


「完全同意!」


「・・・」


うぜぇのが来たよ。

金髪巻き毛のノーム族クォーターのロングフット族の魔女、アリシャ・グランミラーとその子分魔女のヨミーとナマハム。スクールの同期!


(こぶし)で殴るぞ?」


「うっ、何でいきなり物理よ? 魔女でしょ? やめなよ・・と、とにかく! まだヴァルトッシェ3級指導官様から、えこひいきされてるみたいねっ」


「は? されてない」


「いい? このわたくしっ、アリシャ・グランミラーは4級ウィザード! 貴女は未だに5級! わたくしの方が格上! むしろ上司! 社会的格差は歴然だという事を理解しなさいっ」


「そうだそうだ!」


「完全同意!」


「・・権利簒奪魔法(タイトルハック)


あたしはアリシャがこれ見よがしに持っている高そうな短杖(ワンド)の所有権を奪った。


「あっ?」


雷鞭魔法(スタンウィップ)


アリシャが握ったままの杖から電撃を放ち、手近ね図書館の管理作業をしているスモールゴーレム2体を軽く打ち据えてやった。


「ギギッ?」


「攻撃、攻撃サレタッ!」


「えっ、ちょっっ」


「タイトルハック解除。さて、粗方調べたし帰るか。アリシャ、後片付けよろしく」


「待っ」


「ありしゃ・ぐらんみらー隊ガ反逆!」


「反逆者ヲ鎮圧ッ!!」


「わーっ?!」


「アリシャさぁん?」


「私、関係無いっっ」


ゴーレム達が戦闘モードに変形してアリシャ達に遅い掛かる中、あたしはヒョイっとテーブルを飛び越えて図書館から遁走した。すぐに司書の大人のウィザードが来る。しゃばいぜっ。


「杖の保護法式(ほうしき)単純過ぎ」


捨て台詞も吐いとく。スクールの頃からしょっちゅう絡まれるから、アリシャの弱点は隅々までリサーチ済み!



・・もう夕方になってたけど、ギルド本部を後にしたあたしはイーストガーの冒険者達がたむろする『ブカブカ長靴通り』に来ていた。

貧民街と違って小汚くはないけど、その日暮らしの連中がそこら中にいる。社会不適応者御用達ゾーンだね。

多少は顔が売れてるからフードで顔を隠し、目当ての宿を目指す。


「くっそ~、アリシャのせいで調べ物が半端になった。ま、大体目星は付いたけど・・取り敢えずアイツ、雇っとくか」


気乗りしないけど他にパッと思い付くアテがないんだよね。


フェザーフット程じゃないにしても小柄で全体的に丸っこいノーム族が経営してる『金の根っこ亭』の2階に向かう。

溜め息をついてフードを取り、長命種のノームの店だけに確か初代が経営してるのに年季の入った階段を昇ってくと、


「私のこと一番愛してるって言ったじゃないっ」


「こんな泥棒猫とは別れてよっ」


「まぁまぁ落ち着いて」


「イィーーッッ!!」


「刃物っ?!」


特定しているアイツの部屋から何やら修羅場の気配・・


「ミラージュヴェール」


幻術で背景に溶け込み、取り敢えずあたしは揉めてるアイツの部屋のやや奥の壁際に移動して様子を見る事にした。


「私の物にならないなら死んで!」


「いやいや落ち着いて」


「やめなよぉっ」


「あっ、待ってそんな組み付くと逆に危ないから」


「イィーーッッ!!」


争う音。そして、・・ズッ! 何かがフレッシュな何かに刺さる音っ!


「うぅっっ」


「嫌ぁっ?!」


「自分で刺しといてっ。わ、私知らないから衛兵警官に通報するなら1人で殺ったって言いなさいよ? 私、既婚で子供いるから・・」


妙齢のロングフット族のバインバインなお姉さんが飛び出してきて、そのまま階段に直行っ。


「ファイター職だからこれくらい平気だよね?! 私、結婚できる人と付き合う!!」


返り血浴びてる犯人のハーフドワーフの女性も血塗れナイフ片手に飛び出してきて、階段に直行っ。


・・あたしが言うのも何だけど、イーストガー市民の順法意識の低さよ!


取り敢えずあたしはミラージュヴェールを解除して凄惨な現場になってるアイツの部屋に入った。


「あれ? ミドリコじゃん。奇遇だね」


腹を押さえて血溜まりの中に仰向けに倒れながらアイツ、こと4級ファイター職のロングフット族のマッチョな垂れ目のイケメンが無駄にスマイルを向けてきた。


「来て早々悪いんだけど、そこの棚か鞄から俺の回復薬(ポーション)何かの傷治す系アイテム取ってくんない。わりとクリティカルヒットだったみたいでさ・・」


「エリオストン・サマードッグ、ファイターギルド4級認定のロクデナシ」


冷然と見下ろしてやんよ。


「随分だなぁ。ハハハ・・あの、ポーションを」


「言い訳面倒臭くなったからわざと刺されたよね?」


「えっ、いやぁ、どうだったかなぁ・・あの、ホント、ポーションを、ちょっと意識が・・」


ヘラヘラ笑いつつ、顔が引きつりだすエリオ。

あたしはエリオストンの顔の側にしゃがむ。死相が凄いけど、エルフの血も混ざってないのにホント、彫像みたいな顔してる。腹立つね。


「一仕事しない? 今なら小銭とポーションが手に入るし、天才若手魔女のこのあたしが回復魔法(ヒールライト)と、あのナイフ毒は塗ってなさそうだったけどあんまり手入れはしてなかったから解毒魔法(キュアポイズン)も掛けてあげちゃうぞ?」


天使の笑顔で言ってやったのさ、ふふん。

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