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変わらずの指輪 17

相当な障害を突き破って、1度目の転送先は城内の領主の接見の間だった。壁や天井や床に特異な仕様のあちこち隔絶の杭が打ち込まれている。

ここと繋がった領主の控え室から籠城用の地下室へと隠し通路が続いている。

現当主、ゲラント・ソルトロックはそこに立て籠っているはず。


控え室への扉が既に破壊された接見の間では、大型のサーバントドールと複数体の合体ヒューマンドールの混成軍団と、正面突貫部隊のどちらと言うと下位の隊員中心が交戦していていた。

火器主体で地下での戦いに不向きなイーストガー衛兵警察の6番隊の人らはここに配置されてる。


敵も味方も突然宙にクーダハが現れてギョッとしていた。


「ウィザードギルド断罪室のヴァルトッシェだ。地下への転送の充填を行う。構い無用だ」


クーダハに拡声機能発現させて、外に音声を使えるヴァルトッシェ指導官。


「心得た!」


「援護はしないんだなっ」


「指輪の回収狙いか?」


ほぼ初見の相手でもここまで来ると連携に慣れてきた6番隊と、ファイターギルドとドールテイマーギルドの禁忌古物対策室では温度差があったけど、


「ふん」


ヴァルトッシェ指導官は意に介してない。

一方で、『敵』と認定したらしい人形達が相次いで遠距離攻撃をしてきたっ。


クーダハの魔法障壁は強固で中で何の衝撃も感じないくらいだったけど、受け方や内部の法式の反応に違和感を感じた。


「これって・・魔力吸収してます?」


「そうだ。次の転送に使う。このクーダハは転送阻害対策に特化させてある。自力での連続転送はパワーが足りない」


「ほえ~」


「ほえ~、ではない。大丈夫なのか? お前。・・先に一段目の封印は解いておくぞ」


ヴァルトッシェ指導官はトゲだらけのサイキックタクトではなく『蛇の短剣』をモチーフにしたワンドをあたしの額に当てた。


「!」


フードがはね除けられ、眉間がカッと熱くなり、髪が淡く光ってワサワサと蠢きだすっ。魔力が高まる。

あたしの眉間にはアゲートティアラ家の紋章が浮き出ているはずだ。

この状態なら魔力だけなら2級ウィザードレベルっ。


「ほう。卒業から半年、遊び呆けているように見えたが『ウォームアップ』程度にはなったようだな」


「ウォームアップっ」


ミドリコ城を拠点としたスクール卒業後の華麗な活躍のあたし半年間への指導官評の虚無さよ・・


まぁでも『出してみると』前より安定はしてる気はした。年齢的に身体も成長したのかな?


そうこうしている内に、


「充填完了だ。転送先はマズいことになっている。直後にクーダハを開けるからお前が牽制しろ。私は制御と観測に専念する」


「また現地でダメージ充填するんッスか?」


「いや、この先はヌルくない。自費で+1の魔法石を用意した」


実はウワバミ仕様な袖からポロっと高純度な魔法石を取り出す指導官!


「80万ゼムくらいするヤツっ」


「目の色を変えるな。行くぞ」


「うッス」


転送が始まったっ。1回目より、激しい阻害っ!


クーダハが激しく揺れて、2回目の転送地は接見の間と籠城用地下室の中間地点にある砦状の拠点だった。

ソルトロックに来て始めて見るスモドネル以外の踊り手側のドールテイマー達が、大ムカデ同様装甲仕様の合体大型ヒューマンドールと複数体を纏めて使役する形の中型装甲仕様ヒューマンドールで、

禁忌古物対策室の人形使い達とファイターギルドの一線の隊員と交戦しているっ。


「やれ」


容赦無く速攻でクーダハを開けるヴァルトッシェ指導官!


相手の反応も速いっ、即断で敵と見なし強烈な遠距離攻撃を撃ってくるっ!


普段なら軽く80回くらい死ねるけどっ、今は違う。


ゾワゾワゾワッッ!!!


ヘンテコなアゲートティアラ家の斑の髪がざわめくっ。こうなると柄が動くかんね!


「・・マナショット」


あたしはストライカーワンドから238発の魔力弾を高速高精度で放ち、相手の遠距離攻撃を全て相殺した!


この隙に禁忌古物対策室とファイターギルドは攻勢を掛け、踊り手側のドールテイマー達はあたし達に構えなくなった。


クーダハを閉じる指導官。


「悪くない。いい砲台だ。弾切れの気配も無い」


「・・言い方」


+1の魔法石を対価に、転送が起動しだす。


「これで最後だ。クーダハは使い棄てになる。まずは身を守れ。踊り手は2級相当のドールテイマー。加えて変わらずの指輪を持ち、決死の覚悟だ」


「了解ッス」


最後の転送が始まった。揺れるどころじゃないっ、激突する勢いで空間を破り、籠城用地下室へ転送された! クーダハは卵の殻のように脆く砕け散るっ。

杭は仕様されていないが、より強く同質の働きをするらしい魔法使いの遺骸を使った『柱状』の装甲ヒューマンドール多数の力で、地下室全体が強烈な障壁で覆われていた。


「っ?!」


流動している。床全体がっ、液状化した無数のサーバントドールもヒューマンドールに覆われていたっ。

そこから噴出した遺骸とも人形とも付かない『数十の巨大な腕』があたしと指導官に襲い掛かる!


「ディスペル、スタンウィップ」


未分化に見えても構造はこれまで散々見破ってきた人形達の類型! 数十発の解除魔法で張られていた全障壁の解除し、百数十本の電撃の鞭を隙間に差し込んで内部構造をズタズタにして全て解体してやった。


「・・原始の、魔女?」


人形の奔流の中心にただ1人いた仮面の人形使いが顔を上げた。踊り手だ。その指にある、


変わらずの指輪!


と、ここで横槍。


「オイっ、ギルドの者だな?! どのギルドでもいいっ、報酬はいくらでも払う!! 政府にも口を利こうっ、この狂人を始末しろっ!!」


当代領主ゲラント・ソルトロックは僅かな側近と女達と、手練れらしい護衛の兵十数名と共に、やはり手練れらしい魔法使い20名あまりがかなり高価な多く魔法道具を基点として張った魔法障壁によって守られ、部屋の奥で震え上がっていた。

宝飾品の詰まった鞄を抱えてるよ・・

そのわりと近い位置に脱出口があったけど、城の人間達を使った下位ヒューマンドールを『詰め込まれて』塞がれていた。


「て、言ってますけど、どうするッスか?」


「一先ず無視だ。理の炸裂魔法(メガマナフレア)!」


+1の魔法石2つの魔力を高めていたヴァルトッシェ指導官は強烈な魔力の爆発を5発撃ち、1発は脱出口を埋めている下級ヒューマンドールに、3発は床の人形の奔流に、最後の1発は踊り手本体に放った。


轟音っ!!


爆破の方向を操ったみたいで脱出口のかなり奥深くまで下級ヒューマンドールを消し飛ばしていた。

床の人形の奔流も3割は消滅し、上手く形を保てない状態になった。踊り手本体は・・


「邪魔をするな」


『盾型』のヒューマンドール2体を犠牲に防ぎきっていた。


人形の奔流は形状と法式が乱れて1時使えなくなっているようだけど、『槍型』のヒューマンドール7体を放ってくる踊り手!


「来い、鬼火(ウィスプ)!」


たぶん変わらず指輪を警戒して、+1の魔法石1つを対価に、実体の無い50体余りの火の死霊を召喚して槍のドールと踊り手本体へ牽制をさせる指導官っ。


「ミドリコ! 長く持つ必要は無いっ、お前の原始のマナを完全解放する!!」


「うッス!」


ヴァルトッシェ指導官ら蛇の短剣のワンドを振るい、あたしの周囲に法式を展開し輝く。


「オロルベル、ネフイディア、ヤノノブルス・・・ヴァルトッシェ・サザンレイクの名において、打ち開け原始の棺!!」


あたしのざわめくアゲートティアラ家の髪が言葉に呼応しだした

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