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変わらずの指輪 16

大ムカデヒューマンドールがスモドネルに与えられた法式は『魂の暴走』とでも言うべき物。魂の力が限界まで高まり魔力を供給する。

本来なら身体がパンクしちゃうだろうけど、あれこれ仕込まれた人形の身体がそれを制御する。

ただそれでも消耗は相当激しいはず。大ムカデヒューマンドールは数十人分のヒューマンドールの魂で強引に成立させてるけど、スモドネル本人はちょっと理屈がわからなかった。


「ミドリコ! 誤差を減らしたいからエコーハートお願いっ」


「よっし、エコーハート!」


あたしはミドリコ隊全員にテレパシーを繋いだ。スティールチズル姉弟は既に暴れまくる大ムカデヒューマンドールに応戦してる。


(エリオストン、ちょいこっち戻って!)


(わかった。何かするなら手早くした方がいい、あの姉弟のオマケみたいにされるぞ?)


(へいへい)


デルヨーカさん達の雑魚対応に加わっていたエリオストンを召集っ、と。


(即席だけど、あのどんどん魔力が高まる法式への対策を白鳥のドールに仕込んでみた。一時的に無防備にできると思うっ。ユパの度肝砲で仕留められるはず! エリオストンとミドリコで最初に牽制してほしい、ちょっと溜めがいるから)


(わかった)


(任せなっ)


(がぅっ)


エリオストンは迷わず、スティールチズル姉弟の攻撃魔法の連打を受けながらも暴れる大ムカデヒューマンドールに突進。

あたしもムカデが暴れた拍子の瓦礫の破片に気を付けながらもクィックムーヴの速力任せでなるべく近付いていい位置を探る。

スティールチズル姉弟は察して大ムカデヒューマンドールの下半身にフリーズランスと捕獲魔法のキャッチリングを連打して大きな動作を封じた。


「セェアッ!!」


諸手十字でド正面から大ムカデヒューマンドールを斬り付けるエリオストン。ドールキラーの効果で装甲の外皮を深々切断するっ。


「イィイイッッッ!!」


「ディスペル! マナショット!」


呻いて、飛び退くエリオストンに火炎を吐こうとした大ムカデヒューマンドールの魔法障壁を一時的に剥いで口元に魔力弾を十数初ブッ込んで阻止!


ここでトッピは白鳥型ドールは魔力を溜め法式を編み上げ終えていた。凄い魔力と法式の精度っ。

3級ウィザードの練った魔法に匹敵してる。ドールテイマーはそれ自体魔法道具である人形の機構を介して本体以上の力を発現できる。


「130パーセント起動っ。魔法式強制解除!!」


「クゥアアァァンンッッ!!!!」


白鳥ドールは吠え、法式を纏った強烈な魔力の波動を大ムカデヒューマンドールに放ち、障壁だけでなく内部の魂の暴走の法式まで掻き消した!!


「イぅいイイィ・・・・」


沈静化して一時的にノーガードになる大ムカデヒューマンドールっ。


最後は魔力をガッツリ溜め終えたユパっち先輩。ドラミンを両手の籠手型に変形させつつ魔力で宙に浮かび、加えて熊型・改を鎧の様に変形させて顔以外の上半身にスッポリと纏った! おお??


「ドラミン・パペットガントレット・アディショナル・(くま)っ!!」


ドォオゥンンッッ!!!


これまでの2倍はありそうな無属性砲を両手から放つユパっち先輩!!


大ムカデヒューマンドールは頭部から尻尾の先まで撃ち抜かれ、崩壊していった。


「・・・度肝」


熊アーマーは火力UPだけでなく衝撃も吸収してくれるらしく、平然と浮遊してるユパっち先輩!!!


「へぇ、ムーンハートの子、やるじゃん」


「そこそこね」


「ユパっち先輩! 輝いてるっ」


「・・もっと、言え」


「ユパ、まだ他のドールがワラワラいるから」


「デルヨーカさん達を手伝わないと」


ムカデへのリベンジを終えたあたし達は残りの雑魚対応に参戦しようとしたんだけど、


ズズズ・・・


突然、正八面体が空間に無理から割り込んで出現した。


法箱(クーダハ)?!」


高位の魔法使いが防御や魔力の充填、転送の補助に使う高価な魔法道具。このクーダハのデザインと法式は知っていた。

正八面体のクーダハは2つに割れ、ヴァルトッシェ3級指導官が姿を表した。


「酷い転送妨害だ・・ゼゼミオ、ゼゼオム。ここはムーンハートの者達に任せ、他の支援を頼む、ルートが取れた。私はそのポンコツを連れて踊り手を始末しにゆく」


あたしを毛虫か何かのようにクーダハから見下ろしてくるヴァルトッシェ指導官っ。


「え?」


あたし?


「地味~」


「露払いか、つまんないね・・」


「え? ちょっ??」


スティールチズル姉弟は不満そうに飛行箒でこの場を離れていった。


「いやそのっ、あたしはちょっとムカデ退治で精一杯かなぁ~? みたいなっ、へへへっ」


「何を言っている? わざわざお前に噛ませたのはこの件に割ける人員に対して『火力が足りないから』だ。『原始(げんし)のマナ』を使う、来い」


「いやいやいやっっ、もう半年は使ってませんし、普通に攻略しましょうっ、普通に!」


「被害が増える。躍り手相手では蘇生困難なケースも増える。加えて回りくどい。本件はバァツリー・ホールベアの手引きが発端となったことが固い、自業自得のソルトロック以外の外部の被害が増えればドールテイマーギルドやムーンハート家の立場が危うい。居所がハッキリすれば『さっさと始末する』だ」


「いやっ、でもっっ」


「クドい」


ヴァルトッシェ指導官はやたらトゲトゲの付いた自分のサイキックタクトであたしを持ち上げ、クーダハの中に引き寄せた。ぐぅぉっ? 相変わらずブランデーみたいな香水付けてらっしゃるっ。


「ミドリコっ? 原始のマナって??」


「ワタシもドラミンも知らない」


「無理はするなよっ!」


事情を知ってるエリオストンはあっさりしたもんで、もう切り替えてこの場でデルヨーカさん達に入っていった。


観念するしかないか・・


「トッピとユパっちにも後で話すよ、ちょっと行ってくるからっ」


「ここから転送は3回、途中雑魚もいるが概ね無視する」


言うだけ言って、ヴァルトッシェ指導官はクーダハを閉じた。外が透けて見える。

トッピとユパっちはまだ困惑してたけどいい加減、他のドールから攻撃されだして応戦を始めてた。

指導官らしい完璧かつ執拗な感じの法式で埋まったクーダハの内部・・


「飛ぶぞ? ミドリコ」


「了解ッス」


もう好きにして、て感じ。


クーダハの魔力充填が始まり阻害されまくりらしい転送座標への法式による接続が始まる。

ヴァルトッシェ指導官は思ったより必死な顔で調整をしてる。


「・・何か意外ですね」


「元々原始のマナは折を見て習得させるつもりだ。お前の担当は私だからな」


「じゃなくて今回の件にそんな前のめりっで、ムーンハートとかドールテイマーギルドとかの立ち位置を気にするのもちょっと指導官にしては珍しくないッスか?」


「・・・」


指導官は何だか見たことない具合の悪そうな顔をした。


「お前は私を『鉄の棍棒』か何かと思っているだろうが、鉄にも埋まってた山なり平野なりがあったということだ」


「え? 全然わからないです。詩心(しごころ)とか無いんで」


「チッ、回ってろ」


指導官はトゲのサイキックワンドであたしを狭いクーダハ内でクルクル回転させだしたっ。


「のぉほっ? いやっ何ハラですかコレ??」


ヴァルトッシェ指導官は完全無視で転送調整作業に専念していた。え~?

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