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変わらずの指輪 10

「一旦、ズラかろう!」


衛兵警察6番隊の後続の馬車でイーストガーに戻ったら、主に王都内の治安を預かる2番隊の連中が絡んできたから、仲が悪い6番隊(主に広域凶悪犯担当)と小競り合いを始めたから、あたし達はこっそり衛兵警察の馬車庫から遁走することになった。


「私達は逃げなくてもいいけど?」


「ワタシ、無罪・・」


「いやミドリコがここで引っ掛かると無駄に反撃してややこしくなるから」


「人を野獣みたいに言うないっ」


と反論しつつ、


「てなもんやを出せ!」


「ウチで対応してるっっ、2番隊は番所で茶でも沸かしていろ!」


「何おうっ?!」


と衛兵警察同士でヒートアップしてきたので、フードを被って逃げの一手と相成った。



衛兵警察庁舎の敷地から逃げ切ったあたし達は、わりと全員汗や砂埃何かでドロドロだったから取り敢えず蒸し風呂屋に直行。


女湯で、女子チームはまず湯と、量り売りのオリーブ石鹸と布海苔と香油を使ったシャンプー石鹸粉で、手拭いにヘチマたわしに櫛を駆使してでガーっ、と(あたしはね)全身を清潔にし、胸と腰と髪に布を巻いて蒸し風呂にIN!


「2番隊以前にオジラの尋問の結果は明日にならないとわからないっぽいとかっ、すっトロいわ~っっ」


「ミドリコはせっかちだよね。ま、私とユパは今日中にドールテイマーギルド本部に顔を出すつもりだから。新しいドール必用だから」


「・・ワタシはもう眠い」


蒸し風呂で寝ないでね?


「ユパはせっかくイーストガーまで来たんだから、ついでに5級の免許の更新もしとかないと、免停くらっちゃうよ?」


更新手続きすらスルーしてたのかいっ。


「・・トッピがやって。書類書くの嫌い」


「ダ~メ!」


「ユパっち先輩のお守りはトッピに任すから、あたしとエリオストンはウィザードギルドとファイターギルドに寄っとく。『金の根っこ亭』わかる? そこで落ち合おう。部屋も取るよ」


ミドリコ城に女子3人はちと狭いし、バラバラに泊まってまた集まるのもメンドいし。


「部屋も? わかった」


「・・眠い」


もうちょっとカッとなるくらい温まりたかったけど、ユパっちがフラフラしているので、あたし達は早々に蒸し風呂から出た。

装備は洗い場で『洗浄魔法(バブルウォッシュ)』と『乾燥魔法(ドライエア)』で清潔にして、

風呂屋のロビーでとっくに上がって(ドラミンを洗って乾かすのに手間取った)、ロングフット族のお姉さんと親しげに話していたエリオストンの頭に即、ユパっち先輩から取ったドラミンをボフッと被せてやった。


「うっ?」


「ワタシの!」


「姉さん、ちょっと急いでるんで失礼しますね?」


胸元開け過ぎなお姉さんを追っ払い、あたし達もエリオストンに奢らせた煎り豆茶ミルクを揃って腰に手を当てて美味しく飲み干し、2チームに分かれて動くことになった。



ウィザードギルドにはまたアリシャがいるんじゃないか? と警戒したけど、ヤツらはヤツらで忙しいみたいで(基本的にはガリ勉だから魔法書収集室に所属してる)、いなかった。


「あたしが凶悪犯を仕止めて凱旋したのにアリシャ達がいないとはねっ」


「ガッカリした?」


「別に! 特別断罪室に行くよっ」


「というか、俺、ついて来なくてよかったよね?」


「あたしだけで行くと『犬っころ』みたいな扱いしてくんだよっ」


「俺が居ても変わらないと思うけどなぁ」


ボヤいて食堂の方に逃げようとするエリオストンの腕を引っ張り、あたしは特別断罪室のフロアに向かった。



現在特別断罪室に詰めてるのは事務を除けば確か十数名。ヴァルトッシェ指導官が不在なのは1階の正面受付で確認済みだったけど、他の指導位を持ってない人達の出入り正面受付じゃちょっとわからなかった。

大体出払ってるもんだし、事務でチャチャっと水晶通信の報告の補足を済ませてあとは今の時点での資料を出してもらえればそれでよかったんだけど・・


「あれ? てなもんやの子じゃん?」


「ヴァルトッシェさん、随分目を掛けるな」


断罪室の事務所に続く廊下に浮かせてある魔法道具のティーテーブルと椅子に居た、2人のハーフエルフの男女が話し掛けてきた。


「うげっ」


断罪室の3級ウィザードのスティールチズル姉弟っ! 苦手~。


「お久し振りです。変わらずの指輪の件で進捗を知らせにきました」


正確には資料と活動費をせびりにきたんだけどっ。


「色男の騎士まで連れちゃって」


姉のゼゼミオ・スティールチズル。


「あんまり手際が悪いと手柄、横取りするぞ?」


弟のゼゼオム・スティールチズル。


「ははは、お手柔らかに~」


「騎士ではありませんが、失礼します」


あんまり露骨に侮ってくるから珍しくエリオストンが固い態度をしているし、あたしはさらに腕を引っ張って手早く事務所の方に進んだ。


「ミドリコ、案外下手に出るんだね」


「エコーハート」


あたしはテレパシーをエリオストンと繋いだ。聴こえるのはマズい。視線が背中に刺さってる感じっ。


(あの2人はあたしと違って重犯罪を重ねてる。有能なのと長命種ハーフだから、ギルドが極刑や長期懲役の代わりに手先に使ってるだけ)


(ファイターギルドじゃあまり聞かないシステムだ)


(ウィザードは長命種が多いんだよ)


とにかく長居は無用! 帰りは裏から回ってこ・・



で、何だかんだでもうすっかり夜中になっちゃったけど、あたし達は金の根っこ亭の女子用に借りた部屋に来ていた。


「先にファイターギルドにエリオストンを正式に雇うのに60万ゼム支払っちゃったけど、それとは別に200万ゼムせびってきた。結構気前いいけど、あとはさらに成果が出るまでマネーは引っ張れないと思うわ」


「ファイターギルドは乗り気じゃなくてさ、こっちのギルドへの支払い割合が多くなってちょっと申し訳ない」


「まぁしょうがないよ。ドールテイマーギルドからは40万ゼムだけ。ただ、ドールの素材は色々タダでもらったし、イーストガーでコンタクト取れたムーンハート家からも90万ゼム預かってる。ここからオジラの件で衛兵警察からの報償金も出るだろうから、当面は大丈夫じゃないかな?」


各人のポケットマネーとは別に、200万+40万+90万+オジラの報償金が現時点でのあたしらの資金力だ。

4人所帯でも普通の仕事ならわりとリッチだけど。今回はね・・


「明日のオジラの情報の吐き具合によるけどさ、ウィザードギルドとドールテイマーギルドの資料を照らし合わせてざっと方針決めとこう!」


「ドールの性能は投入した資金次第ではあるけど・・どこまでこの件に踏み込むか? どこを担当するか? ていうのもやっぱり大事だと思う」


「そう明確な指揮系統で動いてるワケでもないしね。・・ユパアーカさん、起きてるかい?」


「う、ん?」


『大きなクッション形態』にしたドラミンに座ったユパっち先輩は眠過ぎて限界な感じだった。


先輩はしょうがないから小さくしたドラミンと一緒にもうベッドに寝かせて、あたし達は資料の確認を始めた。


最低限度、末端のオジラは取っ捕まえたし三代目を含めたヒューマンドール何かの情報もガッツリ提供した。

あたし的には後は事態の着地を見届けたらそれで十分だと思うけど、現場で状況を完全にコントロールできるワケもないし・・


う~ん、どう間合いを取るのが正解だ??

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