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変わらずの指輪 1

一般的な創世神話では原始(げんし)巨人が老いて死に、その死骸からこの世界リーラティアが生まれたらしい。


そこからは宗教によって色々話が変わってくるけど、一番信者が多くてオーソドックスな神話では発生した未分化なリーラティアから様々な神が現れ、世界を整えていった。


つまり巨人DEATH! からの神BIRTH!! でこの世界は始まったんだってさ。


で、何だかんだあって現在、羊歴(ようれき)781年、4月地竜王(ちりゅうおう)の月の5日、

ガー大陸ユルソン地方の瑪瑙(めのう)台地にある聖ユルソン王国首都イーストガーの貧民街の露店通り、通称『スリ楽園』でフードを被って筵を広げ、そこに魔法持続化の効果のある『しつこいソーサラーのボロ布』を敷いて『色取り取りのヒヨコにしちゃちょっと大きいよね?』という感じの鳥の雛をたんまり詰めた木箱を置いて、あたしは絶好調で商売をしていた。


「寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 喋るピヨコちゃん達だよ? 色も何と18種類っ、性別は何か上手く鑑定できなかったからテキトーっ! 多様性だねっ? 安いよっ、安いよっ? 1羽何と5千ゼムっ! ピヨコでも『檜の棒』をへし折るパワー持ってるよっ」


因みに食パンは1斤360ゼムから700ゼムくらい。混ぜ物したアレなパンはもっと安いけど・・


「ヒヨコ、じゃねぇな?」


「鳥の魔物の雛だろ?」


「ミドリコお前、いい加減にしとけよ?」


ここの客は掘り出し物目当てか転売目当て、普通の客より手強い。3人に1人はモヒカンかスキンヘッドか顔タトゥーか肩当てにスパイク付けてるイメージ。


「何言ってるの? 喋るピヨコちゃん達だよ?? ほら、ピヨコちゃん、お兄さん達とお話してあげて!」


「・・人間ドモ、コノ恨ミ晴ラサデオクベキカ」


「滅ビロ世界・・」


「ピヨヨ・・全テヲ、ニ、ク、ム!」


木箱の中から凄い怨念を込めてきちゃうピヨコちゃん達。


「思い切り魔物じゃねーかっ!」


「悲しき過去をショートカットしたラスボスしかいねぇっ!」


「早めにツッコミに来て正解だったぜっ!」


勢い付くチンピラ客達。あんま覚えてないけど、毎回おんなじ3人が来てる気がするかも?


「ちょっと何ぃ? ビジネスの邪魔しないでくれる? この子達、転売したら売れるってっ、石鶏(コカトリス)の雛だよ??」


「コカトリスの雛だよ、って言っちゃったよっ」


「面倒臭くなるなら1回フカすのやめろっ」


「つか雛に着色してるだろ? いろんなトコからクレームされるからなっ」


彩色魔法(ペイントジェル)何だけど塗料を塗ったっぽく見えちゃうか・・


「わかった。『心のモザイク』で見てあげて」


「何だ心のモザイクって?!」


「歌詞みたい言うなっ」


「何で見る方が負担を強いられる!」


「うっさいなーっっ」


ギャーギャーとチンピラ客達と言い合ってると、


鋭い警笛音! 衛兵警官達が笛吹きながら血相変えて、露天通りに駆け込んできた!! 大騒ぎになるっ。


「コカトリスの雛を売ってるのは貴様かぁっ?!」


「裏町の問屋街で石化が多発しているっ! 神妙にお縄に付けっ」


「ヤバっ、冤罪だわコレ! 捕獲魔法(キャッチリング)解除!!」


あたしはしつこいソーサラーのボロ布に掛けた魔法を解いて、ピヨコちゃん達を放ち、集金箱を収納効果のある『ウワバミのポーチ』にボロ布と一緒に詰めて一目散に掛け出した。


「どわっ?! パピーコカトリスっっ」


「有罪だろっ?!」


「あっ、石化・・」


フード越しにチラっと振り返るとチンピラ客3人は怒りに燃えるコカトリスの雛達に『呪いのつつき攻撃』受けて石化されていた。合掌!


加速魔法(クィックムーヴ)!」


素早さを倍増させて、あたしは華麗に露店通りから遁走した。



あたしはミドリコ・アゲートティアラ。歳は今年で15。種族は長身揃いのロングフット族だけど父方のお婆ちゃんが小柄なフェザーフット族だったみたいで、身長は156センチメートル。微妙な背丈!


職能(ジョブ)はウィザード。階級は5級だけど実力的には4級! 素行評価がちょっとアレだから中々昇級できない感じ・・


とにかく中々の腕利きだよっ。このイーストガーの若手魔女界隈ではそれなりのもんね! ふふんっ。


と思いつつ、貧民街の一角の色々守りや隠しの術を施してる我が家『ミドリコ城』に帰還!


「ふ~っ、魔物の子供を拐って売り飛ばすのはそろそろ潮時だね・・」


フード付きマントを取りながら呟いて、ソファに直行しようとすると、


「何を清々した顔で鬼畜なことを言っているのか?」


いきなり幻覚魔法(ミラージュヴェール)を解いて、ソファにしなだれていらっしゃる姿を現すセクシーな褐色の肌のハーフエルフの魔女!


「ヴァルトッシェ3級指導官様?! あたしの城にいらっしゃったんですか??」


ウィザードギルドのイーストガースクールであたしの教官だった方っ。


「城? あばら屋にしか見えないが?」


「平屋の1DKでもあたしの城何ですぅっ!」


「・・まぁいい。チープなお前のチープのプライド等知ったことではない」


「ぐっ」


「ミドリコ・アゲートティアラ5級ウィザードよ、上手いこと衛兵警官からは逃げ回っているようだが、今年に入って36件しょーもない小銭稼ぎやその場しのぎの犯罪を繰り返しているな? ウィザードギルド本部の目は誤魔化せんぞ?」


「さ、さぁ何の事でしょう? あ、ヴァルトッシェ3級指導官様、あたし、口笛でホトトギスの物真似できますよ」


目を逸らしホーホケキョっ、と吹いてみせたんだけど、


法式封印魔法(スペルシール)転倒粘液魔法(スタンブルローション)


あたしの魔法を封じ、さらにフローリングにめちゃ滑る魔法の粘液の沼を造りだすヴァルトッシェ3級指導官様っ!


「んきゃーっ?!」


無限に粘液沼の床で転倒し続けるハメになるあたしっ!


「どうする? そのまま半日程掛けて衰弱し『恥ずかしい魔法で1人遊びした結果孤独死した(てい)』を、明日派遣してやるギルドの作業員に発見され、蘇生される頃にはイーストガー中の魔法使い界隈に『物理で死ぬ程ローション好きなミドリコ』として認識されるか? ギルドの極秘依頼をいくつか受けてお前の犯罪歴を帳消しにするか? どっちがいい?」


「後者で! 後者でお願いしますっ!! というか普通に依頼して下さいよっ? ローションの件いらないでしょっ?!」


「くっくっくっ・・」


御満悦そうなヴァルトッシェ3級指導官様! (へき)だっ、癖優先だよこの人!!



というワケで? あたしはよくわからない極秘依頼とやらを引き受けることになった・・はぁ、何故、あたしのような純真無垢な天使的有能若手魔女がこんな目にっ。


不遇っっ!

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