潰れた苺
お馴染みの“月曜真っ黒シリーズ”です。
百貨店で買ったイチゴが……
家に帰って見るとひとつ痛んでいた。
私は青くなって、急いで全てのイチゴをパックに戻し百貨店へ電話を掛けた。
電話口でクレームを浴びせて店の人間を呼び付け、大急ぎで玄関先を磨き上げて待ち構え、お詫びの品と名刺をゲットした。
帰り際に改めて深く頭を下げる店員二人の目の前で扉を閉めた私は大きくため息をつく。
私の注意がもっと行き届いていたら、避けられたかもしれない。
こんな事をしないで済んだのかもしれない。
けれど、夫はこんな瑕疵も絶対見逃さない人だから……きちんと対応をしておかないと私に“教育的指導”という名の暴力が及ぶ。
そんな夫は誰もが知っている国立大学の法学部出身で大手金融機関の経営企画部に属している。
「オレは上級職や法律家を目指す事もできたんだ!」と宣う典型的なエリートの夫に、私の両親は「願っても無い良縁!!」と“箱入り”の私を差し出した。
小学校から大学まで女子校育ち、その枠から外へ出る事の無かった私は何もかもが初めてで夫の色に染まるしかなかった。
多分それは世間の常識からは異質だと思う。
例えばちょうど1週間前……
身に纏っているのはヘアゴムのみの私は、バスルームでゴルフ帰りの夫の背中を流していた。
「お前!横書きのグラフや表が混在する縦書き書類のホチキス留めのやり方を知っているか?」
背中をむけたままの夫からいきなり訊かれ
「えっ?!」と聞き直したら
「違う!」と怒鳴られ一発
私が説明した“やり方”が間違えていて
「この能無しが!!」ともう一発
頬をぶたれる音がバスルームに響いた。
「物事には理屈に則した方法とその“会社”“会社”独自のやり方が相反する事がしばしばある。どの方法が“正しい”のかを、一瞬一瞬見極めないと脱落する。
事務員の何倍もの金を取ってるオレ達が上司に提出する書類のホチキスの留め方ごときで評価を受けるのはなぜだと思う?!」
何を言っても叱らせそうで、ただただ頭を振る私に
「お前ら市井の連中の考え方や行動をすべて読み切る事もできない“役立たず”こそタダ飯いだからだ! そこからすると壊れたゼンマイ仕掛けの様なお前は本当にクソだな!!」
とポニーテールの髪を摑まれ、顔を夫の股間に突っ込まれた。
「バカとハサミは使いようとはこういう事だ!」
こんな事は日常……
しかし、私は逃げ出せない。
全てに於いて夫の読みは外れた事が無く、その注意力や観察眼は千里眼のごとく。
恐ろしく頭の切れる夫は、仮に自分の身に“訴訟事”が振り掛かったとしても……弁護士に指示出しして、間違いなく勝訴するだろう。
こんな男だから当然外面は良く、私は周りから“玉の輿に乗った恵まれた女”としか見てもらえず、相談できる人など皆無……
そして、こんな夫に飼われている私は……
広い家にたった一人で……平日は夫の自己満足満載の課題、宿題をやらされ、ゴルフや会合、セミナーなどが無い文字通りの休日には……夫へ一日中“ご奉仕”している。
DVまみれのこのカラダは……外から見えない所はすべて痣だらけなのに!!
そんな私に課せられているのは
子供を産む事とそれに帰属する行為
恐ろしい事に……
もしも万一
子供が産まれてしまったら……
きっと私は
我が子からも同じ扱いを受けるのだろう……
だからもう!!
死ぬ事しか
逃げ場がないのかもしれない…….
おしまい
今週も救いようが無く申し訳ございません<m(__)m>
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