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つないだこの手は、ほどかない…


 ピピピピッ ピピピピッ

私はいつもこのアラームで起床する。

 今日は木曜日。また学校じゃん!

さっさと着替えを済ませて1階に降りていくと、お母さんが、

「あら、あやめ。そういえば昨日、(れん)からラインが来て思い出したんだけど、最近連と遊んでないじゃない。」

「あー、確かに。でも、連は23歳だよ?さすがにもう遊ばないよ。」

 連は私のいとこ。私が小さい頃はよく遊んでたけど、ここ何年か連と会ってもないなー。

 って、もう7時過ぎてる!!早く学校に行かないと!


 学校に着くと、大親友のさやが、

「あ、あやめ~!おはよ!」

と、いつも話かけてくれる。

「さや!おはよぉ!」

 それから、朝の会が始まった。

 あれ?今日はまだ渡辺(わたなべ)先生が来てない。めずらしいー。

ガラガラガラ

あ!渡辺先生…ではなくて、隣のクラスの高森(たかもり)先生が来た。

「みなさん、大事な話があります。このクラスの担任、渡辺先生が足を骨折してしまいました。

なので、代わりの先生をお呼びしました。黒木連(くろきれん)先生です。」

「黒木?あやめと同じみょうじじゃん!」

 えっ…。同じみょうじだけじゃない。

それは、私のいとこの連だから…。

「え!?まさか、あやめ!?」

と、連はびっくりして私のことを見つめた。

もう、連ってば!そんな大きい声で言わなくてもいいじゃん!

「あ…やめ…だよね?」

私が何も答えなかったからか、連は不安そうに聞いてきた。

「そ、そうです。黒木あやめです。」

みんなの前で…ほんっと恥ずかしい!!

「てか、あやめと黒木先生って知り合いなんですかー?」

と、たかしが聞いた。

「うん、そうだよ!いとこなんだ!」

「え?そうだったんですか!あやめが、うらやましい!こんなイケメンのいとこなんて!」

と、みかも言った。

 えー?連ってイケメンかなー?でも、街に出たらイケメンな方なのかもしれない!

「ほらほら、早速授業を始めるよー!」

明るい連は、このクラスにすぐに慣れているようだった。

 授業が終わると、みんな連の周りに集まった。

「好きな色は?」「なんで教師をやったの?」と、みんな連に質問をしている。

「あ!」

連は、突然何かを思い出したようだった。

「そうそう!この資料を運ぶのを、手伝ってもらおうと思ってたんだ!」

「え!私やりたい!」「俺だって!」「はい!あたしも!」みんなが一斉に手を挙げた。

「じゃー、あやめ!よろしく!」

え?私?なんでよー、手を挙げてないのにー。

私は仕方なく、連と資料を運び始めた。

「そういえば最近、あやめにラインしても返してくれなかったよな?なんでだよ~!」

「だって、しょっちゅうラインしてくるんですもん。うっとおしいんです!」

「うっとおしい?失礼なー。」

相変わらず、連は私をからかうように言ってくる。

「てか、あやめと俺はいとこだよ?敬語なんて使わなくていいって~!」

「え~?じゃあ、連って呼んでもいいの?」

「うん!プライベートだけなら!」

 楽しい…。連と話すのってこんなに楽しかったっけ?久しぶりに話したから?

いや、違う。連に対して、こんな気持ちになったことはなかったもん…。


 それから、1週間後…。1時間目は学年集会だった。

私は、さやと一緒に体育館に向かった。

 そして、学年主任の先生が話し始めた。

「昨日、お見舞いに行ったところ、3週間後くらいに渡辺先生が帰って来られることになりました~!」

え!渡辺先生、帰って来られるんだ!!重い骨折じゃなかったのかな?

 …でも…。そうしたら、連はどうなっちゃうんだろう…。

もう私たち、いや私の先生ではなくなっちゃうのかな…?

「そして、もう1個お話があります。黒木先生が6年1組の副担任になることも、決まりました!」

えぇー!!1組って私のクラスじゃん!やったあ~!嬉しすぎる!

 ふと、私が後ろを向くと、連と目が合った。連はニコって笑った。

私だけの、私しか見ていない笑顔かと思うと、胸が温かくなった。


 連の授業はあっという間で、もう放課後が来た。

私は、明日までに終わらせなくてはいけないポスターを、1人で居残りをしてやっていた。

ガラガラガラ

教室のドアが開いた。それは、連だった。

「あ、あやめ!まだポスターやってたの!?もう居残りしていい時間より25分も過ぎてるよ!」

「え!?ホントだ!もう帰らなきゃ!」

私はが帰ろうとすると、

「あ、久しぶりに今日、あやめの家に寄っていい?」

「え!?」

「ダメ??」

「ダメじゃないけど…。」

そうしたら、一緒に帰るってこと!?ドキドキしちゃうよー。

連と2人でろうかを歩き始めた。

「イタッ。」

私は、渡りろうかの段差で足をくじいてしまった。

「大丈夫!?とりあえず、保険室に行こう。」

「う、うん。」

私がやっとこさ立ち上がると、

「え?歩ける?」

「だ、大丈夫!」

「無理しなくていいよ!」

連は私をひょいっとおんぶした。

「えっ。」

おんぶ…してもらったの、何年ぶり…?私が6歳くらいのときに、やってもらったのが最後かな?

もー!連は、お人好しすぎ!!!こんなの、クラスの子に見られてたらどうしよー!

「あ、あれ?保険の先生いないなー。ま、シップを貼っておくか!」

連の貼ってくれたシップは、冷たくて温かかった。


 それからのことは、私もよく覚えていない。

気が付いたら、私の部屋のベットの上にいた。

「お、あやめ。やっと起きたか?」

「…?」

「あやめ、あれから寝ちゃってさ、俺がおぶって来たんだ。」

「え…。」

寝た!?女子力なさすぎなんだけどー。

「寝顔も相変わらず、可愛かったよ。」

か…わいかった?き、聞き間違えかな?

「か、かわいい…?」

「うん。ホント小さいときと変わんないなー。」

え?ホントに可愛いって思ってくれてたの?あ、いとこだから、言ったんだよね。そ、そうだよね。

 連からしたら、私なんか恋愛対象に入ってるわけないよね。


 次の日は土曜日。

私は、調べ学習の宿題で図書館に行った。

えーっと…、あった!『日本国憲法』の本!いい本があって良かった~!

 帰り道…。角の公園を曲がろうとしたとき、連が公園のベンチに腰掛けているのが見えた。

でも、連だけじゃなかった。横に…女の人も座っている。

私は気になって仕方がなく、2人のそばの木の後ろに隠れた。

「ねえ、ゆうか。どう思う?」

「そうねー。」

ゆうか?誰だろう?私の知り合いじゃなさそう。

 まさか、ゆうかって人…連の彼女!?

そ、そりゃそうだよね。連だって大人だし、彼女だって…いるよね。

「じゃ、ありがと。」

「うん、またね。」

と…、

「きゃっ。」

私はよろけて、後ろにたおれてしまった。

 でも、まったく痛くなくて、包み込むような優しいクッションに受け止められた。

「あやめ!?」

それは、連だった。

「連…。」

「あやめ…なんでここに…?」

「ごめんなさい!連と女の人が話しているのが見えて…。」

「じゃあ、話聞いてたってこと!?」

「最後の会話を、ちょっとだけ…。」

「あ、そっか。」

「あ、あのさっ。」

私の口が勝手に開いた。

「あの人と連は…、付き合って…いるの?」

わ、私ってば、何言ってるんだろ…。

「え、付き合ってるわけないじゃん!ゆうかは、俺の親友の妹。あれは、恋愛相談しただけ!」

あ、違ったんだ…。私はちょっとホットした。

「恋愛相談?連って好きな人いたんだ…。」

ショックでたまらなかった。私は泣くのをぐっとこらえて、連の顔を見つめた。

「え?あやめってホント天然だなw!」

「…?」

「好きな人ってあやめだよ!」

「え…。」

「だから、両想いってこと!」

両想い…?

「え、なんで両想いって分かるの?私、別に連のこと好きじゃないんだけど!」

と、私は口をとがらせてウソをついた。

「分かるよ!あやめの顔を見てれば!俺と話すときに、しょっちゅう顔が赤くなってるもん!」

「え!やだぁ!!恥ずかしい!!」

やっぱり、連には全部お見通しだったみたい。

「はい、手!!」

と、私に手を差し出した。

私は、黙ったまま連の手をつかんだ。

 10年後も、このまま手がつながっていますように…。

 




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