3話成人の儀式
コンコン
「はーい」
「母さんっ!!!!」
「リアムっ?!リアムなの?!!」
母さんは最後に会った時より少し老けていて、恐らく30は超えているだろう。自分がもう14の成人に近い男子なんてことは忘れて母さんに抱きついた。身長も俺の方が大きくなっていた。自分の視界が一気に色づいて今までの悪夢が嘘だったかのようだ。
「エイダン!!!!起きなさい!!リアムが帰ってきたのよ!!!!」
「なにっ!それは本当かっ……!!!!」
「父さん!!!!」
その後は家族3人で泣いてから俺が屋敷で何をされていたかはあえて触れずに会話が流れていった。
「お前また小さい時みたいに真っ白になったなぁ。どうせずっと寝てたんだろ?」
「そうだよ。でも身長は伸びたでしょ。寝る子は育つってことだよ」
「ハハハ。まだ15歳ならお前は俺を超えるさ!」
「食べる量が増えるならその分働きなさいね。」
「そういえばもう成人の儀式だな。リアムはどんなスキルを授かるんだろうな」
「てか、父さんと母さんのスキルってなんなんだ?」
スキルとは人生を左右する大切なものでハズレ絶対には無い。基本的に1~3個あり、魔法が使えるスキルがあったものは15~18の間、魔法士学校への進学義務がある。成人の儀式では身分証が貰える。それがあればいつでも自分のステータスを見ることが出来、レベルが上がる事にステータスが更新されるのだ。
「俺は火魔法と剣術だ。お前が産まれる前は冒険者をやっていた。」
「私は裁縫と自己治癒よ。少しの傷ならすぐ治るの。」
そう言って父と母はステータスを俺に見せてくれた。
<エイダン>
年齢:35
スキル:火魔法、剣術
Lv15
攻撃力:85
MP:170
<アン>
年齢:34
スキル:裁縫、自己治癒
Lv5
攻撃力:35
MP:ー
魔法スキルのない人にMPはなく、スキルも増えることは無い。レベルは1~5が一般人、5~15が冒険者や騎士、兵士20を超えると戦争などで活躍してくる将軍や、最高位冒険者などになってくる。レベルは魔物を倒すことで上がるが、人の寿命では50が限界とのことだ。過去の英雄がそうであったらしい。
俺はいいスキルが手に入るといいなと心躍らせながら眠った。
次の日俺は帰ってきたのが夜中だったため、帰ってきたことを知らせられなかった親しい人に帰ってきたことを報告に回った。ここは少し小高いところにある牧場で牛を眺めながらベンチに座っている少女がいた。10人いたら、10人がかわいいとこたえるほどではないがかわいい素朴な顔立ちをしたエマがいた。
「え。?もしかしてリアム???」
「そうだよ。エマ。帰ってきたんだ。」
「ずっと心配してた…私言いたいことがあったのにっ!ずっといえなくてっ…」
「言いたいことってなんだ?」
「……」
「……」
「そ、その、わ、わ、私…ずっと前からリアムのことが好きだったっ……!」
「……」
俺は一瞬固まった、。確かにエマのことは俺も好きだ。
「俺もだよ…エマっ!恋にはまだなっていないかもしれないけれど俺はエマのことが好きだ。」
なんだかすごく恥ずかしかった。きっと先に言ってくれたエマの方が勇気も緊張も恥ずかしさも大きかっただろう。でもその恥ずかしさは真っ赤な顔をした可愛いエマだからこそあったものだった。恥ずかしさを自覚した。きっとこれが最初の恋の始まりだった。
その後はダンやジャック、ルーにも帰ってきたこととエマと両思いになったことを伝えた。身長はダンは俺と同じくらいだったが、意外だったのはルーが案外高くなっていたことだった。ジャックとルーは身長も同じくらいでエマより高かった。エマが160くらいで、ルーとジャックは170くらいだ。ジャックは低身長なことを気にしており、ルーは高身長なことを気にしていた。ルーとジャックは魔法士学校へ入学することにならない限り成人の儀式がおわったら、宿屋を継ぐらしい。ダンは狩人兼冒険者をめざしており、成人したら近くの都市で冒険者登録をしてレベル10を目指すようだ。
俺は特に夢もないので農作業しようと思っている。ここでの穏やかな生活も心地いいしな。
そんなこんなでみな家の手伝いをしながら時々5人でご飯を食べに行ったりして、あっという間に成人の儀式の日になった。今年15になるのはカリン村では俺たち5人だけ。小さな教会に集まり、偉い人が持ってきた水晶に手を当てて出てきた身分証を受け取る。
「なあ!みんなはスキルなんだった???俺は弓術と探索だ!狩人にはもってこいのスキルだぜ!!!」
「僕は火魔法と料理だった。学校に行くのは嫌だよ〜」
「私は指導よ。1つなのは残念だけど教師にもなれるしうちの牛の世話もできるわね。」
「私は掃除と速読。本を読むのが好きだからこのスキルをさずかったのかな。?」
僕は困惑していた。それは自分のスキルのせいだった。僕はとんでもないスキルを手に入れてしまった。自慢したい。でも怖い気持ちもある。僕はいま水晶を触った瞬間から、周りとは違う時間を生きることになるのだから。
<リアム>
年齢:14
スキル:怪力、不老不死、剣術
Lv0
攻撃力:10
MP:ー
「おいー!!リアムのスキルはなんだったんだ?」
「あ、あぁ、怪力と剣術だった。冒険者にはもってこいかもな。」
「すげー!見るからに強そうじゃん。やっぱ優男はちげーな。」
「リアム、牛が言うことを聞かない時には手伝ってよね!」
「新婚かよ!!」
「「「「ハハハハハ」」」」
俺は言わないことにした。
生まれてきた時から自我があった。結局俺は秘密だらけの人間なのだ。