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VRMMOで俺より強い奴に会いに行く ~どう見ても異世界なVRMMOで、格ゲー好きが我が道を行くそうです~

作者: Mr.ティン

<ログインしました。

<ようこそアステリアへ!

<まず、プレイヤー名を入力してください。


>タツミ


<この名前で宜しいですか?


>YES


<プレイヤー種族を選択してください。


>ヒューマン


<容姿と体格を選んでください。


>黒髪・鳶色の目・中肉中背


<出身地を選択してください。


>王国・森の民


<初期ステータスは以下のようになります。


【名前】タツミ

【種族】ヒューマン

【容姿】黒髪・鳶色の目・中肉中背

【出身】王国・山の民

【ステータス】

筋力:1.0+0.1(山の民補正)

持久:1.0

頑強:1.0+0.1(山の民補正)

敏捷:1.0+0.1(王国補正)

器用:1.0+0.1(王国補正)

知性:1.0

精神:1.0

魔力:1.0

魅力:1.0


>YES


<初期技能を選択してください。


>戦闘:初級格闘Ⅰ

>採集:初級狩猟Ⅰ


<その技能で宜しいですか?


>YES


<スタートする町を選択してください。


>高原の町スメトベルグ


<その町でよろしいですか?


>YES


<オプションを選択してください。


>動作補助:OFF

>痛覚遮断:OFF

>R18フィルター:OFF

>R18Gフィルター:OFF


<その設定でよろしいですか?


>YES


<ではゲームを開始します。さぁ、果て無き冒険の旅路へ!







目を開くと、そこは何かの客室のようだった。

木製だがかなりしっかりしたつくりで、ベンチのような簡素な座席が並んでいる。

真ん中に通路があり、両壁の窓の向こうにはゆっくりと流れる景色がある。

座席は満席。

乗客は、物珍しそうに周囲を確認していたり、窓際の者は外を景色を眺めていたりしている。

そこまで考えて、ここが乗合馬車の中だと思い出す。

この状況、確かこれは初ログイン時の仕様だったか。

混雑緩和にスタートする都市は5つの中からの選択制。

さらにログイン処理はキャラメイク完了順に、馬車の座席へと配置されていくという仕様だった筈だ。

座席に並ぶのは、俺とほぼ同時にキャラメイクが終わったプレイヤーたちだ。

皆、期待に満ちた瞳をしているのは、VRMMORPGたるアステリア・サーガのβテスト、その開始に立ち会えたからだろう。



アステリア・サーガは、フルダイブ系VRMMOの最新タイトルだ。

その最大の特徴は、舞台となる世界が、さる国際プロジェクトで演算され続けた仮想世界がベースになっていることだ。

地球環境シミュレーターから派生した、『異なる世界』の仮想領域への生成計画は、量子コンピューター後の幾つかのブレイクスルーを経て成功するに至った。

そして学術的な実験で生まれた『異世界』を、国際プロジェクトの完了後も何らかの形で生かす構想から、フルダイブVRMMOの舞台へと流用されることとなったのだ。

老舗の大手ゲーム会社のしっかりとした監修の元、システムやシナリオも組み込まれたそこは、まさしく果て無き冒険の舞台。

何しろ、元のプロジェクトでは、地球とほぼ同じ大きさの惑星を再現していたのだ。

イベント自動生成プログラムや、NPCマテリアル管理による人格付与などの要素は、まさしく異世界と呼ぶにふさわしい。

プレイヤーは、異世界に降り立つ来訪者であるが、もう一つの世界を生きる一人の命でもある。

俺はそのアステリアのβテスターとして選ばれた一人というわけだ。



座席に座ったまま、自分の手を見た。

革のベルトのようなものが手に巻き付いている。

これは初期技能に格闘技能を選んだ際の初期装備のセスタスだったか。

まとっている服は、初期に選択した種族と出身で決定される民族服だ。

周りの乗客も皆倍率の高い抽選を引き当てたβテスターであり、皆出自に合わせた初期民族服を着ていた。

腰や背には、それぞれ選択した技能の初期武器がある。

体格や人相はそれぞれだ。

種族によっては、現実とかけ離れた体躯も可能なため、かなり多彩な印象になる。

この視界と先ほどから感じる振動、本当に生身のようだ。

新鮮な感覚に感動していると、不意に揺れが止まった。

窓の外の景色ももう流れない。


俺が選択したスタートタウンである、高原の町スメトベルグについたのだ。




馬車を降りて思ったのは、『山』という一文字だった。

四方どこを向いても山、山、山。

近辺は緩い平地だがすぐに斜面へと変わり、山々となる。

切り立った山の中にある盆地に、スメトベルグの町はあった。

町の入り口傍の乗合馬車の駅には、次々と後続の馬車が来る。

今乗って来たそれと同じように、βテスターが満載されているのだろう。

そして馬車を降りた人の流れは、町の中へ。

俺もその流れに乗る。行先は同じだからだ。


来訪者、つまりプレイヤーは、来訪者協会で登録をして、初めてこの町での活動を許される。

未登録者は、犯罪者予備軍扱いされるから、登録は必須だ。

逆にアングラな活動をするなら、登録しない選択肢もあるのだろうが、俺はそのつもりはない。

俺がこのアステリアでやりたいことに合わないからな。


周囲の町並みは、昔動画で見た古いスイスの町並みに似ている。

なんとも美しい街並みで、道行く人たちの服装もそれに近い。

更に言うなら、俺が今着ているのと似ている。

ここスメトベルグは、王国の領地内であり、山の民と呼ばれる人たちが主に住む町なのだ。

そんなことを考えながら歩いていると、行先にやけに大きな建物が見えてくる。

あれが、来訪者協会なのだろう。


流れのままに大きく開け放たれた入り口から入ると、複数の受付の前にずらりと人の列が並んでいた。

どうも、βテスターの中でも俺は出遅れ気味だったらしい。

容姿をリアルからある程度弄っていた分、リアルから然程変えずに始めた面子に先んじられたようだ。

とはいえこの人数ならまだ許容範囲だ。

確か受付では名簿への記入と、初期チュートリアルクエストの受注が行われるだけ。

直ぐにこの列も捌かれていくだろう。

実際その通りであり、すぐに俺の番がやってきた。


「次の方、どうぞ」

「はい」


呼ばれて受付担当の前に立つ。

俺の列の担当は、怜悧な印象の眼鏡美女だった。

一分の隙も無い着こなしといい、こんな激務の中での冷静さと言い、クールビューティーという言葉が頭に浮かぶ。


「私は、貴方の担当となるミアンと申します。来訪者の方ですね。こちらへ記帳を御願いします」

「わかりました」


ミアン女史に促されるままに、PCネームと初期スキルを書き込んでいく。

この記帳はほぼ自動処理だ。

どうあがいても自分の経歴や初期スキルが書き込まれるようになっている。

ここで犯罪方面の技能を持っている場合、監視対象にもなるらしい。

それを嫌ってアングラな活動をする者はどこかにある裏ギルドなどに接触すると、事前に調べた情報に在った。

とはいえ、俺には関係ないことだ。


「タツミ様ですね? この町での活動方針は決まっておられますか?」


記帳が終わり、俺の情報を確認したミアン女史がそう尋ねてくる。

俺は、迷いなく答える。方針、目的ははなかった決まっているのだ。


「西の修道院に。俺は強くなるために、強い奴と戦えるようになりたくて、ここに来たんだ」


そう、俺は強くなる。強くなったうえで、様々な強敵と戦いたいのだ。



量子コンピューター後の幾つかのブレイクスルーの後も、格闘ゲームというジャンルは健在だった。

VR投入型の対戦格闘ゲームは、大きなフィールドデータや多彩なアイテムなどを用意する必要もない分、むしろ活発になったとも言えた。

俺もそのプレイヤーとしていくつかのタイトルを楽しんできた。

ただそのVR投入型のこれまでのタイトルにはいくつか不満があった。

まず動かせるキャラクターが固定であり、どうしても普段の自分の身体との差異で、身体を動かす感覚にギャップができること。

キャラクターのカスタマイズが出来ないことだ。


そういった不満を抱えていた時、このアステリア・サーガを知った。

ほぼもう一人の自分を、異世界と言えるような精巧な世界で、自分の望むままの自分をカスタマイズ出来る。

特に、スキル次第では派手なオーラを纏った必殺技を使うこともできるのだ。

自分というキャラクターが、いろんなタイトルの主人公たちと同じように戦えるようになる。

それは大きな魅力だった。

結果俺はアステリア・サーガのβテストに応募し、見事当選してここにいるのだった。



「つまり活動としては、訓練及び傭兵業となりますか?」

「ああ、あとは、修行ついでにモンスターを狩ったりもすると思う」

「でしたら、来訪者協会で戦闘訓練とこの付近の狩猟規則の確認を履修してください。その後、来訪者証を発行いたします」


受付嬢のミアン女史とのやり取りが続くが、この辺りは完全にチュートリアルだ。

戦闘技能を持つ場合は戦闘訓練を、採集技能を持つ場合は規則と付近の採集対象の分布についてのレクチャーを、生産技能を持つ場合は技能に合った組合を紹介してもらえる。

他のゲームではチュートリアルを敬遠して無知識で突き進むプレイスタイルもアリだろうが、このアステリア・サーガでは止めた方がいい。

何しろ、このゲームではキャラロストがあり得るのだ。


このアステリア・サーガでは、蘇生魔法にタイムリミットと条件がある。

タイムリミットは死亡後ゲームない時間で1日経過。

条件は死体の欠損状態が一定以下。

これらを満たせないと、NPCもPCも例外なく完全死亡し、ロストとなるのだ。

この場合、再度のプレイはキャラクリエイトからとなる。

同時にNPCも同様である以上、無謀なプレイは厳禁だ。

これらの事前情報があっても、やらかすプレイヤーは居るだろうが、今のところβテスターにそんなバカは居ないようだ。


戦闘訓練では、根本的なこの世界での体の動かし方から教えてもらえる。

キャラクリエイトで現実の身体とはかけ離れた体格にしていると、まともに身体を動かすことさえままならない場合もあるのだ。

その点、俺の場合は顔つきを変えた程度で身体はほぼ現実と同じにしてあるから違和感も無い。

ここまで歩いてきた感じ、自分の身体として扱えている。

同時にこの戦闘訓練では、汎用の戦闘技能の習得フラグを立てられるというのもある。

回避や各種武器を使った受け、もしくは初期に選んだ以外の武器戦闘技能の初級等だ。

初期装備は選んだ武器技能に寄るが、実際にアステリア内で身体を動かした後に武器を変えたい場合もあるだろうから、そのための救済処置なのだろう。

ただ訓練では習得のフラグが建つだけであり、実際の習得には実戦が不可欠という仕様であるらしい。

俺としては、当面は初期に選んだ格闘技能をそのまま鍛えるつもりだ。

あとは補助に回避や受け等の防御技能、そして距離の離れた相手への牽制用に投擲技能の習得フラグを立てておきたい。


このように、アステリア・サーガでは多彩な技能を習得して、自身を強化していくことになる。

技能は主にNPCからの指導で習得フラグを立てて、実戦を経て習得していく流れだ。

そして、このNPCからの指導というのが重要だ。

多くの汎用技能は教えられる指導NPCも多いのだが、珍しかったり高度な技能ほど指導NPCは少なくなる。

レアな技能となるとアステリア世界全土でも数える程しかいないというのもあり得るのだ。

同じ技能でも流派とも言うべきものがあり、行動の補正値に差があるというのもある。

このため指導NPC探しというのもアステリアでは重要な要素となる。

そしてそれこそが、スメトベルグをスタートタウンに選んだ理由だった。

この町は、俺好みの格闘技能を覚えられるのだ。


そもそもスメトベルグは、現実のスイスをモチーフにしているのか、古くから傭兵業が盛んらしい。

山岳地で鍛えられた傭兵たちは、他国の貴族等に雇われるなどして多くの戦果を挙げてきたのだとか。

その戦闘技術を指導してきたのが、町の修道院の修道僧だ。

現実の修道院も様々な技術の知識を蓄えてきた面もあり、そこから技能の指導場とされたのかもしれない。

特に格闘技能の場合はノリが拳法を教える寺院のそれだ。

事前に見たスメトベルグを紹介するPVでは、居並ぶ門下が技の練習に勤しむ姿が見受けられた。

そのPVで写っていたのが、先に答えた西の修道院なのだ。



「来訪者証を受けとったら、西の修道院の指導も受けられるのか?」

「はい、同時に傭兵業用と採集用の依頼板の利用が可能となります。ほか、生産組合等の指導も受けられるようになりますね」


つまり、俺のような初期に生産技能を選ばなかったプレイヤーでも、生産方面への方向転換が可能ということだ。

もっとも当面はその気はないが。



「注意事項ですが、当面は来訪者の方々は町での買い物や取引は制限されることとなります。来訪者の方々の装備類の売買、および素材買取は、来訪者協会を通じてのみとなりますね」


たしか、これも事前情報に在った。

現状はβテストの為、町での買い物はこの来訪者協会内でしか行えないという通達だ。

またログインログアウトも来訪者協会内の簡易宿泊施設で、飢餓ダメージ回避の食事の場も、来訪者協会内の食堂や携帯食を利用するしかないとか。

町のNPCに無理強いしても、現状のPCよりはるかに強いNPC衛兵に捕らえられるだけ。

不便だが、当面は従うしかない。


「大まかな説明は以上となりますが、何かご質問は在りますか?」

「いや。大丈夫だ」

「では戦闘訓練は中庭の練武場で、採集類の講習は2階の講習室で受講してください」


ミアン女史の指し示す先には案内板もある。

是なら迷うこともないだろう。


「ありがとう。じゃあ行ってくるよ。これからよろしく」

「ええ、タツミ氏の今後の活躍に期待します」


一礼して、まずは採集の受講室に向かう。

俺は本命を後回しにするたちだからな。

戦闘訓練こそ個人的な本命である以上、あとのお楽しみだ。



採集の講習は、中々に為になった。

俺は狩猟の技能持ちであるため、猟師の分野の講習を受けたのだが、ありがたい情報ばかりだった。

付近のモンスターの分布やその傾向、取れる素材や売り物になる部位というのはまさしく貴重だ。

来訪者の登場により食料の確保は急務らしく、講師である猟師のNPCも何というか本気だった。

そもそも来訪者が受け入れられる土壌として、モンスターの大発生があるらしい。

それらを加味すると、とにかく狩って狩って狩りまくれという状況のようだ。


他にも、植物素材の採集の講習も受けておいた。

食用の野草や回復薬の素材になる薬草の類を実物を交えて教えてくれたので、かなりわかりやすい。

草類の採集時の根を傷めない方法など、覚えておかないと拙い情報も多々あった。

薬草類の群生地の場所とその保護ルールは、その最たるものだろう。

この講習を受けた結果、俺の技能欄には採集:初級植物0が追加されていた。

技能の横の0が習得フラグが建っている状態のようだ。

なるほどわかりやすい。

この状態で薬草等を採取したら、はれて表示がⅠになって技能として有効になるのだろう。

来訪者証を手に入れたら、町の外の薬草取りの依頼でも受けておいても良いかもしれない。



必要な講習を受けたら、いよいよ戦闘訓練だ。

来訪者協会の中庭は練武場になっていた。

あちこちに標的となる木製の人形が置かれ、βテスターらしき者たちがそれぞれに武器を振るっている。


「おう、来たか。新入り」


物珍しそうに練武場を見渡していた俺へ声をかけてきたのは、教官か指導員らしき人物だった。

巌のような風体に精悍な顔立ち。

右足の膝から下が義足な所も含めて、如何にも元傭兵といった人物だった。


「こちらで戦闘訓練を受けるように言われました、タツミです」

「おれはグレオイアス。元傭兵で今はここの指導員をやってる」


見た目の印象通りの人物だったようだ。


「ここじゃあ戦闘訓練をすることになってるが、まずは好きにやってみろ」

「好きにって言うと?」

「的が必要ならその辺の木人でも殴ればいいし、相手が必要なら動くタイプの木人を相手に出来る」


指導員の指し示す先では、武器を持った木人が緩やかな速度でβテスターらしき人物と戦っている。


「まずは自分を知れ。技能や何だはその後ってことだ」


なるほど言いたいことはわかったし、その内容も頷ける。

実際、この身体の現状の性能は確かめる必要があるだろう。

俺は言われるままに、まずは動かない木人の前に立ち、構える。

今までのVR格闘ゲームでは、ここでキャラ固有の動きにされたが、今はまだ自由に動けるようだ。


そこで腕のリーチを確かめるように左腕をまっすぐ伸ばす。

伸ばした拳の先が木人に当たるかどうかというところまで近づいて、間合いを確かめる。

間合いを確かめたら、軽く左ジャブを数発。

案外拳速がある。悪くない。

今度は渾身の右ストレートからの左フック。

完成されたVR格闘ゲームのキャラに比べてまだ動きに鈍さはあるけれど、格闘技能のせいか生身よりも動きにキレがある気がする。

木人に打ち込んだ手に軽い痛みがあるように感じるのは、俺が痛覚遮断設定をOFFにしているからだろう。

しばらくジャブとストレートを交えたコンビネーションを試していく。

慣れたら、そこにフットワークも混ぜていく。

ステップインとステップアウト。

少し離れて踏み込みに合わせた右のストレート。

続けて左ローキックから、踏み込んで左右の肘。

組みついての胴部への膝から、離れつつのジャブ。

少し間合いを離しての、左右のミドルキックに打ち下ろし気味のハイキック。

どの動きも素晴らしくスムーズだ。

自分の身体として動かしている実感がある。

そうやって、ひとしきり木人相手に自分の性能を確かめたら、次はとなりの標的だ。

今まで叩いていた木人とは違い、こちらは四つ足の獣を模していた。

それも、どうやら動くようだ。

ウッドゴーレムの一種だろうか?


「そいつは、ここいらで出る狼の動きをするパペットウルフだ。爪も牙も無いからとびかかられても死にはしないが、本物ならその時点でお前は死ぬことになるぞ」


俺の様子を観察していたらしき指導員から声がかかる。

なるほど、実戦に寄せた訓練ができるようだ。


改めて、狼を模した木人、パペットウルフを見る。

四つ足の獣である以上、全体に低い位置への攻撃しか有効ではないだろう。

特に俺は素手格闘が主だ。

低い位置へのパンチには不慣れであるし、となれば有効なのは……

そう思って居ると、パペットウルフがまさしく狼の如き動きでとびかかって来た!


「シッ!」


鋭い呼気と共に繰り出したのは、打ち下ろすようなローキック。

鞭のようなしなりを以てはなったそれは、狼人形の頭部を斜め上から地面へと叩きつけた。


「おう、悪くない蹴りだ。だがここいらの狼は群れる。素手では限界があるから気をつけろよ?」


指導員からの評価も中々のようだ。


結局俺はこの日のログイン中、ずっと訓練場でし続けた。

この身体に馴染むには、それが一番だったからだ。

結果、自分のイメージした動きを概ねトレースできるようになっていた。

これならば、第一の目標のあの場所に行ける。

西の修道院。

この世界独特の格闘戦闘術を教えてくれると言う、その場所に。

どんな技を教えてくれるのか、今から楽しみだ。

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