07 オーク族の悩み
その後、オーク族の男、ザラに付いていき、彼の家に一度案内してもらうことに。
「おじゃましま~す……うっわぁ」
ただの石で出来た家は、なんというか、コケやら虫やらでかなり不衛生な印象を受けた。まだ獣人村のボロい和風民家の方が清潔感があった気がする。
「……俺たちの悩みって言っても、どこも同じだろうよ……」
ザラは話しだす。やはり、畑の質が落ちて上手く野菜が作れないのと、流行り病。
それに、ただの石レンガを組み立てただけの隙間風だらけの家ばかりの街は、家本来の目的の一つである、寒さをしのぐという事には向いていない。
なのであたしは、ザラの家からフード付きのマントを借りて正体を隠し、前回同様に、畑の質を上げる手順と、魔法<グロウ>の使い方を書き上げた紙きれを用意して、畑仕事担当の者を招集した。
そして、見事に畑の質を上げて見せたあたしを、神のごとく崇めるオーク族たち。
次に、病原を調べ、それに合ったポーションの作り方を街の医療担当に教える。
「ごめん、これ、試作だけど、効果あると思うわ。試してみて?」
『ありがとうございます、聖女様!』
医療担当は口を揃えてあたしに感謝の言葉を贈る。……あとは、一番面倒なの。
石造りの街、とてもいいけど、ただの石を組み立てただけじゃなぁ……。あたしの木造建築もどうよって感じだけど。
これに関しては、初めての事なので、すぐには対策が浮かばない。ある程度問題解決したし、ザラのところに戻るか……。
扉を開けると、あたしが持ってきた本を読んでいたザラがニコッとする。
「おかえり、聖女様? 活躍は家に居ても聞こえるよ……隙間だらけだからね」
「あっははは……自虐ネタですかね」
マントのフードを脱ぎ、ザラの方へ歩く。
「ねえ、ザラ達は獣人族たちのこと、嫌い?」
「いや、今の獣人族に関しては、森を越えた先に居る別の種族程度にしか思っていない。俺たちも、獣人族と同じで、先祖たちの戦争から運よく逃げられた者たちの子孫だ」
「あたし、あなたたちの力を借りたいのだけれど」
「そのために来たのか。お前は破壊の吸血鬼だろ? どうして村の手助けなんかするようになったんだ?」
「その、破壊の何たらって言うの、あたしは知らないのよ。3日くらい前に、記憶を失ってさまよっているあたしを獣人族の人が助けてくれたのよね」
とりあえずでさらっと嘘をついておく。どうせバレんバレん。
「じゃあ、あの時の記憶はないわけだな? もう、破壊衝動とか起きない?」
「起きないわよ」
「ホントに?」
「ええ」
「ホントにホント?」
「しつこいわね」
あたしがそう言うと、ため息をついた後にニコッとする。
「じゃあ、君はキリエに似てるだけの少女ってことでいいんだね?」
「ええ、でも、獣人村で名前はキリエってことになってるから、オーク族のみんなにはザラから説得してほしいわ」
「……分かった。それで、獣人族の村の手助けって、何したらいいんだよ?」
「そうね……まずは、村のことについて……」
ザラに街中のオーク族を中心の広場に集め、あたしが5000年前に大厄災を起こした破壊の吸血鬼、キリエ・ボルドーレッドではないことを説明させてから、あたしは獣人村の現状について話し始める。
数々の悲劇に見舞われ、今では村人が20人ほどしかいなく、生活水準もほとんどオーク族達と変わらないこと、そして、オーク族が協力してくれれば、今よりもいい生活を保障するとも。
「獣人族とオーク族が力を合わせて、健康で豊かな暮らしが出来る新しい街を作るのよ!」
ここで演説が終わり、オーク族の一部からは拍手が起きる。
「聖女様! ですが、私たちと獣人族を隔てる森には、危険な魔物がおり、通り抜けることはできません!!」
「そうだ! 俺たちの仲間も、何度か獣人村に行こうとしたが、森に入って帰ってきたやつは一人もいない……獣人村にも、彼らはいなかったのだろう!?」
「ええ、居なかったわ」
「じゃあ、やっぱり獣人村にはいけないじゃな……はっ」
「フン、ようやく気付いたのね。あたしは通り抜けられたわよ!」
「一体、どうやって……」
ザワつく街の住人達。あたしはパチパチと手を叩いて注目させる。
「まあ、付いてきなさい!」
あたしはオーク族をひっぱって、森に行く。先ほどなぎ倒して、獣人村の草原がうっすらと見える道を見せると、オーク族達は顎が外れんばかりに口を開けていた。
「す、すげぇ……」
「はぐれない様に付いてきなさい!」
……これで、村に力仕事要員げっちゅ!
明日から、文明レベルがぐんぐん上がっていくのを想像して、ニヤけながら森を歩き始める。
◇◇◇
「着いたわ。ここが獣人村よ」
オーク族達は、自分たちとは違う発展の仕方をしている獣人村を見て、驚きの声を上げる。
そして、オーク族を連れ歩くあたしに気づいた村人が村中の人達を大通りに集める。ハナさんとリク君がこちらに駆け寄り、笑顔で迎えてくれた。
「キリエちゃん! すごいや! 本当にあの森を抜けてきたんだね! その方達がオーク族?」
「そうよ! これから、あたしたちの村を助ける手伝いをしてくれることになったわ」
この村には、オーク族が寝泊まり出来るだけの空き家がある。あたしはそれぞれ2,3人ほどで一つの家を与え、簡単に木を長方形に切った何も刻まれていない表札を渡す。
「聖女様、これは……」
「表札よ! 自分たちの名前でも掘って、家を間違えないようにと思って」
最後のオーク族達を空き家に案内し終え、一息。
んじゃ、お昼ご飯にしますか!