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友達欲しくて、死者転生したらヤバい奴出てきた。  作者: 釈迦堂欅
第1節 第1楽章 序曲〜オーバーチュア〜
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第3話 友達作るのは野望になりませんか?


「ひぅっ…!」


わたしが死者転生を行った理由を聞くと、大きな声で聞いた事のない言葉を言われた。


驚いて発した言葉なのは分かったのだが、突然の大声にわたしも驚いてしまった。


心臓の動きがバクバクと大きな鼓動になっているのが自分でもわかった。



「あ…ごめん。急にでかい声出しちゃって」



あたふたしながら謝罪してくる。



こういう所を見ていると、優しい人だってことはよく分かる。



「いえ…びっくりしただけなので……」


「てか、さっきの話…マ、じゃなくて本当…?」


「…うん」



今度は突然、膝から崩れ落ち、天井を唖然とした顔で眺めている。


怒っているのか、悲しんでいるのか、そこから感情を読み取ることが出来ない。



「あ、あの…ごめんなさい!やっぱりこんなことするべきじゃ…。コー…ラ、ル?」


わたしの声で気がついたのか、光を失っていた瞳に生気が灯った。


「ん…?ああ、怒ってるわけじゃないんだ…。もっと、こう…野望と言うかそういった感じのものでやったのかと思ってたからな」



「……友達が欲しいって言うのは野望になりませんか?」



コーラルから言われたその言葉に少しムッとしてかえす。


普通の人からしたら『そんな』ことかもしれない。


でも…わたしにとってはずっと願い続けてきた、たった1つの生きる希望なのだ。



それだけは誰にも否定して欲しくなかった。


「いや、それは野望と呼ぶには純粋すぎるし、小さい。どうせだったらもっとデカい目標にしない?」



ひょうひょうとした口調で、小馬鹿にされたように言われ、今度は心が不貞腐れていく。



「……でかい目標って、なんですか?」



「世界中に友達を作る、っていうのはどう?」



なに、それ…。


世界中に…友達をつくる?

確かに、出来たらとても素晴らしい事だと思う。



でも………。


「無理だよ…。わたしには……出来ない」


「なんで?君は人見知りもあまりしないし、肝も据わってる気がするんだけど」


「違うの…そういうのじゃなくて、わたし…外に出られないの」


「うん、知ってる」



しれっと言ったその言葉に神経を逆撫でされ、また腹が立つ。



なんで知ってるのか分からないけど、本当に知ってて言ったのなら、タチが悪い。



「……バカに、してるの?」


「ん?初めに言わなかったか?君の呪いを解くって」


「そんなこと……あっ」



そういえば呪いがどうとか言ってた…。


でも、今まで人と会うことが出来なかったわたしに誰が呪いをかけるのだろう?


まさか…。



「だろ?ちゃんと言ってたろ?」


「……じゃあ、誰がかけたんですか?」


「ん〜、1つは君の親族かな?」




やっぱり、お母さんだったんだ…。



訳が分からず黙っていると、気にかけてくれたのか優しい声で説明してくれた。



「きっと、君を守るためじゃないかな?」


「守る…ため?」


「この辺は魔素が多いみたいだな。しかも、魔因子マリスの方が濃い。それが原因で魔物や魔獣の動きが活発なんだ。」


「良かった……。お母さんはわたしのこと嫌いだった訳じゃないんだ。」


「とても愛されてたんだろう」



わたしを守るための呪いだったんだ。

疑ってごめんなさい、お母さん。



「それで……もう1つはなんですか?」


「あ〜、2つ目のやつは今は解呪出来ない。古すぎて誰がやったのかも分からないんだ」


「……どういう呪いなんですか?」


「残火の呪い…だと思う。これはすぐ君に被害が及ぶものじゃないんだけど、どっかに火傷の痕みたいなものはない?」



この家には魔術や魔導、それに関係した本が何万冊もあるが、そんな名前の呪いは読んだことがない。


わたしには生まれつき背中に火傷の痕がある、それが呪われている証拠になるのだろうか。


「背中にあります。でもこれは生まれつきで…」


「この呪いは血筋を殺す為の呪いなんだ。親から子へと遺伝子のように受け継いで行く。」



血筋を殺す?


つまり、わたしのお母さんは誰かに殺されたってこと?


なんでそんな…。


どこの誰に呪われたのかも分からないまま、理由を知ることも出来ないで、わたしも殺されなければいけないの?



理不尽な呪いに対する怒りなのか、恐怖なのかは分からないけどドロドロとした感情が湧き上がってくる。



ふと、背中の痕が熱くなったような気がした。



「でも、今はって事はいつか解けるんですか…?」


先程、コーラルが言ったことが気になり、ワラにもすがる思いで聞いてみた。



「方法としてはいくつかあるが…手っ取り早いのは、俺を完全に復活させるか、呪った奴を殺す、かな」



わたしが生きる為に呪った人を殺す?


そもそも、いつかけられたのかも分からない呪いなのにまだ、その人は生きているの?


たとえ、そうだとしても誰かを殺すなんて…。



「……わたしには、出来ない」


「そうかもね。だからそっちはオススメしない」


「あの!完全に復活ってどういうことですか?術式に何か間違いがあったんですか?」



魔導書に書かれていたことはちゃんと実行した。


それなのに完全じゃないというのはどういうことなのだろう?



「術式じゃなくて素材だな」


「そんな!集められる物は全部集めたし、上手く行ったからコーラルはここに居るんじゃないの?」



「そのはずなんだけど…ちょっと待って」



そう言うとコーラルは目をつぶりながら自分の左胸に手を当て魔力を介して何かを探っているようだった。



ほんの数秒ほどそのままでいたけど、また膝から崩れ落ちた。



「コーラル!だ、大丈夫ですか?!」



わたしの呼び掛けに項垂れながらボソッ呟き反応した。


「ナンジャ、コリャ…。」



フラフラと立ち上がり生気を感じられない表情で、わたしを見た。



「……代用品ばっかりでまともなのは核の代わりになってる魔導書だけじゃないか。本当に読んだのか?」



「ちゃんと読みましたよ!土はそこのプランターの土を使って、骨は前に食べた鶏肉のもので、炭素はお母さんのネックレスのダイヤモンドを…。」



「つまり! 俺の! 身体は! 残飯と宝石で出来ている!

どうりで弱いと思ったわ! ! 」



「外に出られないんだもん!それしかなかったの!」



本当にこの人と話していると調子が狂う。


「うっ、と、とりあえず1つ目の呪い…繫囚けいしゅうの呪いを断ち切ろう」



「繫囚の呪い?それがわたしにお母さんがかけた呪いの名前なの?」



「そうだよ。本来は囚人を繋ぎ止めとく呪いだけど今回は君を守る為に使ってる」



「それを解呪すれば外に出られるの?」



「……でも、いいのか?この呪いはかけた人よりも強くなれば勝手に解ける。」



お母さんよりも強く…。


そんなのいつになるか分からない。



「うん、目の前に希望があるのに、それを掴まないなんてわたしには出来ない」



「そうじゃない。お母さんの最後の想いを、他人の俺が断ち切ってもいいのか?って聞いてるんだ。」



「最後の……想い?」



「こんなものに頼らないでずっと傍に居たかった…。ずっと見守っていたかった…。君が大きくなるのを、それを俺が切ってもいいのか?」



呪いから読み取ったであろうお母さんの想いを話してくれる。


先程までの柔らかな眼差しはそこにはなく。その目は鋭く、突き刺すようにわたしを見ている。



その眼差しに、気圧されそうになるが負けじとその目に視線を合わせる。



「外は確かに危険なのかもしれない…。ここに居た方が安全だと思う…」



「そうだな。今のままじゃあ、外に出ても犬死するだけだろうな。俺も守りきれるか、わからない。それなら…」



「それでも!わたしは外に行きたい!」



「覚悟もなく、戦う術も知らないのにか?世界はそんなに甘くない、誰かが助けてくれるなんてこともない。何があっても自己責任で生きるしかないんだ」



「じゃあ、わたしに戦い方を教えてよ!覚悟は…すぐには出来ないかもしれない。それでも、絶対に出来るようになるから!

……ダメ、かな?」



コーラルの目をじっと見つめる。


多分、涙目になっている。自分でも分かるほど目が熱くなっていたから。



でも、これがわたしの今の気持ちだから、誤魔化したり諦めたくなかった。



さっきまで鋭い刃物の様だったコーラルの眼差しが揺らぎ、悩むように俯き、目元を手で覆った。


短いため息を漏らし、小さな声で呟く。



「…また…この目に…負ける…のか…」



何を言ったのか、断片的にしか聞き取ることが出来ず、コーラルの答えを聞くため再度確認する。



「…ダメ?」


少しの沈黙の後ようやく口を開いてくれた。



「わかった…。試すようなことして悪かった。」



「やったぁあ!」


嬉しさのあまりピョンピョンと何度も飛び跳ね、すぐに見られるであろう初めての世界に想像を膨らます。



「もうやるのか?」


「お願いします!」



わたしの答えを聞くと、コーラルは左手を広げ横に伸ばしを開いた。


こちらに向けた掌に光の粒の様なものが見えた。



それを掴むといつの間にかその手には剣?が握られている。



「今からこの剣で君を斬る。傷つくことも死ぬこともないから安心していいよ。」



いつの間にか握っていた物は剣と呼ぶには遠くて、むしろオブジェの類みたいだった。



全体の大きさは両手剣くらいなのだけど刀身は透き通っていてまるで青いガラス細工のよう。



鍔から刀身にかけて装飾がかかっていてとても綺麗なものだった。



「な、に……それ…?」


見た目はただの綺麗な宝剣だが、魔力の保有量が桁違いなのだ。



「特に名前は無いんだけど、今は『解呪の剣』とでも言っておくか」



「明らかに斬れ味良さそうなんだけど…。」



「大丈夫、この剣は物体を斬れないし、触れないよ。試してみな」



そう言うと、刃のない平らな部分をわたしに見せ触るように差し出してくる。


恐る恐る手を伸ばし刀身に触れた、はずだったのだがわたしの手は見事にすり抜けている。


目の前には確かに存在しているが何度試しても触れる事が出来ない。



「なんだろうこの感じ…。触れないのにほのかに暖かい。刀身は何で出来てるの?」



「材料は魔素と因子だな。世界中の聖域を回って少しずつ集めて作った」



つまり、可視化できる程に濃くなった魔素の刃。


形を保っている原理はよく分からないけど、確かにこれなら呪いも斬れるかもしれない。



「準備が出来たら……っと、もういいのか?」


わたしはコーラルの真正面に立ち位置を変え、強く見つめる。


「うん」


「1振りで断ち切るからすぐ終わる。…行くぞ」



解呪の剣を振り上げるのを見届けると目を瞑り全身の力を限りなく抜く。


それを確認したかのように左肩から右足の付け根まで剣を振り抜いたのだろう。


じわりと、通過したと思われる箇所が熱くなる。


…どこかで細かい鉄が弾けるような音がした気がした。



「終わったぞ」


その声に気が抜けたのか糸の切れた人形のように座り込んでしまう。


「…これでお母さんともホントにお別れなんだね。」


「どうかな?」


「…え?」


「確かに魂は輪廻の輪に行く。でも、転生するまで結構な時間が要るんだ。その間だけでも大切な人を見守ったり、思ったりする事は出来るんじゃないかな?」


「そっか…。そうかもね。…ありがとう」



慰めてくれているのか、知っているからなのか、どっちかは分からないけど、その言葉を今は信じたい。


そんな素敵な話をしてくれた当の本人はキョロキョロと辺りを見渡している。



「どうしたの、コーラル?」


「そういや、この家の出口ってどこ?」

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