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20話

 やっと辿り着いた先が正しいものかは分からないが、私の気持ちはここでいいんだと言っていた。

「どうした、その顔は」

 耳元から戻って正面に居直れば、彼は顔を赤くして今にも泣きそうだった。

「い、いえ、その、あまりにも急で……」

「私は君と一緒になりたくて、これをつけてきたんだが」

「えぇ、その、」

「迷惑か?」

「いいえ! そんなこと!」

「嬉しい?」

「は、はい、嬉しい、です……」

「よかった」

 さすがに凱旋直後だ、休息が必要だろうと思い、後でと添えて去ろうとすると、彼に手を取られた。

 咄嗟の行動だったのか我に返ったルーカスは、気まずそうに目線を彷徨わせた後、もう少しだけと小さく言ってきた。

 彼のように素直に分かりやすく感情を表現出来るのは羨ましい限りだ。


「お、アリーナ」

「ミラン、やっと自由になれたか」

 囲まれてたミランと束の間再会する。

 すぐに彼は本部会議があるだろう。長としての務めはまだ山積みだ。そこの大変さはよくわかる。

「少尉もご苦労だったな」

「いいえ、全て大佐殿のおかげです」

「にしても、君達」

「どうした?」

 この笑い顔の時は碌な事がないが念の為聞き返してみる。

「どうにかなったか? うまくいったのか?」

「大佐殿、こんな時に」

「どういう意味だ?」

 何故聞くのかという顔を隣から送られる。

 うまくいくとは、具体的にどういうことなのか。碌な事がない顔だから求める回答としては多少ふざけて返した方がいいのかもしれないが、ただ純粋に気になった。

 今回の遠征とは関係ないことだけわかる。さて真面目に答えるべきか、無視するべきか。ふざけた言葉はあまりうまく返せないから、その時はルーカスに頼むとしよう。

 ミランは機嫌よくさらに笑みを深くする。

「アリーナとルーカスは結ばれました、めでたしめでたしなのかってことだよ」

「大佐!」

「あぁ、そういうことか」

 物語における幸せな結末、それが今回当て嵌まるかは分からないが、そういう面での結果は出ている。

「そうだね、婚約した」

「え⁈」

 何故かルーカスに驚かれる。

「これを身につけるという事は、そういう事だと理解していたが、違うのか?」

「え、あ、いえ、確かに私はそういう意味でそれを持って来てはいましたが、」

「君は望んでないのか?」

「いいえ!」

 途端吹き出すミラン。やはりこちらは面白がってるだけか。いいじゃないかと言いながら尚も笑う。

「めでたいじゃないか!」

「有難う」

 今日はミランが酒なしに大笑いが続く日になるな。実に楽しそうだ。


「……にしても、一か八かだったが、うまくいって何よりだ」

「え?」

「どういうことだ?」

「君のことさ」

 本来なら私のことは伍長の願い通り死んだ事にして誰も知らないところで静かに暮らしてもらおうと考えていたらしい。

 けれど、それで解決するのか。私が本来の私らしさを手に入れる事が最善なのではという考えに至ったミランは敢えて生きているという情報を流した。

 結果、ルーカスは私の元に来て、私はそこで苦しい気持ちと向き合い、それを超えて取り戻した。

 なるほど、なかなか賭けに出たな。

「友人思いだろ?」

「そうだな、感謝するよ」

「おー、素直になったな」

「感謝は伝える主義だが」

「そうだな、それとはまた違うんだが」

 何かは私にはまだ分からない。これから知る事に、思い出していく事になるのだろうか。

 私が蓋を開けて取り出して受け入れたものの正体を。


 この間で私の中で行き着いた答えは、それを愛だと考えていることだ。

 遮断すれば平坦で当たり障りのない日々を送れる。身の内に宿せば、苦しい時もあれど喜びもあるだろう。

 私はそれに寄り添い生きる。


 色んな事が私を迎えるだろう。

 ただ、それもルーカスがいるというだけで、受け入れていけると思えた。

 私はやっとスタート地点に立てた。

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