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18話

 二週間。

 通常の遠征で言うなら折り返し地点だ。

 最も交戦状態に入ったからには長引くだろう。情報が遅れて入ってきてるので、判断にはまだ早い。

 交戦事態は予想の範疇、こちら側は攻撃をしていない為、相手側の損害は無しだ。こちら側はそろそろ情報が来る頃だな。

「浮かない顔だな、少佐」

「そうかな?」

 ノアが定期巡回で来てくれるので助かっている。情報提供の面でも、そして気晴らしという面でも。

「ミランのことは信頼しているし、講じてる策も素晴らしいと思う。解決もするだろう」

「おう」

「しかしどうしてだろうな……妙に落ち着かない」

 こんなことは現役時代もなかったから、正直驚いている。

 やはり軍を離れるということは、速さは違えど心身共に変わっていってしまうということなのか。鍛練らしい鍛練もしていないから尚のこと。

「ま、今の身体の状態から言えるのは、少佐のそれは毒のせいじゃねえってことさ」

「ふむ」

 家の機器を確認する。ここ最近は何もない。

 予想と外れ奴らが仕掛けて来るわけでもなく、街も通常通り、外からの情報もきていないし帰還者もいない。

 そんな平坦な毎日の中、変化を告げる音がなった。画面を確認する。

 医療器具をしまいながらノアがこちらを見やった。

「なんか変わったことがでてきたのか?」

「あぁ……なぁノア」

「なんだ?」

「今から本部へ戻るなら、私も行っていいかな?」

「え?」

 帰還者を告げる情報だった。カハッツ少尉小隊の第二班、かつての私の直轄部隊。

「大丈夫だと思うんだが、あまり大きく動かんでくれよ?」

「あぁ、もちろん」

 しかし護身用にいくらか身につける。

 私が奴らに報復しに行くわけではないが、あちらは好機と見て殺害目的に近づいてくる可能性がある。用心はしておこう。

 共に丘を下り、高い塀に囲まれた軍本部へ入る。緊急事態でもない限り、軍所属の者が同伴してれば、塀の内側には入れる。最もその先にあるさらなる塀を超える事は難しいが。

 私はここでもかまわなかった、十分だ。

「俺らのが早かったか」

「その方が助かるよ」

 門番は私を知っていたらしく、驚いていたが特段何も言ってこなかった。周りの視線も多少あるが、気になるほどではない。

「ミュラー少佐⁈」

「あぁ久しぶりだね」

 ミラン直轄部隊で情報管理を主とする小隊少尉、やはりここに残っていたか。

「少佐、お話は兼がね大佐から拝聴しておりましたが……息災で」

「この通りさ。あぁ私はもう少佐ではないぞ」

「あ、そうでしたね。失礼しました」

 積もる話もあったが、最優先が重厚な扉を開けて入ってきた。見慣れた顔ぶれに、何とも言えない気持ちになる。

 数ヶ月会わなかっただけで、こんなにも懐かしく感じるとは。

「え、あ、少佐殿?」

「君達無事で何よりだ」

 負傷しているものの、軽傷のようだ。第二班の長は挨拶もそこそこに報告に奥へ入っていく。

 待機してる医療班に呼ばれ、軽傷者は別場所へ、負傷してない者が私の元へやってきた。そこまで疲弊してないことに安心する。

「少佐殿……ご無事で」

「それはこちらの台詞だ。頑張ったな」

「いえ、私達は早々に退きましたので」

聞けば情報通り交戦になったが、大佐の策が成功するまで持ちこたえる内容、策が成功する前に戻ってきた為、それ以降の状況は不明だった。


「私達はアンケ少尉と合流し連携小隊として動いておりました」

「そうか、アンケ少尉は?」

「ご無事です。あの、」

「なんだ?」

「アンケ少尉は、少佐殿に会いたがっておられました」

「……はは、そうか」

 彼はまた正直で、素直に言ってしまうのは個性か。

 戦場でそんな話をしているとは。ミランあたりが各小隊に様子を見に行ったかな。

 私がやっているのを面白そうだと言ってミランもやり始めたことだ。馴染みにルーカスがいれば恰好の酒の肴だろう。

 それにしても。

 彼が私の事を考えてくれてたとは、何故だか妙にこそばゆい。どうやら私は嬉しいようだ。

「私に、会いたいと」

「はい、とても」

 会いたがっていたと。

「ありがとう、少尉が無事と分かっただけでも嬉しい」

「あ、アンケ少尉はカハッツ少尉と連携し、地雷も外し、相手側に損害を出さず、時間をかけるという任務を遂行しておられます。非常に冷静で的確な判断をされていて、」

 少尉は戦場でも才能をいかんなく発揮してるようだ。

 しかしその戦場での内容はあまりしっかり入ってこなかった。

 おかしい、現役であった頃なら、どんな事が起きていようとも戦況だけはきちんと把握し頭に入ってきてたのに。

 彼が生きている。会いたいと言ってくれている。

 それだけが頭の中に響いて、言い様のない高揚感と同時に不安が襲ってくる。

 不思議な感情だ。ルーカスと出会ってからというもの、こういった感覚が多く訪れる。かつて蓋をしてきた私らしい思いが、これだというのか。

「やはりそうか」

「え?」

「なんでもない。君も休め」


 そうして別れ、ノアが声をかけて来る。

「少佐」

「ノア」

 頼みたいことがある、と伝えると分かっていたとばかりに微笑む。

「ルーカスを迎えたい。ここにまた入れてほしい」

「もちろんだ」

 さて、君が帰ってきたらどうしようか。

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