ネコミミに可愛い以外の意味を求めてはいけない
「ねぇ、お姉さん、キスしたことある?」
「ないわよ」
突然に何を言うかこのガキは。
見た目小学生の安っぽいネコミミをつけたガキは、にこにこ笑いながらアイスを食べている。
「あんたは?」
「あるよ」
「…あ、そ」
「妬いた?」
「バカ死ね」
「酷い」
「つか名前も知らないのに妬くわけないじゃん」
「僕はミーコちゃん。お姉さんは?」
「おねえ。だからお姉さんと呼べ」
「ちょっ、あんまりにあんまりな偽名だね」
「うるさい。猫のくせに逆らうの?」
「にゃー」
「がるるる」
「ふかー」
「ガブリ、むしゃむしゃ」
「食べられた!?」
私はけっとわざとらしくやさぐれてアイスのコーンを口につめこんだ。
バリバリとうるさいくらいだが、どうせガキの話を聞く気はない。
「―、お姉さーん?」
「ん? まだいたの?」
「いるよ。お姉さんさ、アイスおごってもらっといてその態度はどうよ?」
「うっさい」
「へー、何ならもう一つおごってあげてもいいですけど?」
「たこ焼き食べたい」
「……」
「早く」
「…お姉さん、年下のおごりに対してその態度は…」
「3秒で買ってきたらキスしてあげるわ」
「行ってきます!」
ガキは走ったが、買うだけでも3秒以上かかるのは当然だ。1分近くかかってガキは戻ってきた。
「どうぞ!」
「おつー。あふっ、熱っ。冷まして」
「ふーふー。はいどうぞ」
「ん、はふはふ…ん。あんがと」
「あの…」
「ん?」
「キスは?」
「は? あんた、3秒で帰ってきたっけ?」
「…ないです」
「あんたも食べる?」
「はい。あーーん」
「ほい」
「あちちちちっ! でも食べる!」
「おい。口、大丈夫? 口内ってかなり簡単に火傷するよね」
「そうなんだよね。痛いよ〜。お姉さんのツバでなおして?」
「は? つか、あれってガセでしょ? 何万の菌がいる人の唾液ぬってなおるわけないじゃん。メリットはせいぜい乾かないくらいでしょ」
「むー、わかんないですよ。空気中の菌に触れないから治りやすいのかも!」
「口の中だから問題ないわね」
「しまったー!」
「うぜー。死ね」
「生きる!」
「マジうぜ。ちょっと、缶コーヒーちょうだい」
「じゃあ今度こそキスを」
「やだよ」
「えー?」
「ちっ」
私はネコミミを引っ張ってガキのほっぺたに唇をぶつける。
「早く行けよ」
「イエス!マム!」
買ってきたコーヒーを飲―
「私はカフェオレしか飲まないんだよ! チェンジ!」
「イエス! パパ!」
今度こそコーヒーを飲む。
「ところでカフェオレとコーヒーは別物では…?」
「うるさい黙れ」
「甘党なお姉さん萌え〜」
「死ね」
「生きる!」
今度は唇に唇をぶつけてやる。
「いいから黙れ」
「…………」
「財布」
「……(ぽん)」
「よしよし。どれ…げ、なにこれ。万札何枚あんのよ。これだから最近のガキは…!」
「……」
「おい、あんた」
「は、はい!」
「名前は?」
「ミーコちゃんです! やさぐれお姉さんらぶ! 結婚して!」
「やだ。毎日金くれんなら愛人にしてあげてもいいけど」
「僕が愛人なの?」
「は? 下僕だけど?」
「ちょっ、愛はどこに?」
「ないけどキスしてやろうか?」
「お願いします!」
「よく見なさい。唇からつながって、首は唇と同じ皮膚よ。んでつながってつながって〜、はい、大地にキスしなさい」
「…まずいです」
「マジでしやがった。土下座にしか見えねー」
「これが孔明の罠か!?」
「や、あんたのイロボケ」
「ところでお姉さん」
「何よ」
「何でここにいるのかな?」
「待ち人。こねーけど。来たら私を待たせた罰で殺す」
「誰を待ってんの?」
「さぁ。親父の再婚相手の連れ子のお迎え。母親は夜に会うけど子供は先に家に来てもらうんだ。女子高生だってさ」
「あ、やっぱり」
「あ?」
「それ僕だよ。いやー、写真通り可愛いなぁ。一目惚れだし」
「はぁ?」
「大丈夫。連れ子同士は結婚できるんだ」
「……年上?」
「うん。僕のことはミーコちゃんって呼んでね」
「……女子高生?」
「うん」
「…マジかよ。まぁ女の子だとは思ったが僕って言ってるしなぁとか思ったが……つか、さっさと言えよ! 1時間も無駄にしたわ!」
「やー。写真で顔は知ってたけど、お姉さん何も言わないからもしかして人違いかなーなんて」
「つか何でネコミミ!?」
「あ、趣味」
「…………はぁ。まぁいいや。帰るよ」
「お姉さんお姉さん、名前はサキだよね? サキちゃんでいい?」
「ふざけんなガキ」
「えー、だって僕がお姉さんだしぃ」
「うぜぇ」
「まぁでも、僕のことはミーコちゃんでよろしく。恋人になってお姉さんじゃ変だしね」
「誰が恋人だ」
「サキちゃん」
「あんたはペットだろ」
「キスしてくれないの?」
「…あんたが下僕になるならいいわよ」
「いいよ! サキちゃん好き好き!」
「はぁ…どこが年上なのよ」
「全て!」
「………とにかく、帰るよミーコ」
「うん! ご主人様大好き!」
「その呼び方はやめろクソガキ!!!」
「てゆーか…私女子中学生なんだけど? 結婚とか無理だし」
「気合いだー?」
「疑問かよ、レズビアン死ね」
「ちょっ、同性愛差別禁止!」
「大丈夫。あんた以外には言わないから」
「え? 僕だけ特別? いやん、ドキがむねむね〜」
「死ね」
「生き―
「それはもういいから」…はい」
「いい? 同性と未成年は結婚できないの」
「大丈夫だよサキちゃん。あと3年でサキちゃんは16だから。そしたら同性愛に理解ある海外に引っ越そうね」
「合法的に婚姻させようとするな」
「そんな! 僕とキスしたくせに!」
「遊びだし」
「…そんなはっきりと…」
「は? あんた本気なの?」
「一目惚れです」
「…ひくわぁ」
「ええ!?」
「てゆーか、あんた見た目がガキじゃなくて男だったら犯罪よ」
「いや! 僕も未成年だし! インコウにはならないはず…」
「ネコミミがよ」
「そっち!?」
「当たり前でしょ。いい年して何でネコミミよ」
「可愛いでしょ? あ、サキちゃんもつけたいの?」
「いらん! 外すな! 渡すな! 背伸びするな!」
「届かないからしゃがんで?」
「しないって!」
「似合うと思うんだけどなぁ…」
「頭痛い子に見えるから」
「え…あた、舞い太古?」
「無理矢理聞き間違えるな。何よ舞い太古って」
「いやぁ、だって僕、学校で成績オール5だし」
「…死ね!」
「だから、オール1のサキちゃんに教えてあげるね!」
「ぶっ殺すぞ!? 誰がオール1よ! 1なんてないわよ!」
「またまたぁ」
「死ねよ!」
「ところでサキちゃん、家はまだ?」
「そこの角だけど…悪いこと言わないから、隣の空き家に住まない? 段ボール箱はあげるから」
「何でホームレスにしようとするのさ!?」
「大丈夫、ちゃんと拾ってくださいって書いておくわ」
「しかもペット扱い!?」
「当たり前じゃない」
「いやいや。サキちゃんと一つ屋根の下だよ嬉しー!」
「よし、ちょっと家出するわ!」
「何でだよ! 大丈夫! 痛いのは始めだけだから!」
「何する気だ!? ちょっ、半径1メートル以内に近寄るな変態!」
「冗談だって」
「…変態が言うからシャレにならないのよ」
「いっぱいぬらせば、痛くないんだよ」
「……(ピ、ポ、パ)、あ、もしもし警察ですか?」
「ストーーップ! 何普通に警察に通報してんの!?」
「はい、変質者です」
「やめてー!!」
「…冗談よ」
「ほっ」
「今のは知り合いの精神科医に電話してたの」
「ちょっとちょっと! 姉に対して敬意が足りないよー?」
「あんたは身長が足りないじゃない」
「可愛いからいいの」
「はぁ?」
「可愛いは正義! きゃぴる〜ん!」
「…もしもし、救急車お願いします」
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
「…あんた、本当に私の姉になる人間? 山田みいこ?」
「うん。これからは佐々木みいこだけどね」
「くそ…合ってる」
「…そんなに本気で悔しそうにしないでよ」
「無理」
「即答だ。でも泣かない! お姉ちゃんだもん!」
「死ね! ……ここが家よ」
「僕らの愛の巣だね」
「親父とあんたの母親の巣だよ」
鍵をあけて中に入る。親父は勿論仕事中だ。
「ミーコ」
「なになに?」
「あんたの部屋は一階だから二階には入らないでよ」
「二階に僕とサキちゃんの愛の部屋があるんだね」
「二階には私の部屋と物置だけだ。一番奥。荷物はあるから行け」
部屋に戻って制服からジャージに着替える。
「おじゃましまー、って鍵がかかってる!?」
どんどんとうるさいから着替え終わってから開けてやる。
「なに?」
「もう着替えちゃったの? せっかくネコミミ持ってきたのに」
「服と関係ないし、つけないから」
「似合うのに」
「つけたことないのに断定するな」
「大丈夫。アイコラ写真で試したから! 見て! 全裸バージョンもあるよ!」
「犯罪者が! つかこの写真、乳でかすぎ!」
「ごめんね。別にサキちゃんみたいな貧乳が駄目なわけじゃないんだよ」
「貧乳言うな!」
「だよね! サキちゃんは品乳だよね!」
「フォローになってねぇよ!」
「大丈夫。今日からは本物のサキちゃんをオカズにするから」
「生々しいわ!」
「中学生でキスもまだなサキちゃん萌え!」
「てめぇとしたけどな」
「手取り足とり股とり愛してあげる!」
「いらねぇよ! そして股言うな!」
「まん○!」
「よりヒワイにするな!」
「ヒワイって言うサキちゃん萌え!」
「ちびのくせにヒワイなことを言うな!」
「サキちゃんが大きいんだよ」
「背の順はちょうど真ん中だ」
「僕は一番前だよ!」
「当然だな」
「サキちゃんのサディスト! でもそこが好き!」
「死ね!」
「…サキちゃん、わかってるの?」
「…何だよ」
「今、僕らは二人きりなんだよ?」
「で?」
「…ふふ、声をだしても誰にも聞こえないよ」
「よし、遺言の用意はいいか?」
「ちょっ、どっから木刀だしたの!?」
「私は剣道初段だ。そして強盗対策にベッド下にいれるのは常識だ」
「サキちゃんは何人だよ!」
「日本人だ。いいから死ね」
「ふふ、僕だって……水泳10級だ!」
「しょぼすぎる!」
「そんなバカな!」
「…何で自信満々なんだよ」
「だって…幼稚園の先生は凄いねって」
「何年前だよ」
「んー去年かな」
「嘘をつけ高校生」
「本当だもん! 去年ビデオ見たもん!」
「ビデオの音声かよ!」
「当たり前じゃん。僕16だもん」
「いいから、もう出ていけ」
「やだ。愛を語ろうよ」
「は? 死ねよ」
はぁ…これからこいつが毎日いるかと思うと頭痛がする。
「ねぇサキちゃん」
「何だよ」
「大好き。キスしてもいい?」
「…一万円くれたらな」
「財布ごとあげたじゃん」
「払えないならなし」
「サキちゃんの外道! 鬼蓄! ヒトデナシ! 愛してる!」
「うるさい!」
私は噛みつくようにミーコの唇にキスをした。
「いいから黙ってろ」
「……(こくり)」
ミーコは財布を出した時のように真っ赤になって静かになった。
やれやれ…バカの相手は疲れるわ。
ま、静かにしてれば、可愛いんだけどな。
それこそ、ちんけなナンパにのって初対面でキスをしてしまうくらいには、な。
「とりあえず…これからよろしくな、ミーコ」
「……(こくこく)」
END
ノリで書いた。こういう意味なんてないようなバカな会話が好きです。
ストーリーは後から付けたので分かりづらいかもですが、中学生が義理の姉を迎えに行ってネコミミにナンパされながら待ってると結局ネコミミが姉だったと言うオチです。
しかし姉…ネコミミ僕ロリ少女とか詰めすぎか?
題名はまぁそのままです。ネコミミをつけてるのは可愛いからで、他に意味はありません。