景気のせいで夕飯抜き?~文字表現の限界と可能性
【琴乃】「ここへ来る途中電車の中で『景気のせいで夕飯抜きだった~』って若い女性の声が聞こえてきたんですよ。ワーキングプアってやつかな、大変だな~と思っていたら、続いて流れてきた会話が『夏までに3キロ痩せなきゃ』、『ダイエット、ダイエット!』って……『景気』じゃなくて『ケーキ』だったという」
【角谷】「別な意味で大変だな~と(笑)」
【琴乃】「それでですね、『話し言葉』を『書き言葉』に変換する難しさってありませんか?
母方の実家が名古屋なんですけど、いとこ達と話していても、いわゆる名古屋弁はあまり出ないんですが、時々イントネーションが違うんですよね。『くつ』が『くつ』だったり『ズボン』が『ズボン』になったりとか……文字に起こすと何言ってるんだかわからないと思いますが」
【角谷】「『飴』と『雨』のアクセントの違いみたいな感じだね」
【琴乃】「そうですね。ちなみによく言われる『みゃー』も実際には『め』に小さい『ゃ』と『ぁ』の方がより発音に近いかと。『お前さん』とか」
【角谷】「『ギョエテとは 俺のことかと ゲーテ言い』だっけ。横文字のカナ表記と同じで発音に拘るか、原文表記に基づくかだけど……まあ、方言自体モノによっては外国語より異言語だから(笑)」
【琴乃】「五十音で表現できないもどかしさというか、濁点付きの『あいうえお』なんかもう標準化されていいんじゃないかと」
【角谷】「平安時代から始まる変体仮名が整理されて現在の五十音の仮名表記になったのは明治の後半で、現代仮名遣いに至っては戦後からでしょ。時期はともかく可能性はあるんじゃないかなぁ。片仮名の『ヴ』は既にあるし」
【琴乃】「鼻濁音の『がぎぐげご』の半濁音表記(※『か゜き゜く゜け゜こ゜』)はビミョーですけどね」
【角谷】「元々日本語に半濁音はなかったらしいから。朝鮮半島とアイヌ語由来とか」
【琴乃】「また何気に雑学ブッ込んで来てますね」
【角谷】「たしかに日本語って実際の音を表記するのは苦手かも知れないけど、存在しない音を表現するオノマトペは多彩だよね。その分、さっきみたいな勘違い(※『いそいそ』等)も出てくるけど。
『しんしんと雪が降る』とか。『しんしん』なんて音、聞いたこと無いけどなんとなく場面は想像できる。
逆に『ワイワイ』『ガヤガヤ』なんて意味不明な言葉を大勢で話すことはあり得ないし、『クスクス』なんて実際に笑うの……ひとりしか聞いたことないし?」
【琴乃】「なにゆえ最後疑問系? てか、いるんですか、そんなひと?」
【角谷】「某アフレコ現場でゲスト出演した台詞棒読みのアイドルが、ト書きそのまま読んでやらかした。音響(監督)してた鳥越さんに『寛ちゃん、俺、人が『クスクス』って笑うの初めて聞いた』って愚痴られたし」
【琴乃】「それはまたちがう話のような気が……。
まあそれはそれとして、突然ですがセミってなんて鳴きますか?」
【角谷】「え?『ミンミン』かな。描き文字とかだと『ミーンミーン』?」
【琴乃】「それって、ミンミンゼミの鳴き声で、擬音語ですよね。実はミンミンゼミって関東以北にしかいないらしくて、他所の地域では扱いとしては『クスクス』と同じ擬態語になるんですよ」
【角谷】「え、そうなの?」
【琴乃】「詳しい境界は知りませんが、少なくとも名古屋以西では『クマゼミ』とか『アブラゼミ』ばかりで朝から『ジュワジュワ』『ジージー』うるさいらしくて、先のいとこが夏休みに初めて東京にきた時に『本当にセミがミンミン鳴いとる!』とショックを受けてました」
【角谷】「おお、デカルチャー」
【琴乃】「でも最近は温暖化の影響か関東でもクマゼミが多くなってきてるらしくて、『朝早くからセミがミンミン鳴いてます』とリポートしているお天気お姉さんのバックで聞こえるのは『ジュワジュワ』という鳴き声のみという状況もあったりするので、普通に擬態語となっていくのかもしれませんが」
【角谷】「ヤック デカルチャー(笑)」
2019.09.20 追記
旅番組で奥三河(愛知県東部の県境に近い山間部の地域。動物のような形をした愛知県のピョコンと突き出たお尻の辺り。ちなみに名古屋市は愛知県西部で喉の辺り)の散策のバックにやけに低音なミンミンゼミの鳴き声が流れていました。生息境界がその辺りなのか単なるSEだったのか?