日本語奉行《グラマティック・マイスター》 VS 最後の言霊使い《ファイナル・ワードマスター》
【琴乃】「あと結構見掛けるのが『オレンジペコの香り』?」
【角谷】「あ~」
【琴乃】「何かありましたか?」
【角谷】「いや、昔どこかでペコ、オレンジペコ、オレンジの順に茶葉が大きくなって等級も下がるって見た覚えがあったんだけど、後日別件で調べていた(記事)の(内容)とは若干違っててさぁ。オレンジペコが等級を示すのは間違ってないし、専門的な話を書くつもりもなかったんで、詳細不明のままなんだけど……。まあ、紅茶に詳しい人なら分かるだろうし、興味がある方は調べて、僕に教えて下さい」
【琴乃】「わ~、丸投げ~」
【角谷】「ただ、その時思ったのが、知らない事を調べる時は複数ヶ所当たるべきってのと、中途半端な蘊蓄垂れ流さなくて良かったな~って(笑)」
【琴乃】「折角の教訓が後半で台無しですよ。よく考えたら前半も回答丸投げか……」
【角谷】「……そろそろ次の『お題』に行きません?」
【琴乃】「あー、はいはい」
ガサゴソ……
【琴乃】「ジャン!『これだけは相手に聞きたいこと』~」
【角谷】「スリーサ……」
【琴乃】「ノーコメントで!」
【角谷】「……ズは置いといて。『オーバーワーク』のシリーズって実際どのくらいまで実話なの?」
【琴乃】「『オーバーワーク』は自身の体験や周囲で見聞きした事を切貼、フレームアップして書いているので、素材はほぼ実話ですね。『転職』と『ゼロ円』は読者さんの体験談等も参考にか~な~り盛ってます(笑)」
【角谷】「じゃあ、『てにをは』の使い方でコピーライターと喧嘩する下りは?」
【琴乃】「喧嘩して上司が出てくるまでが最初の勤務先で、バワハラで首になったのはまた別の会社ですね」
【角谷】「やっぱり~。あの辺読んでて、これ絶対琴乃さんだよな~って(笑)」
【琴乃】「その辺のお喋りと違って、メディアの力って大きいから、おかしな表現でもそれが当たり前になってしまうのが怖いんですよ。昔あった(キャッチ)コピーだと『喋れる、食べれる』とか『いつもここに帰って来れればいい』とか。前者は韻を踏むためわざとだとしても、それに気付かない消費者には『ら抜き言葉』を助長しているのと変わりないでしょう? まあ、お陰様でというか、あんな調子で自著校正でああだこうだやってる内に担当さんから『『鍋奉行』ならぬ『日本語奉行』だね』と二つ名を頂いてしまったんですけど(笑)」
【角谷】「あれって担当さん発だったんだ」
【琴乃】「角谷さんは……」
【角谷】「うん、犯人(月山)Q兎さんね。原作渡したら『セリフ入りきらないんだけどカットできないし、どうしよ~』って泣き付かれたんで、自作の単語帳持参でとんでいって、言換えられそうな言葉探してやったら『流石は言霊使い! これからはファイナルワードマスターと呼ばせて頂きます!』とか言い出してさ。『何故ファイナル?』って聞いたら『だって格好いいでしょ?』だもん。厨二入ってるよね~。ソッコー却下したのに、次の週には知り合い中が認識していたという……」
【琴乃】「あ~、それはまた何と言いましょうか(笑)」
【琴乃】「それで先程言われてた『自作の単語帳』って?」
【角谷】「ああ、単語っていうか同音異義語をまとめているノートなんだけどね。文章書いてる中で気付かない内によく使ってる単語とか言い回しってあるでしょ。それはそれで個性になったりもするんだけど、ある時5ページ分の原稿中3ヶ所も同じ言い回しを発見して、さすがにちょっとマンネリかな~って。折角多彩な表現のある日本語使ってるんだからもうちょっと語彙増やそうと思って書き留め始めたんだ」
【琴乃】「ノートかぁ……私もはじめようかな」
【角谷】「何なら二つ名の頭に『スーパー』付けてQ兎さんに喧伝してもらおうか?」
【琴乃】「それは遠慮しておきます」
【琴乃】「言霊使いさんにお伺いしたいんですが、『みみざわりが良い』って言葉、どう思われます?」
【角谷】「耳に障りがあるのが良い訳ないんだからアウトだろうね。『触』という字を充てる場合は……一応大きな辞書には載ってるけど」
【琴乃】「でも、音とかって直接耳に触れるものじゃ無いですよね。『耳触りのよい枕』とかなら有りかも知れませんけど(笑)」
【角谷】「『舌触り』と『口当たり』の違いか……『耳当たり』が正解かな」
【琴乃】「う~ん、それでも直に当たるイメージが……」
【角谷】「じゃあ『耳心地』とか。ああ、最近『耳通り』って表現もあったな」
【琴乃】「あ~、『耳通り』いいな。今度使ってみます」
【角谷】「トラブルを避けるには始めから言換えた方が良いのか。『誤用』表記なしで『~良い』って載せてる辞書も出てるらしいし。そう言えばこの間『耳障りが悪い』って表現見かけたな~」
【琴乃】「『頭痛が痛い』ですね。いろんな意味で(笑)」