人のいない一日
年末にTwitterに載せたものです。
都合の良いお伽話に夢を見ていた。
で始まる
ほら、朝が来たよ。
で終わる物語
都合の良いお伽話に夢を見ていた。
見知らぬ土地の見知らぬ場所に、自分は立っている。服装も、自分が好んで着ない様な物だ。
どうやってここへ来たのか、なぜいるのかなにもわからない。近くになん軒か家はあるのに、周囲に人の気配がない静かな場所だ。
どこかに人はいないのか? 少し歩き回ったけど、誰にも会わない。
人だけじゃない。動物も見かけない。どこへ行ったとしても、カラスやスズメ、ハトくらいはいるものだろう。
通り沿いへ出てきたが、やはり誰もいないようだ。車が走っている気配もない。
しばらく歩いていると、一軒のコンビニを見つけた。駐車場にはなん台か車が停まっている。誰かいるのではと淡い期待を胸に抱き、コンビニへ足を進めた。
自動ドアは動いている。店内に入ると、見える範囲には誰もおらず、広くない店内を見て歩いたが、やはり誰もいなかった。
駐車場の車も一台ずつ確認したが、見える範囲には誰も居なかった。
ここも空振りか。
そう思う反面、誰も見つからないことに少し、心が安堵している。
不思議だ。田舎あろうが、都会であろうが、見知らぬ相手であろうとも、誰にも会わない日があるなんて。
それが、人里離れた場所ではなく、人がいて当たり前な住宅がある場所で。
何時間経ったのかわからない。道なりに進んで見たが、やはり誰にも会う事はなかった。途中、見つけた自販機で飲み物を買おうかと、ポケットを探ったら、スマホが出てきた。
人を探すのに必死で、手持ちの確認を忘れていた。
色々といじっていてわかった。電源は入っているが、圏外になっている。設定を何度見ても、それは変わらなかった。
つまり今、誰とも連絡できないし、現在地を知る事ができない。
誰にも会わないから忘れていた。自販機で飲み物を買うんだった。
財布は別のポケットに入ってたし、小銭も多少入ってた。飲み物は買えた。
今分かっていること、人、動物には会えないが、それ以外は変化ない。
それから、休憩を挟みながら、歩いたが、日が暮れて、店と街灯以外の電気がついてない。このままでは野宿するしかないのか?
できれば、どこかでゆっくり休みたいのだが……。
人が居そうな場所はどこへを探しても見当たらない。たまたま見つけた駅に入り、近くにあったペンチに座っていたら、そのまま眠ってしまった。
慌てて起きたら、なぜか自分のベッドで寝ていた。部屋中見渡しても、外を見ても、他の部屋を見ても、どこからどう見ても、自分の知っている場所だ。
スマホを見たら、圏外になっていない。
あれは夢だったのだろうか。
ぼっと、していたら、アラームが鳴り響き、慌てて止めた。
ほら、朝が来たよ。