歪んだ憎しみ
翔太の母親や父親の観点から作品を読んで頂ければ嬉しいです。
注意(暴力的な表現がある場合が御座います。苦手な方は前のページに戻ることを推奨致します。)
ばきっ.....
鈍い音がし、その数秒後に苦痛が訪れた。
(ああ、骨が折れたか.......?)
そこで意識は途切れた。
✕月〇日 AM.04:54
翔太は目を覚ました。
「体中が悲鳴をあげてる」
ぼそりと呟く。
翔太の父親は警察官。昼は街を守るヒーロー的存在、だが夜になり家に帰って来ると、途端に人が変わる。翔太のテストの点数が悪いと殴る蹴るなどの暴行、母親の言うことに口答えをすると顔に顔面パンチ、物を投げつけられ物で叩かれる。
普段の父親からは想像ができない。
だが、翔太が言うことを聞いたり利口な時だけは、凄く優しい温厚な父親に戻る。
豹変するのだ。
そんな父親が、翔太は怖かった。「怖い」と言うより、殴られるのに恐れを抱いていた。
そう、あの出来事から。
───5年前───
△月△日 PM.09:07
「だから私じゃない!!」
母親の声が聞こえた。翔太は目を覚まし、自室のドアをそっと開け、廊下に出た。廊下の突き当たりがリビングで、ほんの少しだけドアが開いていた。少しの隙間だった。翔太はその隙間からリビングの様子を伺う事にした。
その光景はあまりに残酷で悲惨なものだった。
父親が母親を殴り、母親の髪の毛の数本が床に落ち、顔は内出血していて赤黒かった。
「お前がやったなら誰がやったんだ!!あんな小さい翔太に出来るわけないだろう!!」
「だけど私はやってない!!」
どうやら口論の様だった。父親は警察官で体が鍛えられている。それに比べ、母親は病弱だった。だから父親に勝る訳が無いのだ。なのに母親は涙も浮かべず、臆すること無く父親に反論していた。
「だからお前がやったと認めればいい話だろうが!!」
「私の身に覚えがないから認めないの!!」
父親はどうにか母親にやったと認めさせたいのだろう。母親は認めようともしない。それに腹が立ったのか、父親は母親にビンタをし、蹴った。
翔太がドアの隙間から辺りを見回すと、父親の大切な物だろうか、時計が壊れていた。
「これはな、俺の父親がくれたんだ。父親は貧乏で病弱だった。だけどな、俺にこの時計を買ってあげようって必死になってコツコツと働いて買ってくれた物なんだ。なのに壊れるのは一瞬だった。お前がやったと認めればこんな事にはならなかった!!」
父親は怒りに狂った表情をしていた。
翔太ははっと思い出した。棚の上にあったお菓子を取ろうと思って手を伸ばしたら父親の時計が落ちて壊れてしまったことを。そう、母親がやったのではなく、『翔太がやった』のだ。
なのに母親は無実の罪を着せられ、父親に殴られている。
そんな母親を、翔太はただただドアの隙間から見守るしかできないのだった。
このお話は此処まで酷くはありませんが、私の実体験を基に作りました。
私の父親も翔太みたいな人だったので、暴力なんですかね、母親には「しつけ」と言われていました。
あと何年続くのでしょうか.......。