そんなことってアルマジロ?
とっても恥ずかしがり屋のアルマジロくん。お友だちが欲しくて森で遊んでいる動物たちに声をかけました。
「こ、こんにちは……あ、あの……ぼ、ぼくも……いっしょに……」
アルマジロくんがもじもじと話すので動物たちはちゃんと聞こうと顔を近づけます。
「や、やっぱり恥ずかしい!」
クルン、アルマジロくんは恥ずかしくてボールみたいにまん丸になってしまいました。
「うわぁ! 丸くなっちゃったゾウ?」
「どうしちゃったピョン?」
ゾウくんとウサギちゃんが言います。他の動物たちも丸まったアルマジロくんを見てとてもびっくりしています。
「そんなに見られたら恥ずかしいマジロー!」
みんなにじろじろと見られてしまったアルマジロくんはコロコロコロと逃げるように転がっていってしまいました。
こつん。転がっていたアルマジロくんは石にぶつかって止まりました。たんこぶのできた頭を撫でながらため息をつきます。
「ああ、みんなと遊びたかったのに。すぐに丸まっちゃう僕にお友だちなんてできないマジロ」
するとあたりには誰もいないのに小さな声が聞こえてきました。
「おーい、誰かいるなら助けてくれー」
声は石の下から聞こえてきます。アルマジロくんはえいっと石を持ち上げるとそこにいたのは金色のダンゴムシさんでした。
「あー助かったわい。コロコロ転がっていたら石の溝にハマってしまってな。出られなくなってしまったのじゃ」
ダンゴムシさんはもぞもぞもぞと石の下から出てきました。アルマジロくんは小さいダンゴムシさんをびっくりしながら見つめます。だってこんな金ぴかなダンゴムシさん見たことありません。
「うひょひょ、そんな見られたら恥ずかしいのう」
アルマジロくんは「ごめんなさいマジロ」と目をかくしました。
「いいんじゃよ。目と目を合わせなきゃ仲良くなれんじゃろ?」
「え? ぼくと仲良しになってくれるマジロ?」
「そうじゃ、お前さんはわしを助けてくれた。もう仲良しじゃ。コロコロ友達じゃよ」
「コロコロ友達?」
「そうじゃ」
金色のダンゴムシさんはくるんと丸まってみせました。しかし、丸まったとたんにぴかぴかと光りながらコロコロコロと転がっていってしまいました。
「ダンゴムシさん、待ってマジロ!」
「おっといかんなぁ。わしは丸まると転がりたくなるんじゃ」
せっかく仲良くなったダンゴムシさんが行ってしまったのでアルマジロくんはあわてました。しかし、小さなダンゴムシさんをアルマジロくんは見失ってしまいました。遠くの方からダンゴムシさんの笑い声がします。
「うひょひょひょ、助けてくれたお礼にこれからたくさんいいことがアルマジロじゃよー」
ひとり取り残されたアルマジロくんは寂しくてべそべそと泣いていました。
「またひとりぼっちマジロ。きっと、いいことなんてナイマジロ」
ゴロンゴロンゴロンゴロン
すると森の奥からとても大きな音が聞こえてきました。音の方を見ると灰色の大きな玉が勢いよく転がってきます。目をゴシゴシしてよく見るとそれは丸まったゾウくんでした。ゾウくんは長い鼻を振り回しながらゴロンゴロンとアルマジロくんの前を転がっていきます。
「そ、そんなことってアルマジロ?」
「丸まるってとっても楽しいゾウ!」
ゾウくんは楽しそうにアルマジロくんの前を通り過ぎていきました。
ピョンピョーン ピョンピョーン
今度はふわふわした白い毛のかたまりが跳ねているのが見えました。それは丸まったウサギちゃんでした。ウサギちゃんはコロコロピョンピョンと飛び跳ねながらアルマジロくんの前を転がっていきます。
「え! ウサギちゃんも? そ、そんなことってアルマジロ?」
「丸まるって面白いピョン!」
ウサギちゃんも楽しそうにアルマジロくんの前を通り過ぎていきました。
その後もパンダちゃんやキリンくん、ライオンくんやカバちゃんも丸まってコロコロコロとアルマジロくんの前を転がり落ちていきます。みんながアルマジロくんみたいに身体を丸めて転がっていくのでアルマジロくんはとてもおどろいてしまいました。
「そ、そ、そ、そんなことってアルマジロ!?」
すると今度はかわいらしい人間の女の子がやってきました。女の子はみんなとちがって丸まっていません。
「アルマジロくん、こんにちは! わたしはみーちゃん。野原でみんなが遊んでいるよ! 一緒に遊ぼう!」
みーちゃんはアルマジロくんと手をつないで野原へとかけだしました。いつも丸まってしまうアルマジロくんはだれかと手をつなぐのが初めてでした。みーちゃんの手はあったかくてとってもやわらかでした。
『手をつなぐのってとっても気持ちがいいマジロ』
アルマジロくんはそう思いました。
野原に着くとまん丸になった森の動物たちが、みんなコロコロコロコロ転がって遊んでいました。
「ね、とっても楽しそうでしょ! 私も転がろうっと」
みーちゃんはアルマジロくんの手を離すとくるんと身体を丸めてコロコロ転がり出しました。
「え! みーちゃんも? そんなことってアルマジロ? でも……でも……とっても楽しそう!」
みんながあまりに楽しそうに転がっているのでアルマジロくんもくるんと丸まって一緒にコロコロ転がりました。坂を転がり落ちたり、コロコロ競争をしたり、たくさんたくさん遊びました。
「丸まるのって楽しいね」
みーちゃんが言いました。みーちゃんと手をつないだことを思い出したアルマジロくんはもじもじしながら答えます。
「うん、丸まるのも楽しいけどね……でもね……」
アルマジロくんは気がつきました。手をつないだり、目と目を合わせてお話ししたりするのは丸まったままではできないことです。アルマジロくんは丸まるのをやめてぴっと立ちます。そして勇気を出して大きな声で言いました。
「あのね、丸まるのも楽しいけど、ぼく、みんなと手をつないで遊びたいマジロ!」
するとみんなの返事が揃います。
「いいよ-!」
丸まっていた動物たちはみんな元通りになりました。もちろんみーちゃんも元通りになってアルマジロくんと手をつなぎます。そしてみんなで手をつないで大きな丸をつくりました。アルマジロくんはもう恥ずかしくて丸まってしまうことなんてありません。
「みんなで丸くなるのって楽しいマジロ!」
森にみんなのコロコロとした笑い声が響きます。
アルマジロくんたちが遊んでいるすぐ横では金色のダンゴムシさんが「うひょひょ」と笑いながら転がっていきました。とっても不思議な出来事だけどそんなことも……アルマジロ。
おしまい