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21 我が名は




 ダルトンさん達との食事を終えた私達は早めに『空間』へと戻って来ていた。ダルトンさんから得た情報を元に今後の進路を話し合う事にしたのだ。調子に乗り出した男の子達がミーちゃんの手や肩に触れたりプライベートに関する事を聞き始めたからではない。ましてや近くに座ってきた子に、僕、控えめな女の子の方が好きなんですよねー、落ち着きますから。なんて言われたからでは決してない!!彼らの裁きはクローラさんに任せる事にしよう。鬼畜系でお願いします。なんなら切っちゃって下さい。地図を囲んで座っている私達にミーちゃんが説明を始めてくれる。



 「 それでは会議を始めます。 熊に関してはダルトンさんからの情報のおかげで随分と探索エリアが絞られました。 なので早ければ3日後位には熊の縄張りに到着出来ると思われます。 」


 「 はいっ!! 質問があります!! 」


 「 なんですか? 『洗い場の妖精』ステラさん。 」


 「 ・・・い。 」


 「 んん? なんですか? 」


 「 そんなものは二つ名じゃない!! ただの悪口だ!! 私は断じて認めない!! 」


 「 あはははっ♪ 結構有名らしいですよー? なんでも毎日5分だけ外の洗い場に現れる銀髪の美少女がいて、その水を浴びる仕草が妙に・・・ 」


 「 イヤァーーーッ!!!! 」


 「 あはははっ♪ スーちゃらしくって可愛いと思いますよ? ミシャは♪ 」


 「 ・・・全然可愛くない。 」


 「 妖精さんなんですから♪ それに好きじゃないですか? スーちゃは洗うのが♪ 」


 「 す、好きで汚してる訳じゃないんだよ?! 私!! 」


 「 あれ? 好きじゃなかったんですか? 洗いもの全般。 」


 「 えっ・・・。 」


 「 んんん? 」


 「 ・・・ 」


 「 ・・・ 」


 「 ・・・なんか、ちょっとだけ可愛く思えてきた。 」


 「 あはははっ♪ 『ヌーメル』へ戻ったらちゃんとお皿の方の意味で宣伝しておきますから♪ 」


 「 ・・・うん。 」



 早く熊を退治して『ヌーメル』に戻らなきゃ。このままでは私のアイデンティティーが崩壊してしまう。完璧な迄にシステム化された私の聖なる洗い場へ・・・。



 「 こほんっ。 話を進めますねー。 私達は今朝『スカーラ』へ伸びている仮設街道を越えています。 つまりこの先は街道で分断されていない森の深部へと進む事になります。 」


 「 この先にはもう道とかは無いの? ミーちゃん。 」


 「 裏道みたいなのは幾つも通ってはいるんですけれどねー。 野営しやすい場所とか定期的に採取が行われている場所へ行く為の道ですね。 まー殆どは獣道みたいな感じでなんですけれどね。 」


 「 ふむふむ。 ミーちゃんは飛んだまま進んでも分かるのよね? 」


 「 もちろんです!! 目印になる地形もありますし、夜になれば星もありますからねー。 」


 「 むー。 やっぱりミーちゃんは凄い。 」


 「 覚えたらスーちゃにも出来ますよ♪ 星に関係する本があったはずですよ? 本棚に。 」


 「 わかった。 勉強する。 」


 「 頑張って下さい♪ スーちゃ♪ 分からない事があったらなんでも聞いて下さいねー♪ 」


 「 それじゃあ1つだけ質問。 ミーちゃんはどうして『猫かぶり』なの? 」


 「 んー? ミシャが猫だからですかねー? 」


 「 でも、ミーちゃんって別に外見が猫の姿をしているとかじゃ・・・ 」


 「 大丈夫。 スー。 本気のミシャを見たら納得出来るから。 」


 「 ・・・本気ですか。 あんまり見たくないかも。 」


 「 あははははっ♪ ミシャはいつだって本気です!! 本気でスーちゃを応援しています!! 」




 会議の後は3人でお風呂に入った。2人の体は私が徹底的に洗い清めた。手足と背中だけだったけれども。あと髪も。森にいる間は蜂蜜パックは禁止。え?熊が寄ってくる?ふふん。騙されないんだから。お風呂の後にはシナモンティー。ちょっとだけ蜂蜜入り。その後は3人仲良く就寝。一番奥の壁際が私の定位置。だって起きられないんだもの。うん。いい匂い。安心する。明日からは移動しながらの鹿狩りだ。




 翌日の移動中に最初に遭遇したのは猪の群れだった。ちっ。猪達に恨みはないけれど豊な食生活の為には必要な事なのだ。この国でも王都がある北の地域では畜産が盛んではある。けれど広大な森を切り開いて作られたこの国では魔獣の肉が日常的に食べられていて価格もお手頃なのだ。「いのしし」シャツには大変お世話になっているけれど、ここは仕方がない。世の中は弱肉強食なのだ。美味しいしね、猪ベーコン。お鍋も。



 『空間』を群れに近づけて4本の『手』で入口を準備しての待ち伏せ。2本の『手』を使って追い込む。『ホール』へ誘い込んでから私が直接倒す。『血』と『侵入』を克服する為に敢えてこの方法を選んだ。私はもっと自分の手を汚さなくちゃいけないのだ。『ホール』に猪が入って来る。私自身の手で頭の横を殴りつける。ドスンッ。前足がグラつき膝をついた所で同じ場所にもう一度。ドスンッ。最後は目の間に。ドスンッ。初めて遭遇した猪をミーちゃんが倒した時の方法を真似て倒す。そのまま天井に梁を作ってロープを掛けて逆さづりに・・・は出来なかった。持ち上げられん。え?重力操作を上手に使う?自分を重たくして相手を軽くする?うん。お願いします。吊るされている猪の首に自分でナイフを突き立てる。足元に作った凹みに抜いた血を溜める。血抜きが終わる迄はこのままだ。胃が悲鳴を上げてるけれど関係ない。これは私の仕事だ。



 「 大丈夫ですか? スーちゃ。 」


 「 大丈夫じゃないけれど、大丈夫。 このまま続けるから。 」


 「 わかりました!! それじゃードンドン進んじゃいましょう♪ 」



 『空間』を進めながら魔獣達を狩っていく。次も猪だ。同じ手順で同じ作業をしていく。パカッと開いてドスンと倒す。ふぅ。お願いします。え?足の裏を床にくっつける?やった事ないです。波紋?呼吸?ちょっと何を言っているのか良く分かりません。あ、足を床に埋め込んでみようかな?くっ。筋力的に無理でした。お願いします。8本全部使ってみろと?ぐぬぬぬぬ。おお、吊り上がった。えいっ。うあ!!かかった!!最低っ!!ぬー。刺すのは『手』でやろうかしら?自分の手でやったほうがいい?いやいや全部自分の手です。



 血抜きが終わったら順番に下ろして隅の方へ移動。ぐぬぬぬぬ。重い。『保存針』を刺して壁で囲う。ちなみに今回ウィルさんから貰っている『針』は物質を固定して保存するタイプだ。『針』を刺すとカチカチに固まる。身体強化みたいな感じなのかな?これ。間違えて人体に使用したらどうなるんですか?え?固まるんですか?!ハン・ソ・・・?誰ですか?それ。将軍様?ちょっと分かりません。あー酔ちゃうんですね。そうですかー。



 狼の群れを発見。くっ。これも克服しなくちゃいけない。同じ手順で罠を張って・・・あああ!!2匹入ってきた!!狼速い!!こっちくんな!!私に気が付いた近い方の狼の頭に一発。『手』の方でもう1匹の頭にのもドスンッと入れる。どちらも一発だと倒しきれない。反対側からもう1回。結局猪と同じ3回。今の私だとまだまだパンチが弱いみたいだ。狼も血抜きしてしまう。どうしたんですか?ウィルさん。え?帽子を作る?欲しいんですか?私用?!頭はちょっと。あ。しっぽの襟巻とかなら。ミーちゃんも欲しいの?頭はかぶりません!!え?しっぽでいいからもう1匹?欲しいの?ちなみにしっぽが無いと査定も下がっちゃうのかな?これ。そっか残念。まぁそうよね。じゃあと1匹だけ頑張る。罠を用意してと。あああ!!2匹で入ってくんな!!



 狼を片付けてから昼食にする事にした。血抜きで汚れてしっまったので私だけお風呂へ行く事にした。お昼はミーちゃんがカレーを作ってくれるらしい。カレー率高くない?今日のはいつもと違う?そうなんだ。洗濯機の汚れ物専用機で水で一回濯いでしまう。血が固まってしまわないように。よし開始。お風呂で血を洗い流してしまう。顔にかかっただけなのだけれど。吐きそうになったけれど胃が空っぽで何も出せなかった。お水を飲んでそれを3回だけ出した。



 お昼のカレーはいつもとスパイスの配合が違っていてクミンの香りよりも・・・うん。わかんない。いつも通りのカレーだった。美味しかったけれど。カレーの後でちょっとだけ食休み。コーヒーで一息ついてから午後の移動を開始する。少し進んだ所でミーちゃんが声を上げた。



 「 おっ!! スーちゃ!! いいもの見つけましたよ!! 」


 「 な、なに?! なにを見つけたの?! 」


 「 角です!! それもかなり立派ですねー♪ あそこです!! もう少し左です!! 」



 ミーちゃんの指示に従って『空間』を移動させ角があるという場所まで移動する。近くまで行っても私には全然見つけられなかった。どうしてコレが見えるんだろう?ミーちゃんはやっぱり凄い。『空間』を角に重ねて『入口』を開けようとした時に私はその事に気が付いた。



 「 ひゃんっ?! 」


 「 どうしたんです? スーちゃ。 そんな可愛らしい声を出して。 」


 「 ほっ、骨っ?! 」



 草に隠れていて近づくまで全然気が付かなっかたのだけれど、落ちていたのは角ではなく鹿の全身骨格だった。



 「 し、鹿って角だけ落すんじゃなかったの?! ミーちゃん?! 」


 「 鹿が自分達で落とすのは角だけですよー。 でも・・・。 」


 「 で、でも・・・? 」


 「 大自然の中で命を落としちゃうのは仕方のない事なんじゃないですかねー? 」


 「 上手いかもだけれど・・・。 なんかくやしい。 」


 「 あはははっ♪ そんな事より立派な角じゃないですかー♪ 状態も良さげですよ♪ 」


 「 じゃ、角だけ取っちゃうから・・・ 。 」


 「 駄目!!!! スー!!!! 」



 気が付くとウィルさんが立っていた。こんなに大きな声を上げるウィルさんは珍しい。真剣な表情のまま私の方へ近づいてきてウィルさんは話を続ける。 



 「 角を取っては駄目。 スー。 そんな事をしたら角が死んでしまう。 」



 はい?



 「 角は生まれながらにして自らの中にその有るべき形を内包している。 」



 ええっと・・・。



 「 私が角を使うんじゃない。 角が私を導いてくれる。 」



 話は全く分からないけれど何をどうするべきかはなんとなく分かった。ああ・・・。



 「 こ、これでいいですか・・・? 」



 私は角ではなく頭ごと・・・頭蓋骨ごと慎重に持ち上げてそれを『空間』まで運び込んだ。



 「 おおおおおおおお。 」



 目が輝いている。もはや何も言うまい。



 「 いいDEATHねー!! これ!! このまま飾りましょう!! 」


 「 そう、これは様式美。 」


 「 ・・・運びましょうか? 『実験室』まで。 」


 「 黒より黒く、闇より暗き漆黒に。 黄色より黄色く、茶色より濃い焦げ茶色に。 我、空間の支配者にして洗う者ステラ・リーノットへ望み給う。 浄化の時来たれリ、無地柄物の境界に堕ちし穢れ、色堕ちの歪みと成りて漂白せよ。 洗え。 洗え。 洗え。 我ウィリアミーナ・ユーべルバッハ名に於いて命じる。 『実験室』へと至る『地獄の門』。 今此処に顕現せしめよ!! 」


 「 ・・・はい。 」



 ちょっと傷ついた。私は『実験室』の真上の床を開けてそのままゆっくりと頭を降ろした。



 「 スー。 同じ物があれば3個欲しい。 」


 「 ・・・3個もですか? 」


 「 これは被り甲斐がある。 」


 「 狩りに戻ります。 」



 その後なんとか2人の意識を目の前にある頭蓋骨の方へ向けさせて、マスク案なんて最初から無かった事にした。ミーちゃんもそのまま『実験室』に残って改造を手伝うみたいなので私は『ホール』に戻る事にした。きっと目が光ったり口が開いたりするんだろうな。あとスモークとかも。内装、可愛く頑張ってたのに・・・。



 午後からの狩りは私1人で頑張った。雄鹿が2匹。猪3匹。頭1個。鹿の角がぷにぷにしていたのにはちょっと驚いた。この触感は苦手。二度と触らん。頭、そのままにしておけば良かったかな?でもウィルさんが喜んでくれるし。ふぅー。暗くなってきたので狩りはここ迄にしよう。片付けを終えて『2階』へ下りてみたけれど2人共まだ改造に夢中みたいだ。洗濯機を回してからお風呂で汚れを洗い流す。今度も3回。なかなか慣れない。でも今日は一人でも頑張れた。明日も頑張ろう。うん。




 夕食にはお昼のカレーを出す事にした。ちょっとだけ味を変えておいた。




 2人共、気付いてくれるかな?



 

更新不定期です。

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