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1 プロローグ








 暗闇だ




 暗い海の底を漂っているかのような

 人混みの中で押しつぶされているような

 

 為されるがままに身体中を弄られ凌辱されドロドロに溶かされていくような感覚

 極彩色にも反転色に思えるそれに纏わり憑かれ撫でまわされ体を抉じ開けられる


 手足の位置も内側も外側も疑問も恐怖も快感も噛み砕かれ飲み込まれては吐き出される

 消えてしまう事も逃げ出してしまう事も抵抗も理解も出来ないままに只々それを繰り返す




 無間地獄




 ここへ来てからどれ程の時間がすぎたのだろう


 抗えぬ無限の繰り返しの中で気が付けばそれはそこにあった




 遥か彼方に燦々と輝く小さな光




 針で開けられたように小さく


 それでいて全ての根源とも思えるような力強い光




 そこには全ての希望があるように思えた


 そこへ行きたいと思った


 只々そう思った


 そこにたどり着けたなら全てが終わり全てが始まるのだと思った


 だけど


 きっと私はそこへは行けない


 私には行けないのだと思った


 噛み砕かれ溶かされ吐き捨てられる繰り返しのなかで


 私にはそれを見ている事しか出来なかった


 見つけなければ良かった


 気が付かなければ良かった


 遥か彼方で輝き続ける希望と同じだけの絶望が体の中で暴れ回り



 私は・・・



 私の体を貪り続けた




 どれほどそれを繰り返したのだろう


 気が付けば噛み砕けない何かが私の体の中に紛れ込んでいた


 今まで感じた事のないような温かく光る何か




 小さな小さな命の光




 ふと自分の物ではない感情が体の中に流れ込んでくる


 恐怖 孤独 後悔 痛み 絶望 喪失 懺悔 


 そしてその中に小さく揺らめく小さな小さな希望と安堵



 すべてを受け入れたかのような穏やかな感情


 それは悲しくも温かい光の瞬きとなって私の体の中で緩やかに立ち上っていく


 ゆっくりとそれでいて待ちきれないとでもいうかのように




 あの光の先へ行くのだろうと思った


 私はそこへ行けないのに・・・




 ドロドロに溶かされて混ざりあった私の中から今まで感じた事のない感情が激しく溢れ出してくる




 嫌だ


 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 嫌だ 


 私もそこへ行きたい


 私はそこへ行けない


 お願い


 お願い私も連れて行って


 助けて


 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 助けて 


 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い 怖い




 私は・・・




 ( 私は・・・  私はまだ消えたくない!! )





 小さな小さな命の光がすこし震えて


 小さな小さな声が聞こえた



 ( ・・・けた )


 ・・・誰?


 ( やっとみつけた おかあさんにあえる )


 ・・・おかあさん?


 ( あのね おとうさんも まーくんも いるの )


 ・・・家族?


 ( うん やっとみつけたの )


 あの光の中へ行くの?


 ( うん みんなまってるから )


 お願い 私も連れて行って


 ( すー ひとりでいくの あなたは いけないの )


 私はここにはいたくない お願いだから私も連れていって


 ( ・・・あなたに あげる )


 え? 何をくれるの?


 ( すー もういらないから それはあなたにあげる )


 お願い! 私を置いて行かないで! 私も連れて行って!


 ( きっと あなたをまってるから )


 待っている? 私を?


 ( うん ずっとあなたをまってるみたい )


 知らない!! そんな事はない!! 誰も私の事なんて待っていない!! 


 ( きれいな おんなのひと ずっとあなたをよんでいるみたい )


 そんな人知らない!! 知ってたって知らない!! お願い!! 私も連れて行って!!


 ( すー もういくね ばいばい )


 お願い!! 待って!! 見捨てないで!! 私も連れていって!!




 独りっきりはもういやあああぁーーーーーっ!!!! 






 ( ちっ!! ぐだぐだと五月蠅い!! 手間をかけさせるな半端者めが!! そのままだと消滅してしまうぞ? いいからさっさとこっちへ来い!! )




 胸元あたりを強く捕まれたような感じがしたと思った次の瞬間



 私は



 為す術もなくそこから引きずり出された



 

初投稿になります。更新不定期です。

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