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一章 星々の欠片 後

「あれが拠点を持たないギルドですか」

「別に変わった人ではなかったでしょ?」

「はい。あのグレアって人もとても優しそうでしたし、変わった人の集まりってわけでもなさそうですね。他の2人はわかりませんが」


 会話にしても、行動にしても何もおかしいところはない。むしろ、なぜそんなギルドにいるのか疑問になるほどだ。


「他の2人も普通よ。色々な話も聞かせてくれるいい人たちだもの」

「けどまあ、変わってないとは言えないかなぁ」


 アポロンがシエルの言葉に付け足すように口を挟んで言う。


「普通の人なのに変わってるんですか?」

「そもそも、人ってところが違うのさ。あの3人のうち2人は人間じゃあない」

「え••••••」


 リーナは驚きのあまり言葉を失う。この世界において人間でないものは、モンスターと神、そして悪魔しか存在しない。

 悪魔は、神と敵対する存在でメデューサやルシファーやソロモン72柱などがそれに該当する。

 神とは違い信仰者を持たず、個々が自分の力を使って猛威を振るっている。悪魔によって滅ぼされた都市や国も多い。

 もちろん、そんな種族が人間や神と共にいるという話は聞いたことがない。


「それって誰が••••••」

「さっきのグレア•ウィラノスは半神。仲間の女の人─カナ•エルフリートは悪魔。そしてもう1人の男の人─メフィト•ナディアガルが人間だよ」

「それってつまり」

「ああ、グレアがあのギルドの主神さ」

「Oh••••••」


 確かに神は人間に似ている。確かに一般人と見分けが付かない。だが、悪魔だというあの女の人も一般人にしか見えなかった。


「しかも、今半神って言いました?それって神と人間のですか?」

「そこまでは分からないんだ。ただ、完全な神ではない。だから半神。中には偽神とさえ呼ぶ人さえいる」


 そして、おそらくそれが普通のギルドとして設立出来なかった1番の理由だろう。


「偽神と悪魔と1人で200体のモンスターを倒す人間ですか」

「みんな優しいけれど、社会はそれだけじゃあ受け入れてはくれないのさ」


 それが普通だけど、変わっていると言える理由。みんなと違うものは仲間外れにされ、出る杭は打たれる。それが人間というものだ。


「こんな話になってしまったけど、結局言いたいのはギルドには色んな人がいて、色々と特色があるってことだよ」

「そうよ。だから急いでギルドに入る必要はないわ。ここだって思える所に入ればいいのよ」


 場の雰囲気を変えようとしているのかシエルが、微笑んでリーナに言った。

 現在、ギルドは40前後あると言われている。モンスターを倒すことを本職とするギルドだけでなく、農業や漁業や鍛冶を本職にするギルドもある。

 それらを回ってみて、気にいるギルドを探すのはいいかもしれない。


「私、ギルドを巡ろうと思います」

「そうか。それなら1番近くのギルドに僕の妹であるアルテミスのギルドがある。そこに行くといい。多分優しく出迎えてくれると思うよ」

「分かりました」


 リーナは置いていたカバンを持って席から立ち上がる。それから頭を下げてお礼を言う。


「色々と教えていただいてありがとうございます」

「いやいや、新人を導くのも神の役目さ。えーと、ああ、名前を聞いていなかったね」

「リーナ•イレアダストです。もし、また戻ってくることがあればよろしくお願いします」

「うん。いつでも歓迎するよ」


 カバンを背負って歩き出したリーナは、再び入り口の近くで振り返ってお辞儀をする。アポロンとシエルはそれに手を振って応え、リーナを見送った。


「さて、そろそろ僕も仕事に戻るとしようかね」

「溜まってるんですから、しっかりやってください!」

「手厳しいなぁ。そうだ、頼んでおいた調査はどうなったかな?」


 あれなら、と言いながらシエルは一枚の丸まった紙を取り出す。その紙には厳重に何重にも赤い紐が巻かれている。


「ヘーリオス」


 アポロンはその神を手に取り、太陽神の名を唱えと紙を上に魔法陣が現れる。そして、紙をその魔法陣を通すと巻きついていた紐は力なく解ける。

 ディファイルと呼ばれるその紙は、魔具の1つで魔法をかけて封をした場合、同じ魔法をかけるまではあらゆる状況下においても影響を受けない。

 だが、封をされている間はその紙自体の質量は消える。いわば幽体化のようなものである。

 つまり、デファイル製の武器や防具を作ることはできないということだ。逆に言えば幽体化するからこそ影響を受けないのである。


「これで全員?」


 開かれたデファイルに目を通したアポロンはシエルに尋ねる。紙には、『ミナルーツの森 極秘調査』の文字があった。


「現在確認されているのはその3人だけです」


 書かれている名前は、アマイモン、グーシオン、パズズの3人。いずれも強力な力を持つ悪魔である。

 最近、ミナルーツの森に悪魔がでるという噂が街やギルドなどで流れていたため、念のために調査をしたのだ。

 結構としては、調査をして正解だった。悪魔が3人で集まって行動しているのは良くあることだが、事実だと分かれば警戒のしようもある。


「シエル、ミナルーツの森で行うクエストを全て中止、クエストボードから紙も剥がす。それと街の人達にもこの情報を伝えてくれ。放送はせず、紙か言葉でだ」


 アポロンは的確な指示をシエルへと出す。放送を使わないのは、その放送が悪魔達に聞こえてこちらに矛先が向くのを避けるためだ。


「分かりました。直ちに」


 シエルもそれを分かっているので、質問はせず、 速やかに行動に移す。その姿をみて、アポロンは思わず口から「流石はギルド代表」とこぼしてしまう。


「悪魔が3人でくるなんて、ミナルーツの森に何の用があるのかねぇ。リーナちゃんは大丈夫かな。まあ、アルテミスのギルドとは反対の方だし大丈夫だよね」


 先ほど出ていた少女の心配をするが、ミナルーツの森はこの街より東側にある。アルテミスのギルドは西側にあり、悪魔との心配はない。もし、この街で一泊していくのであれば悪魔の話を宿主から聞くことになるだろうし、万が一もないだろう。


「頼むから面倒ごとだけはやめてくれよ〜」


 悪魔に聞こえるはずのない太陽神の願いは、ギルドメンバー達の慌てる音に掻き消えた。

ギルド名考えるのに大苦戦中


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