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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

「おっさん」が主人公の場合に注意することを考えてみる

作者: 赤石エイブル

 二十歳になる前、小学生に「オジサン」と呼ばれたのは非常にショックで、しかしいい思い出だ。

 それがめいとかなら、「叔父様と呼んでくれよ」とバカみたいな返しくらいはできたかもしれない。

 しかし知らん小学生だった……。




 てめーも十年後は「オバハン」だよ、ケッ。

 それはともかく、検索すると「おっさん」(ここでいうのは大体35~55くらいの、いわゆる『中年』)が主人公の作品があるらしい。

 難しい物を扱っているな、と思う。


 若者は間違いを犯しやすい。経験がないとか物の見方が偏っているとか、主にそんな理由から。その代わり時々、若者の手本とすべき「成功・失敗をした大人」が出てきて、若者は間違いを正して成長する。良い未来を読者に想像させながらエンド。うまいやり方だし、何より失敗とそれを克服する変化を描きやすい。


 対して、中年の場合はリスクが大きい。

 まず、上手く描いても若者の共感が得られるか難しい。年月をかけて培われたこのおっさんの経験は重んじられず、世間を知ってるので喜びは少なく、その深き哀しみは理解者がいない。

 年を食ってるので若者のように失敗のリスクが大きく、やり直しのチャンスはない。手本は自分と同じ中年か老人かで、しかし情勢はすでに決していて、出世はおいそれとできない。愛し合って結婚したはずの嫁とはもうほとんど口もきかない状態で、あの時の恋は夢のよう。息子も娘も親の気持ち知らずで、自分勝手にやんちゃしては「ダサい」とか「くさい」とか文句しか言ってこない。


 そんな悲哀あふるるおっさんたちが主人公になるってったら、それでも譲れない意地だったり、立ちはだかる現実を前に諦め、いつしか忘れてしまった夢や理想だったり……そういったものを思い出して、見せつけてくれるお話しなんだろう。

 そんな難しさを書き切る作者は並大抵の技量ではないに違いない。カモン泥臭い展開!



 ――と、読み手からは妙に高いハードルを設定されそうだ。

 でもたぶん、読み手はそういった『中年ならではの心情』を欲して、手を伸ばしに来ているのではないだろうか(見たい箇所は「人間らしい、より深い成長?」なのだろうか……)。

 洋画だが、「不思議な力で若かった頃の自分に変身できたので、今抱えてる問題を解決しつつ大人に戻る方策を探す」といったものがある。

 今抱えてる問題とは、妻とのぎくしゃくした関係であるとか、上司との不和であるとか、子どもの抱えるトラブルであるとかだ。

 主人公は若い肉体で嬉しいし、若い女性との恋愛したりするのだが、おかげで高校生の時にもっていた夢を思い出したり、『今まで歩んできた自分の人生、うだつあがらないし悪いことも多かったけど、自分の生きた証だし家族はやっぱり愛してる』みたいな感じで、不便な元の身体へと戻ろうとする。


 大人が若者になって、若者が本来持ちえない知識や経験などを武器に暴れるのは面白い。特に人に迷惑かける悪漢を叩きのめす時は爽快ですらある。が、それは見苦しさと紙一重でもある。

 若者が主人公の作品で、主人公に悪いことをしてくる敵の大人たち。彼らが悪としてのカリスマを持っていない場合、大人は見苦しさをもってして敵となってしまったのだ。


 何言ってるか自分でもわからなくなってきたが、おっさんを主人公にする場合、読み手の期待といったものやその反対のリスクは若者主人公の時以上。

 面白い題材ではあるが、注意が必要だと思われる。




 ちなみに、渋いおっさんの無双快進撃とか大好き(暴れん坊将軍のことなどを言っているが、あれは渋いおっさんとして共感が来るのかは不明だ)ではある。

 が、より好感を持つのが失敗して、

「あっちゃあ。またやっちゃったよ、おじさん」

 と言うおっさんである。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 取り扱っている内容は、ここならではの内容ですが、読み口が軽く、文章のまとまりも含めて、エッセイとして素晴らしいと思います。 [一言] 私も、おっさん主人公を書いている作者の一人です。 お…
[一言] 相変わらずお元気がいいようで。 おじさん、おばさんは時として若者よりパワーを発揮することがあるからね。 これが爺さん、婆さんになると何も感じないのよ。 いくらなんでも転生するなんて考え…
[一言] 大人が若者になって暴れるだとか、無双快進撃といっている段階で、すでに一面的にしか捉えられていないと思います。 小説なんて、そういうものは一部でしかありません。 大人であれ子供であれ、男も女も…
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