第8話 商人アーウェルとの出会い
御者は俺の元まで走ってくるとまくしたてるように話し始めた。
「大丈夫ですか!?ありがとうございます!!てか、さっきなんなんですか?てか、あなた何者ですか!?なんなんですか!?」
「まあ、落ち着いて。あなたは大丈夫ですか?お怪我はありませんか?」
「あ、すいません。興奮してしまって…。
私の名はアーウェル。商人をしています。先ほどは助けて頂きありがとうございました。私も馬車も無傷です。全てはあなたのおかげです。あなたは…どこの国の人ですか?ここらじゃ見ない格好ですけど…」
アーウェルは落ち着きを取り戻すと落ち着いて喋りだした。そしてさりげなく俺がこの辺の人間じゃないとすると探りを入れてくる。さすがは商人といったところだ。
「なに、大したことじゃないよ。目の前であんなことが起きてるんだ。助けるのが普通だろ?それに聞きたいこともあったしな。」
「聞きたいこと…ですか?」
「ああ。俺はあなたの言う通りこの辺りの人間じゃない。そこでこの近くに村か街はないか?このままだと今夜は野宿になりそうなんでな…。」
「そうでしたか。私はこの近くにあるアンバスという街に向かうところでした。よければご一緒にいかがですか?助けていただいたお礼もしたいので。」
「本当か?なら、お言葉に甘えてご一緒させてもらおう。」
そして街まで送ってもらうことにした俺はアーウェルと一緒に馬車に乗り込んだ。
馬車に乗ってから10分くらいした時にアーウェルが話しかけてきた。
「そういえばあなた様のお名前を聞いてませんでしたね。」
「ああ、そうだったな。俺の名前は神崎葵。葵と呼んでくれ。」
「葵様…ですか。とても珍しい名前ですね。それにその髪の色…瞳…」
「ん?なにかおかしなところがあるか?」
俺は前の世界じゃ日本人だった。だから髪色は黒。瞳も黒だった。
「知らないのですか?髪と瞳の色が黒い人間は死神の子。とか災厄をもたらすものなどと言われているのですよ?」
「そうなのか?知らないな…。」
くそっ!あの死神、変な設定つけるなよなっ!
「それに葵様が持っているその武器…初めて見ました。それはどのような武器なのですか?」そう言いながらアーウェルは興味津々といった顔で俺のガバメントを見ていた。
「これは銃って言うんだ。簡単に言うと火薬で鉄の玉を飛ばすんだ。」
「なんと!?火を使うのですか!?ということはそれは魔導具なのですか!?」
「んー、魔導具というか…んん…そんな感じなのかもな。」
などと、たわいもない話をしていると前方にアンバスの街が見えてきた。