007-曇りのち晴れのチュートリアル06
休憩を終えて各自が再び試し撃ちに戻り、少し経過して全員が満足したところで案山子相手の試し撃ちは終了した。そして休憩を少し挟んでから周辺の探索を開始することに。
気になっていた魔法銃に関してだが、休憩後にはすぐに撃つことができた。しかし、その回数は数発と少ないものであり予想通り時間経過による回復であると考えている。
「基本的には私が突撃、アオが後方から弓での攻撃、そしてユウさんがアオに近づく敵を迎撃。あとは状況によって各自で考えてくれ。他に何かあるかい?」
試し撃ちを終えたあとの休憩で魔法銃に関して分かったことを伝えたところ、僕は集中して撃つアオさんに近づく敵を迎撃する役目となった。弾数に余裕があれば近づいて攻撃するつもりだが、それでも完全に足手まといだろう。
「2人とも、足手まといになってしまってゴメンね」
「そんなことはないよ。君がアオを守ってくれることでアオは集中して攻撃できる。そうすればパーティとしての攻撃力は上がるだろう?」
「そう。ユウさんが守ってくれることで集中して撃てる。そうでなければ私も足手まとい」
「2人とも、ありがとう」
今はまだ従魔魔法に可能性があるが、もし明日のチュートリアル以降でも使い方が判明しなかったり、判明したとしても僕が扱いきれないものであった場合は今度こそ完全な足手まとい。それでも戦えないわけではないので、いないよりはいた方がいいとは思うが、それは食料関係のシステムしだいだろう。最悪の場合は家から抜け出し、食料を消費しない選択を取ることも考えておこうか。
「それでは出発しようか」
「うん」「うん」
道は最初に来た場所しか存在していないので、探索するのは木々が生い茂る森の中。さあ、何が出てくるか楽しみだよ。
家から少し移動したあたりから木々にリンゴなどの果実が実っている箇所が点在し始めた。そして森の一部になぜか畑があり、人参やレタスなどの各種野菜も採取することができた。
「ここまで食料があるとなると、2人が言っていた通り食料は必要と考えるべきだろうね。ユウさんの言った通り、早めに探索をしておいて良かった」
「うん」
「少しは役に立てたようで嬉しいよ」
採取した果実や野菜は3人のマジックポーチに分散して入れてある。もしも死んでしまった場合にアイテムやプレイヤーがどうなるかは分からないし、はぐれる可能性も考えられるというアオさんの提案から、食料などは3人で均等に分散して持っておくことになった。
そして採取できた量だが、今日食べる分には十分であり明日は探索に出なくても余裕な程度には採取できている。もしかすると食料は必須だが重要ではない程度の位置付けなのかもしれない。
「2人とも、気をつけてくれ。何かいる」
リンカさんのその言葉にアオさんが僅かに緊張した表情を見せる。リンカさんが何から判断したかは分からないが、おそらく前方の草むらに何かひそんでいるのだろう。
「アオ、あそこの草むらに矢を撃ってくれ」
そう言いリンカさんが示したのは予想通り前方の草むら。それなりに離れているが、弓ならば十分に届く距離だろう。
「分かった」
アオさんが矢を番え、弓を引き絞り、撃つ。集中して放たれた矢は一直線に示された草むらへと向かい、その中へと消えていった。
「……出てこないな。少し確認してくるから警戒を解かずにここで待っていてくれ」
「うん」「うん」
鞘に納めた刀の鍔に手をかけたリンカさんは草むらへと駆けて行き、飛び込んだ。魔法銃を構えてその行動を見守るが、すぐにリンカさんは草むらから出てきた。その表情は緊張したものではなく、その様子から危険はなかったか、危険が去ったかのどちらかだと予想できる。
「2人とも、大丈夫だ。こちらへ来てくれ」
リンカさんの言葉に従い、2人で草むらへと移動する。
「どうやらこの兎だったようだ。これは敵だと思うかい?」
リンカさんが示す先には倒れた兎が1匹。その赤い目をした白い兎は現実世界にも存在している兎に見えるが、草むらに隠れて動かなかったことを考えるとこちらを狙っていた可能性は否定できない。
「おそらく敵だろうね。アオさんのおかげで安全にその姿を確かめることができたのは大きい。これ以降は少なくとも兎型の敵がいると考えて行動するべきだと思う」
「ユウさんの言う通りだな。草むらに隠れて動かなかったことからも、こちらを狙っていた可能性は高い。仮に野生動物であったとしても、こちらの敵であることに変わりはない。以降は姿を見つけしだい、先制攻撃ができるようならしかけるべきだろう。アオ、任せられるか?」
「任せて」
次に兎をマジックポーチに入れようとしてみたが、入らない。どうやら椅子やテーブルと同じくアイテム外の扱いになっているようだ。ナイフがあれば解体してみてもいいが、ないものは仕方がない。
「この兎はどうする?」
「マジックポーチに入らない以上は放っておこう。いや、埋めるべきか?」
「それなら少しだけ待ってみない? もしかしたら何か変化が見えるかもしれないよ」
「確かに。リンカ、待ってみよう」
「そうだな」
休憩も兼ねて30分ほど近くで休憩していたところ、先ほど倒した兎が突然消滅した。それはまるで空気に溶け込むように、自然に。
「どうやら放っておけば消滅はするみたいだね」
「ああ。これならば、これ以降は倒した敵はそのまま放っておいても構わないだろう」
「うん」
確認が終わり、今後の方針を決めたところで休憩を終えて再び探索を開始する。
20150421:
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