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ベアリアス・ログ ~従魔魔法から始める世界を懸けたVRMMO~  作者: 雪結晶
終章:叶うならば、次は"君が"勇者として生まれないように
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叶うならば、次は"君が"勇者として生まれないように

 木々生い茂る森の入口で、1人の人物が木を背にもたれかかり座っていた。

 肩ほどまでの黒髪と黒い瞳をしており、白を基調とした着物の上に黒いローブを纏っている。

 

「理解しているのでしょう!? この世界が崩れれば、次は私達の世界なのですよ!」

 

 金色の髪を揺らし碧の瞳で魔物達を捉える女性はその手に剣と盾を持ち、その人物から少し離れた場所で森の入口に殺到する魔物達を迎撃している。

 つまり戦いながらその人物へ叫び掛けているのだが、その人物は俯いたまま動かない。

 

「あなたの従魔達は今もあなたのために戦っているのですよ! 立ちなさい!」

 

 その人物の周囲には叫びかける女性と、様々な種類の魔物だけ。

 その人物が何も答えぬ間も女性は剣を振り、盾を構え、魔物と戦っている。

 そして数十分ほど経過して迫っていた魔物をすべて撃退した女性はその人物の傍に座り、剣と盾を置いた。

 

「……もう、あの子はいないのですよ? いつまで引きずっているつもりですか?」

 

 悲しそうな声で女性は声をかけるが、その人物は相変わらず何も答えない。

 

「また、私はまた……あなた達を、あなたを失うのですか……?」

 

 問いかけるように女性が呟く。

 

「いや?」

 

 ここでようやく、その人物が口を開いた。

 俯いたまま、まるで優しく問いかけるかのように。

 

「あなたなら理解しているでしょう!」

 

 そんな雰囲気が気に入らなかったのか、女性は声を荒げた。

 

「そうだね。実は今回、失われてもいいかなって思ってたんだけど……あなたがそう言うのなら1度だけ、もう1度だけ機会を作ってあげる」

 

「……気休めはよしてください。私だって理解しています。もう、機会なんて存在しないのです」

 

 消え入るような声で女性は言葉を返す。

 

「そう、"勇者"がいないこんな世界は滅びてしまってもいいかなって、そう思ってたんだけどね」

 

 その人物は顔をあげ、空を見上げて語る。

 

「それでも自身が勇者となってしまったのだから、分かっていて勇者を歩んでしまったのだから、1度くらいは機会を作らないとね」

 

「……まさか、本当に機会を作れるのですか?」

 

 半信半疑といった表情で女性は問いかける。

 

「叶うならば、次は"君が"勇者として生まれないように」

 

 空へ手を伸ばすその人物。

 

「まずは、さようなら」

 

「待ってくださ――」

 

 女性が手を伸ばし静止の言葉をかけようとするも、その人物はその場から忽然と消え去ってしまった。

 女性は空を切った手をそのままに、空を見つめる。

 

 

 

 真っ黒が染める空間にその人物は立っていた。

 いや、浮いているのかもしれない。

 

「そうは言っても、君は勇者として生まれてくるのだろうね」

 

 そんな空間で1人、その人物は呟く。

 

「さて、準備をしよう」

 

「プレイヤーはすべて。ゲームマスターは空の椅子」

 

 誰もいないのだから、とうぜん返答はない。

 そんな中でその人物は言葉を紡ぐ。呪文を紡ぐ。

 

 

 

 奏でられていた呪文が止まる。

 

「それにしても……これなら、禁断の果実を食べたほうがマシだったかもしれない」

 

 その人物は後悔を感じさせる声で呟く。

 

「まあ、それは無理だったのだろうね。日常を願われたのだから……最初から、そんな可能性は存在していなかったのかもしれない」

 

「でもね、君がいないのだから、既に日常は願われていないんだ」

 

 その人物は声から後悔を消し、再び言葉と呪文を紡ぎ始める。

 

 

 

「うんうん、設定完了だ。部隊はファンタジー世界……いやいや、現実世界かな。確かに現実でもあったからね」

 

 その人物は頷き、そう言った。

 

 「それでは早速……おっと、開始の宣言を設定していなかったね。必要はないけど、きっと必要なんだ。そうなると……うん、宣言はきっとあれがいい」

 

 その人物は笑みを浮かべ、口を開く。

 

「さあ皆、世界を賭けてゲームをしよう」

 


 まず、ご覧頂きありがとうございました。

 このお話でこの物語は終わりとなります。

 本来ならば十数章を予定していたのですが、その多くが続く3幕と多く被り過ぎており、それなら3幕を始めてしまおうと考えての決断となります。これは現在の更新頻度も考えてのものであり、2幕(今作品)をそこまでしていては何年かかるか分からないうえ、2幕を終えて3幕に入れるか怪しい状況です。

 最初から3幕をすれば良かったという話なのですが、未熟なためそこまで見通せていませんでした。申し訳ありません。

 1幕(従魔使いのベアリアスワールド・オンライン)と2幕(今作品)は3幕において重要な役割を持ちますので御覧頂いた結果を無駄にするつもりはありません。完全に捨てられるのならそもそも別作品として3幕を独立させています。


 もし続く3幕に少しでも期待してくださるようならば『下記のアドレス』か『右上の作者名』から3幕(従魔魔法使いのベアリアスワールド・オンライン)へお進みくださると嬉しいです。


従魔魔法使いのベアリアスワールド・オンライン

http://ncode.syosetu.com/n1669dj/


 3幕自体に需要が無いようならば打ち切る可能性も十分にありますが、良い区切りである3章(30万文字程度を予定)までは書き上げますので、そこまではご安心ください。


 いまだ区切りとなりますが、ここまで未熟な作品をご覧頂きありがとうございました。

 叶うならば次の機会を。

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