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005-曇りのち晴れのチュートリアル04

 とりあえず、武器を見つめている2人へとその結果を伝える。

 

「入れることができるものには基準があるようですね。椅子は入れられませんでしたが、魔法銃とベルトは入れられました。そして魔法銃とベルトを同時に取り出すことはできませんでしたが、同時に入れることは可能でした」

 

 僕の言葉に2人はこちらを向き、恥ずかしそうな表情を浮かべた。

 

「すまない。初めて見る武器に見入ってしまっていたよ」

 

「申し訳ありません。私も見入っていました」

 

 おそらく本物を見たのが初めてだったのだろう。さらには特に惹かれたスキルで扱う武器なので見入る気持ちは分かる。僕の場合は初めて見るものであったが、惹かれたスキルが武器と関係のないものであったためか武器自体にそこまで惹かれることはなかった。カッコいいとは思うが、それだけなのだ。

 

「そうなると、ゲームで言うアイテム的なものだけがマジックポーチに入れられると考えておくべきかな?」

 

「私もそう考えています。椅子やテーブルはオブジェクト扱い、あるいは所有権があれば私達以外の誰かに設定されている可能性もありますね」

 

「そうなるとこの家に初めからあるものはすべてマジックポーチに入れることができない、つまり持ち出すにはマジックポーチ以外の方法で運ぶ必要があると考えておいた方がいいかもしれませんね」

 

「そうだな。外に持ち運ぶものは少ないとは思うが、そう考えておいた方がいいだろう」

 

 これ以外にも2個以上のアイテムを同時にマジックポーチに入れた場合に同じ場所に収納されるのか別の場所に収納されるのか、気体や液体を入れた場合の扱いなども気になるが、今は確認することができない。

 気体に関しては存在するはずの空気が入っていないが、空気はアイテム扱いではないと予想できるので判断が難しいところだ。やはり固体の容器に収めてあれば入れることができる、あたりの可能性が高い気がする。

 

「さて、これで先ほどの内容はすべてかな」

 

「そうですね。残りはチュートリアルですが、これは明日の朝まで待っておいても問題ないと思います」

 

「私も同意見です」

 

 僕もチュートリアルに関してはその意見に賛成だ。話し合ったところで結局はチュートリアル待ち。それよりは他のことをしていた方がいいだろう。もちろんパーティの親交を深めるために話し合うのならば別だとは思っているけどね。

 

「それでは先ほどの話しについては終わりにしよう。ところで1つ提案があるんだがいいかな?」

 

「何でしょうか?」

 

「ユウさん、その話し方はやめないか? これから5日間とはいえ、ともに過ごすのだからできるだけ仲良くなりたいと思っているんだ。だから他人行儀はやめてほしい。最初の確認から思うに普段はもっと砕けた話し方なんだろう?」

 

 基本的に親しい人以外に対する話し方はこれなので普段からこれといっても間違いではない。しかし相手が親しくなることを望んでくれているのなら、こちらも歩み寄るべきだろう。それに出会ってしまったのならば、この2人とは僕も親しくなっておきたいとは考えていたのでいい機会かもしれない。

 

「そうだね。僕も2人とは仲良くしたいから嬉しい申し出だよ」

 

「ありがとう、ユウさん。ということで、アオ」

 

「分かってる。ユウさん、私もこちらでいきたいと思う。構わない?」

 

「そちらの方が嬉しいよ、アオさん。ありがとう」

 

 アオさんの話し方が普段と違っているのは分かっていた。そしてリンカさんがこの話を振ってきた理由は僕に砕けた口調を求めるとともにアオさんが普段通りの慣れた話し方で話せるようにする機会も作りたかったのだろう。きっとリンカさんが機会を作ってくれなければ僕もアオさんも5日間あの話し方を続けていただろうからね。

 それにしても、やはり事前情報というのは強いものらしい。普通に僕と言ってみたが気づく様子はない。アオさんは何となく違和感を感じているようだけど、リンカさんはまったく違和感を感じていない。

 そして2人とも僕が姉さんの関係者ではないかと考えているのは分かる。しかし本名を晒さないゲームである以上、姉さんの名前を出すわけにはいかない。そうなれば良い確認方法がないので現実に戻ったタイミングで姉さんに聞くのが一番良いと考えているのだろうね。

 

「それでは、このあとについて決めようか。各自自由時間にするか、皆で外を探検してみるか。他にも案があったら言ってほしい。2人とも、どうだろうか?」

 

「私はそのどちらでも問題ないけど、追加の案はない」

 

「そうだね、僕は皆で武器を試すことを提案したいかな。2人とも、その武器を試してみたくない?」

 

 2人とも武器を見てうずうずしているのは分かっている。惹かれたスキルとそれに合った武器、早く試してみたいのだろう。それに僕も魔法銃を試しておきたい。剣と魔法のファンタジー、世界を賭けたゲーム、スキル取得に武器のプレゼントと敵が出現する可能性はとても高い。問題はそれがいつ起こるかだが、正直この家を出た直後に出てきても不思議ではないと考えている。そのため本当は家の中で武器を試したいのだが、これから5日間過ごす家を破損させるわけにもいかない。それにチュートリアルの序盤から勝てないほどの強敵が出現するとは思えないので、ぶっつけ本番になろうとも外で試すべきだろう。

 

「……私はそれに賛成だ」

 

「私も試してみたい」

 

 やはり2人は武器を試してみたかったようだ。これで次の行動は決まったとして、ついでにその次の行動も決めておこう。

 

「うん、決まりだね。それでは武器を試したあとだけど、リンカさんが提案していた通り外の探索を行うべきだと思う。理由はこの家に食料がなかったから」

 

「それは私も確認しているが、ないのならば食べなくとも問題ないのではないかな?」

 

「……リンカ、調理する設備はある。それに空腹によるバットステータスが設定されていた場合がマズイ」

 

 アオさんの言う通り、台所にはなぜか調理器具が揃っていた。僕にとってはかなり重要な調味料さえも。調理ができて食べられるだけと考えてもいいのだけど、アオさんの言う通り空腹によるバットステータスがあった場合を考えると食料を集めておく必要がある。ステータスダウン程度ならまだ良いのだが、継続ダメージや一定以上の空腹による即死などがマズイ。現状ではダメージの回復方法が分かっておらず、死亡した際のペナルティーどころか復活の有無すら分からない。この状況でそれが起こる可能性を考えると探索のついでに行える食料集め、および食料の存在の確認は早めに行っておくべきだろう。

 

「確かにその通りだ。それならばまず、食料集めを優先するかい?」

 

「それはダメだよ。わざわざ武器をプレゼントされたのだから、当然使う機会があるはずなんだ。この中で誰も自分の武器を使ったことがない現状では早めに慣れて、最低でも攻撃できる程度までは扱えるようになっておくべきだよ。空腹の危険度よりも敵との戦闘による危険度の方が大きいからね」

 

「納得したよ。アオもこの順番で構わないかい?」

 

「私も納得した。確かに誰も武器をうまく扱えない現状では、敵との遭遇が予想される探検を初めに行って危険を冒すべきではない」

 

「2人とも、提案を受け入れてくれてありがとう」

 

 探索の移動中に武器を試す方法もあるが、僕としてはできるだけ安全な場所で試すべきだと思う。

 

「それでは予定は決まったな。さっそく外に出て武器を試してみようか」

 

「うん」「そうだね」

 

 2人とも武器は手に持っている。アオさんに関しては矢筒も装備しているので僕から注意を促す必要はないだろう。そして外に出た瞬間に敵に襲われる可能性については言わない方がいいと考えている。実際に起こるか分からないが、ゲーム序盤で突然の奇襲に慣れておくのは悪くないと思うからね。

20150423:

誤字を修正しました。

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