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048-遥か遠い一歩10

 窓から差す太陽の光に目を覚ました。

 ベットから起き上がり、軽く体を動かしてみるが問題なく動く。それどころか以前よりも調子がいいかもしれない。これも楓と翠、そしてユウ君と碧のおかげだ。

 軽快に動く身体に浮かれそうになるが、碧はまだ修練中。そして私達はまだ、試練の途中。一度深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、広間へと向かう。

 

 

 

「凛……凛!」

 

 広間に入るなり私に抱きついてきた碧を受け止める。状況は分からないが、おそらく私が寝たあとに修練を終えてここに来ていたのだろう。

 

「もう大丈夫だ、アオ。心配をかけたな」

 

「ううん、問題ない」

 

 腕の中で私を見上げる碧は、嬉しそうな笑顔を浮かべつつも泣きながら答えてくれた。

 こんなに喜んでくれて、とても嬉しいよ。

 

「アオ、今回は助けてくれてありがとう。このお礼はいつか、必ず」

 

 碧から腕を離して正面へ立ち、感謝の言葉を告げた。

 ユウ君はユウ君であり、碧は碧。同じ考えをしているとは限らない。

 

「友達を助けるのは当然。だからお礼は言葉だけで十分。それにリンカはいつも私を助けてくれているから、その恩返しができて私は嬉しい」

 

 予想はしていたが、やはり君も私やユウ君と同じ考え方をするんだね。

 

「ありがとう、アオ」

 

 今度は私から碧を抱きしめる。碧は抵抗することなく、抱きしめられてくれた。

 

 

 

 少し経過し、碧を腕から開放した。

 

「そうだ、アオ。遅れてしまったが修練突破おめでとう。いつここに来たんだい?」

 

「午前3時過ぎ。ユウ君のご飯を食べたあと一度寝て、さっき起きたの」

 

 その言葉に部屋を見渡すとユウ君は既に広間におり、椅子に座っていた。

 碧に夢中で気が付かなかった……。

 

「おはよう、リンカさん。それでは朝食を作ってくるね」

 

「おはよう、ユウ君。お願いするよ」

 

「ありがとう、ユウ君」

 

 いったい彼はいつから起きていたのだろうか。私がユウ君の部屋に行った時に寝ていたとはいえ、そのあとはずっと起きていたのかもしれない。4日寝ないことを程度とするくらいなのだから、そろそろ碧が修練を終えて戻ってくると考えて起きていた可能性もあるが、碧にご飯を作ったあとは寝たはずだ。

 そこまで考えて問題はないと判断し、広間から出て行くユウ君を見送る。

 

 

 

 朝食後に話し合った結果、すぐ次の試練へ挑戦することに決まった。

 私としては碧にもう少し休憩してほしかったが、碧本人が挑むことを望んでいるのだ。さらに修練中も休憩と睡眠はとっていたし、修練完了後も寝れたので問題はないと。そしてユウ君は、きっとこのタイミングで挑むべきだよ、と。

 確かに残り期間が少ない今、一度挑戦して突破できないにしても早くに試練の情報を知って対策を考えるべきだろう。それでも、私としては無理をしてほしくない。2人が望んでいるのならばと一度納得したが、やはりもう少し休憩をとってから挑んでほしい。

 

「2人とも、やはり休憩をとってから挑まないか?」

 

「リンカ、私は問題ない」

 

 碧は無理をすることがよくあるのだ。いつもは翠が止めているが、今この場に翠はいない。それならば次によく知っている私が止めるべきなのだ。

 

「いや、実は私の調子が微妙なんだ。足が動かせるようになったのも昨夜。もう少し運動をしてこようかと思ってな」

 

「そうなの?」

 

「ああ」

 

「それなら休憩をとろう」

 

 碧を納得させるならば碧に休んでほしいと言うのではなく、私やユウ君が休むべき理由を作るべきだ。それならば碧は納得してくれる。

 

「ユウ君も構わないかな?」

 

「僕は構わないけど、1つだけ言っておくよ。今のアオさんは休憩すると調子が下がっても体調は変わらない。本人もそれが分かっているから今挑戦すべきだと言っていたんだ。そうだよね、アオさん」

 

「その通り。それでもリンカの調子が微妙であるのなら休憩をとるべき」

 

 ……勘違いしていたのは私だったのか。碧は期間が残り少なくて無理をしているのではなく、今が最適だから試練へ挑みたかったのか。

 

「すまない。試練の狭間で10分だけ、身体を動かす時間をもらえればそれでいいよ。それからすぐに挑戦しよう。そして突破してしまおう!」

 

「うん!」

 

 試練の狭間に繋がるドアへと足を進める碧のあとに続く。碧の調子は良く、私とユウ君の調子は悪くない。それならば、突破を目指したい。

 

 

 

 試練の狭間で軽く身体を動かしたが、調子は悪くないどころではなく、良い。朝起きた時にも調子が良いかもしれないと感じていたが、実際に身体を動かしてみるとそれがよく分かった。

 

「2人とも、お待たせ。調子は良さそうだよ」

 

「良かった。私も調子が良い」

 

「僕も悪くないよ。それでは挑もうか」

 

 碧に続き、魔力の素が集まっている試練の扉となる壁へと移動する。

 

『冒険者達に幸運を』

 

 扉をくぐる瞬間、そんな声が頭に響いた。

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