011-曇りのち晴れのチュートリアル10
広間に移動後、3人でチュートリアルに関して分かったことを話し合ったが、みんな聞いていたことはほぼ同じであり、違ったところといえばそれぞれのスキル程度だ。
「ふむ。それではさっそくスキルと技能の確認を行うかい? それとも朝ご飯を食べるかい?」
「朝ご飯はあとの方がいいと思う。空腹値の詳細は分からないけど、満タンを超えてしまうともったいない」
「僕もその意見に賛成かな。それに気になるからね」
「うん、実は私も気になっているんだ。それではスキルと技能の確認を終えたあと朝ご飯にしよう」
予定も決まったので、さっそく家の外に出て各自が昨日練習に使用した案山子へと別れてスキルと技能の確認をすることになった。
「サポちゃん、従魔魔法について解説をお願いできるかな」
『了解しました。従魔魔法とは従魔の魂カードと魔物カードを組み合わせて魔物の体をもった従魔を召喚し、ともに戦うことができる魔法です。カードに関しては実物を見てもらってから説明を行いたいと思いますので、技能の説明から始めます』
従えるではなく、ともに戦う。どうやら従魔魔法は僕の望んでいた通りのスキルだったようで嬉しい。
『従魔魔法の初期技能は6つあり、<<従魔の書>>、<<召喚>>、<<送還>>、<<充填>>、<<登録>>、<<解放>>となります。まずは<<従魔の書>>ですが、従魔魔法で使用するカードを収めた書物を手元に召喚することができます。とりあえず<<従魔の書>>を召喚してみましょう。技能の使用方法は基本的にスキルを装備した状態で技能名を単独で発声するか、メニューのスキル項目から選択することで使用が可能ですので、右手の掌を上に向けた状態で前に突き出してから使用してみてください』
「<<従魔の書>>」
説明通り右手の掌を上に向けた状態で突き出して、<<従魔の書>>と単独で発声すると右手の掌の上に大きめの白い書物が突然出現した。
『それが<<従魔の書>>となります。まずは最後のページを開いてみてください』
指示に従い最後のページを開けてみると、そこには黒いカードが3枚収まっていた。
『何もありま……少し待ってください』
何もありませんね、おそらくそう説明される予定だったのだろう。しかし、僕が召喚した<<従魔の書>>には3枚のカードが収まっていた。もしかしたらレベルがXXなことと関係あるのかもしれない。
『申し訳ありません、1ページ目を開いていただけますか?』
指示に従い1ページ目を開いてみると、そこには黒いカードが8枚収まっていた。最初のページと最後のページ、分けられていることに何か意味があるのだろうか。
『……マスター、マジックポーチに空白のカードと謎の魔石は入っていますか?』
マジックポーチを確認してみるが、指定された2種類のアイテムは表示されていない。
「入っていないね」
『問い合わせました。マスターの場合はそれが正常とのことです。文句を言ってみましたが受けつけてくれませんでした……。申し訳ありません』
どうやらこれが僕の従魔魔法の正常状態らしい。そうなると普通はどうなっていたか気になるところだ。
「文句を言ってくれてありがとう、サポちゃん。これが僕の正常というのなら何か理由があるはずだから、気にしなくても大丈夫だよ。ちなみに普通だと、どんな説明になっていたのか教えてもらっても大丈夫かな?」
『ありがとうございます、マスター。それでは普通の場合について説明します。まず最後のページにカードが収まっていないことを確認していただき、次に最初のページにもカードが収まっていないことを確認していだだきます。そのあとマジックポーチに入っているはずの空白のカードに同じくマジックポーチに入っているはずの謎の魔石を10個<<充填>>していただき、完成した魔物カードを使用して<<登録>>、<<召喚>>、<<送還>>の流れを確認していただく予定でいました』
つまり<<解放>>以外の技能を体験させてもらえる予定だったのか。
「説明ありがとう。この黒いカードについては説明してもらっても構わないのかな?」
『最初のページに入っているカードが魔物カード、最後のページに入っているカードが従魔の魂カードとなります。それ以上は秘匿情報らしく、どうしてカードが黒くなっているかさえも情報が貰えませんでした……。マスター、念のためにメニューのスキルから召喚を試していただけますか?』
メニューのスキルを開き、従魔魔法の<<召喚>>を選択するが何も起こらない。
『ありがとうございます。やはり使用不能カードなのかもしれません。何かしらの条件を満たせば使用可能になるかもしれませんが、仮にそうだとしても条件が分かりません。申し訳ありませんが、残りは実戦なしの説明だけとなります』
「気にしないで。サポちゃんが悪いのではなく、おそらく僕に原因があるのだと思う。それに条件さえ満たせば召喚できる可能性があるのなら、その条件を探してみるよ。教えてくれてありがとう」
『マスター……。分かりました、それでは私は私にできる説明を行わせていただきます』
説明は各種技能、魔物カードの作成、従魔魔法についての3つ。
まず各種技能だが、<<従魔の書>>は実践した通り。
<<召喚>>は指定した従魔の魂カードと<<従魔の書>>に登録された魔物カードをもとに、魔物の体をもった従魔を召喚する。
<<送還>>は現在召喚している従魔を選択して未召喚状態へと戻す。
<<充填>>は空白のカードに魔石と呼ばれる魔物の情報がつまったアイテムを使用して、完成された魔物カードへと変化させる。
<<登録>>は完成された魔物カードを従魔の書に登録する。<<召喚>>の説明にもあったが、登録を行っていない魔物カードは召喚に使用できない。
<<解放>>は<<従魔の書>>に<<登録>>してある魔物カードを解放し、消滅させる。<<解放>>は一見必要ない技能にも思えるが、従魔の書に登録できる魔物カードの限度枚数は何かしらの条件で決まっているらしく、その数を超えて登録することはできない。そんな時に解放を使用して新たに登録できるようにするらしい。僕としては可能な限り使いたくない技能ではある。
そして最後に6つすべての技能を使用する際にはMPを消費する。
次に魔物カード作成について。<<充填>>でも軽く説明があったが空白のカードに魔物の情報がつまった魔石というアイテムを技能の<<充填>>を使用して完成された魔物カードに変化させる。その際に複数個の同じ種類の魔石を使用することがほとんどであり、さらに魔物を特定の条件で倒した際に取得した魔石が含まれていないと<<登録>>が失敗するようだ。普通の場合の説明にあった魔物カードであれば必要な魔石の数は10個。それは初心者用の魔物カードのはずなので、強くなればさらに必要個数が多くなるかもしれないし、条件も難しくなっていくだろう。
最後に従魔魔法について。従魔を召喚するためには召喚する魔物カードに設定されている総コストが従魔魔法スキルのキャパシティを下回っている必要がある。キャパシティを超えて召喚することはできないが、キャパシティさえ下回っていれば複数体召喚することができる。そして召喚数の上限だが、従魔の魂カードの枚数が上限となっているようだ。いくら魔物カードを集めても従魔の魂カードが1枚しかなければ1体しか召喚できない。逆に従魔の魂カードが2枚あったとしても魔物カードが1枚であれば1体しか召喚できない。ちなみに従魔のAIについても聞いてみたが、意識は従魔の魂カードに宿っており、1枚ごとに違う意識が宿っていると言っていたので、AIは従魔の魂カード側を基準にしていると考えて間違いないはずだ。
うん、まさにロマンの塊のようなスキルだ。従魔とともに戦い、倒した魔物から取得した魔石でさらに従魔が強くなる。これに加えて魔物カードの進化や合体などもあるとさらに嬉しいが、AIが設定されている従魔の魂カードは合体してほしくはない。
「説明ありがとう、おおむね理解できたよ」
『はい、また何かありましたらお呼びください。それでは待機しておきますね』
「うん、ありがとう」
とりあえず2人に従魔魔法が使えないことを伝えておかないといけないが、現在2人は案山子相手に技能の練習を行っている。そのため先にシステムの視覚拡張を少し設定しておこう。
視覚拡張は見えている光景に情報を追加表示できる機能。現状の設定だと何も追加表示されないようになっているが、僕としてはHP、MP、それと状態は表示しておきたい。それ以外の要素、たとえば時計なども表示はできるのだが視野を減らしてまで表示しようとは思えない。
視覚情報を設定すると、今までは現実と同じように見えていた光景にHP、MPのバーが追加で表示された光景が見える。状態に関しては何も変化がないが、今が普通の状態なので何も表示されないのだろう。今までHPすら見えていなかったことを考えると、とても嬉しい機能だ。数値で見えない点が少し残念だが、それでも魔法銃の残り使用回数が大雑把に分かるのが嬉しい。
20150422:
誤字を修正しました。