001-開幕
※20160617追記
被りと更新頻度を考えた結果、2幕(今作)の途中を大幅に飛ばして3幕を開始しました。
そのためこちらは3幕の外伝的な扱いとなります。
終幕
・従魔魔法使いのベアリアスワールド・オンライン
http://ncode.syosetu.com/n1669dj/
『いきなりで申し訳ありませんが、世界を賭けてゲームをしましょう』
青く光るその空間で突然頭の中に響いてきた女性のようなその声。
4週間前、国主催の最新型VRMMOゲーム体験イベントへの招待状が家に届いた。それは全国の一定条件を満たす人の中からランダムで選ばれた人に届くものらしく、楽しそうだからと姉とともにイベントへの参加を決めた。
そして今日、期待をしながらイベント会場にやって来たところ、個別の部屋に通されてゲームに関する事前説明を少し受け、実際にゲーム開始となった。その際に少し待ち時間があったことから他の参加者と同時に開始したと予想している。
ゲームを開始するとゲーム内の身体とも言えるアバターの作成を行うこととなり、作成補助アナウンスを聞きながらアバターを完成させた直後に先ほどの言葉が告げられた。
『ルールは簡単です。あなた達が負けてしまったら世界が滅びる。ただ、それだけ』
一瞬ログアウトしようかと検討するが、それはよくないと考えなおす。事前説明でゲーム内では現実時間の720倍の時が過ごせる、そう聞いていたことを思い出したからだ。現時点でログアウトしても、話しを聞き終えてからログアウトしても現実の時間に大差はない。まだゲームの演出とも考えられる今の状況、どうやら少し焦っていたようだ。
『ゲームの演出、そう考えている方が多いとは思いますが、賭けられるのはゲーム内の世界ではなく現実世界。あなた達の日常です』
それにあの人の言葉、『あなたの5日後にまた会いましょう』。あれは明らかに僕がログアウトを検討することを予想しての言葉だ。あの人が関わっているとなればゲーム内で過ごすのが正解なのだろう。どちらにしても、話しを最後まで聞いてみるべきだ。
『疑っている方が多いようですが、信じてもらう必要はありません。私達は参加を強制しない、つまり決定権はあなた達にあるのです。事実、システムコマンドによるログアウトは可能としています』
可能としています、つまり不可能とすることができるとも示しているのだろう。
『しかし注意してください。一度でも自分の意志でログアウトを選択した場合、ゲームへのログイン権はなくなります。あなた達に与えられた機会は1度なのです。そして全プレイヤーがログイン権を失えばあなた達の敗北となり、世界は滅びます』
1度限りのログイン権、いや、参加権。これは事前説明にはなかったので、信憑性が僅かに増したと考えてもいいだろう。しかし、それでも多くのプレイヤーが世界が滅びるという言葉を信じるとは思えない。僕はあの人が関与している事実から信じられるのだが、それは例外。他のプレイヤーからすれば世界を滅ぼすのは不可能だと考えるのが普通だろう。
『それではゲームの説明に移りましょう。まずは本番の前にチュートリアルも兼ねた試練を受けてもらいます。そして試練突破者だけが、世界を賭けたゲームに参加することができます』
単なるチュートリアルではなく、チュートリアルも兼ねた試練。そこで確認はされるのは能力か、覚悟か。
『試練は複数の日程に分けて行います。まずは5日間ゲーム内で過ごしてもらい、その後こちらからあなた達のログアウトを行います。こちらからのログアウトではログイン権を失いませんのでご安心ください。その後の日程はその都度お知らせします』
5日間、やはりあの人は僕に参加することを望んでいるようだ。その先に何を求められているのかは分からないが、この状況ならば参加しても問題はない。それにあの人が何かを望んでいるのであれば、できる限り叶えたい。
『それでは試練を開始したいと思います。また出会える機会を楽しみにしていますね』
その言葉が終えられた瞬間、景色が一転する。