序章~始まりの始まり~
こちらで書くのは初めてです。お手柔らかにお願いします。
薄暗い部屋の中で、パソコンのキーボードをカタカタと打ち鳴らす。
この作業は、昨晩から続けていたらもう窓から日が差していた。
「この作業、終わる気配ないな……。ハァ……。」
神崎悠斗は、そうぼやきながら画面とにらめっこをする。
毎日毎日、複雑な数式相手のバイトは堪えるものだ。
退屈しのぎというか、才能を持て余していたから始めたバイトがこんなに辛いとは……。
しかし、そうも言えない。これをしなきゃ収入源が絶たれる。
画面とにらめっこしていると、コンコンとノックの音がした。
「お兄ちゃん、朝ごはん出来たけどどうする~?」
「ありがとう。今すぐ、行く。待ってて。」 悠斗は、ドアを開ける。すると、愛しの妹がそこに。
妹の名前は、美空。身長は、俺の肩くらいで顔立ちは整っている。綺麗なブラウンの髪。後ろをリボンで結ってポニーテールにしている。俺の一個下で、純粋な性格。家事全般出来るまるで二次元にいるような可愛い妹なのだ。
「美空、朝ごはんはなんだ?」
「今日はね、和食頑張ってみたのー!!」
「おぉ!!そりゃ、楽しみだ!!」
悠斗は、階段を降りながら話をする。
リビングのドアにたどり着き、開ける。すると、悠斗に向かって何か飛びついてきた。
「悠くぅーーーーーーーーん!!」
悠斗はそれを叩いた。「うぎゃ!!」なんて聞いたことないような声出していたが、気にしない。
「もぅ!!酷いなぁ~悠くんは。」
「朝から飛びついてくる親の方が、どうかしてんだよ。」
この飛びついてきたのは、母親である神崎 美歩だ。容姿は、美人の部類に入るだろう。それくらい整っている。妹の美空は、この遺伝子を受け継いでいるんだろう。しかし、そんな美人親子に違いがある。
母は黒髪、妹は茶髪ということだ。母の話だと、茶髪は父さんに似たということだ。
こんな話をしているが、悠斗自身父親のことを覚えていない。
“俺のせい”で小さい時に死んだらしい。
母はきっと恨んでいるだろうが、そんな素振りを見せず、ああやってさっきの様にコミュニケーションをとってくれる。 ああいう態度をとるのは、悠斗が表現出来る最大の愛情の裏返しなのだ。
「お兄ちゃん、どしたの?早く食べないと冷めちゃうよ!!」
あんな考え事していたら、いつの間にか美空が席に着いていた。
「おうおう、焦らすな妹よ。」
そう言いながら、悠斗は席に着く。
「そうね、美空ちゃん早く食べましょうか!!」
母の美歩も席に着く。
「「「いただきます!!」」」
美空が用意してくれた朝ごはんに手をつける。
鮭の塩焼きに厚焼き卵、豆腐とわかめの味噌汁。理想的な和食だ。しかもうまい。さすが我が妹だ、なんて悠斗は思っていた。
「「「ごちそうさま」」」
朝ごはんを食べ終え、悠斗はニュースをボーッと見ていた。
すると、2人が降りてきた。
「悠くん、戸締まりしっかりね。」
朝の言動とは裏腹にピシッと、出来るキャリアウーマンみたいな格好をしている。仕事は、研究所に勤めているらしい。本人が詳しく教えてはくれないのでわからないが。夜、白衣で帰ってくることもあるので大変なんだなと悠斗は思っている。 「お兄ちゃん、行ってくるね!!」
「おう、気をつけてな。」
妹の美空は、高校1年生。制服が素敵な高校へ行ったから、可愛い容姿に相まって凄まじい破壊力を兼ねている。 「お兄ちゃん、いつものお願い……。」
美空は、上目遣いで悠斗を見る。あぁ、可愛いなぁ、なんて悠斗は思っていた。
「いつものな。ほれ、よしよし。」
悠斗は、妹を撫でる。すると、気持ちよさそうに目を瞑る美空を見てまた可愛いなぁなんて。
「それじゃあ、お兄ちゃん。改めて。」
美空は玄関を開ける。すると二人は、息を合わせて、
「「行ってきます」」
「行ってらっしゃい。二人とも気をつけてな。」
バタンと玄関のドアが閉まる。家族を見送った悠斗だが、本人は“ある事情”のため学校へは行っていない。17歳ではあるが……。
徹夜した悠斗は、身体をふらつかせながら階段を上がっていく。 「寝みぃ……やっぱりツラいわ。徹夜して、テンションの高い家族と戯れると、睡魔が凄まじいな。」
悠斗は、そうぼやきながら自身の部屋の扉を開ける。そして、部屋にあるベッドに倒れ込む。
「仕事終わってないけど、いいよね。たまには……」
そう言いながら目を瞑った。
悠斗は、どうやら花畑に来たようだ。どうしていいか慌てていると、目の前に長身のモデルみたいなスレンダーな体型なのだが胸のサイズが凄まじい美少女が立っていた。
『ねぇ、悠斗君?私のお兄ちゃんになって?』
まさか美少女からそんな言葉をもらうとは思ってもいなくて、二つ返事で、
『俺でよかったら、お兄ちゃんにでも何でもなるよ!!』
『キャー!!素敵!!えいっ。』
彼女は悠斗の腕に抱きついた。腕には、あの大きなたわわな胸が当たっているのだ。
『あ……あの、胸当たってるよ……。』
すると、彼女はニッコリ素敵な笑顔を見せ、
『わ・ざ・と、当ててるんだよ。お兄ちゃん。』
『そ……そうか!!わざとか!!グヘヘ…お兄ちゃん幸せだぁ~。』
『私も、幸せだよ!!お兄ちゃん!!』
そこで悠斗は、意識だ途絶えた。
「おにぃ……お兄ちゃん?お兄ちゃんってば!!」
「んん……って、うわぁ!!なんだ美空か……。」
美空は、頬をぷくぅーっと膨らませていた。どうやら怒っているようだと悠斗は察した。
「お兄ちゃん!!なんだとは何よ、もう!!」
「珍しいじゃん。入ってるなんて。いつもは、ノックするのに。」
「いっぱいノックしたけど、反応なかったから入ってきたの!!」
「あぁ……悪い。寝てた。今、何時?」
「今、午後4時だよもう。寝過ぎだよ、全く。しかし、お兄ちゃんニヤニヤしながら寝てて気持ち悪かったよ。」
どうやら、あれは夢だったようだ。夢のニヤニヤが現実にも反映されていたとは……。
「まぁ、ある事情でニヤニヤしてたんだ。何でもない。」
「もう。ある事情って何さ。まぁ、いいや。はい!!届け物だよ。」
美空がこの部屋に来た理由が、届け物を渡しにきてくれたのだった。やっぱり優しい妹だなぁなんて思っていたけど、悠斗は、この届け物に不信感を抱いていた。
悠斗自身には、記憶にないのだ。この届け物が。
「ありがと、美空。」
悠斗は、届け物を受けとる。
差出人は不明。宛先に悠斗の家の住所、受取人は悠斗の名前。それしか書いていない正体不明の届け物。 悠斗一人の部屋に不気味な届け物。
悠斗が思ったのは、恐怖だった。
「中なんだろ……。危ないけど、気になるんだよな……。」
試しに振ってみる。すると軽い音がした。
「変だよなぁ……。」 段ボールの上面のガムテープを丁寧に剥がす。
意を決した悠斗は、ゆっくりと段ボールを開く。
すると、そこには手のひらサイズの箱ととても小さな鍵が存在感を放っていた。 悠斗は箱を手に持ってみる。自分が思う予想以上に重たかったのだ。だった。
質感は、鉄?アルミ?またはそれとは違う何か。悠斗はそう感じた。 そして、一緒に入っていた小さな鍵。力を加えればすぐにポキッと折れてしまいそうなくらい細い。
「これって、この箱の鍵か?」
と悠斗は、箱の側面を探してみる。すると、
「あった……。」
米粒サイズの小さな鍵穴が見つかった。
鍵をその小さな鍵穴に差し込み回そうと思ったが、段ボールの中にふと目に留まるものがあった。
段ボールの中には、手紙が入っていたのだ。
持っていた小さな箱を置き、手紙を手に取る。開くと、数文字の言葉が書かれていた。
『この箱を開けば、善にも悪にも世界が動く……。』
「なんじゃこりゃ……。」
悠斗は、驚嘆した。まるでこれは世界の鍵なんじゃないか。なんて思ってしまった。だが、悠斗は小さな箱に手を伸ばした。悠斗はいたって冷静だ。だが、悠斗の心にある思いがその小さな鍵を回すことになる。
「この鍵穴を回せば、世界が動くんだろ。だったら、良いように廻ってくれよ。俺が、“何も失うことのない世界”に。」 悠斗はゆっくり回した。すると、箱はつんざくような音を発てて開いた。箱は十字に開き、中には核らしき物が肉眼で視ることが出来た。
箱は、その形を維持したまま床に落ちた。
「な……何が起こったんだ……。」
悠斗は、箱に近づきそれを掴む。
よく確認するが、異常はない。
「変な箱だったな……。まぁ、いいや。」
「まぁ、良くないです!!何してくれてるんですか!!」
後ろから凄まじく可愛い声がする。悠斗はおそるおそる後ろへ振り向くと……。
現実世界じゃ絶対見ないような綺麗な羽を生やした少女が、手に腰をあてて無い胸を張っていたのだ。
「なんだよ……これ……夢かなんかかよぉぉぉ!!」
悠斗は、思わず叫んでしまった。
悠斗を変態シスコンキャラになったようなならないような(笑)悠斗は、冷静に闘います。よろしくお願いします!!






