表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

OTHER STORY

その手を差し伸べて──

作者: 睦月火蓮

少女視点です。

私はいろんなものを壊した。自身の野望のため。

けれど、満たされない。何故でしょう?

ああ、そういうことですね。まだまだ足りない。

ここにはもうない。なら、別世界へ。
















どこの世界も、皆弱い。すぐに壊れてしまうのね。

つまらない。最後の一人を壊した。そう思ったら…

あらあらあら。比べ物にならないくらいに強い気が。

「殺気」「怒り」「悲しみ」…わぁ凄い。全部の感情が綺麗に混沌としているわ。

貴方は、私を楽しませてくれる?


さっきまであんなに熱く燃えるようなものだったのに、呆気ない。

…あら? どこかの地図? ああなるほど。彼はこの世界の「英雄」だったわね。

きっとこれから他の「英雄」に会いに行くところだったのね。

残念。だって、もう貴方はいないの。

けど安心して、すぐに仲間もそっちに送るから。


…やっぱりつまらない。ねぇどうして?

お気に入りの黒と紫のドレスも、赤く染まっちゃいました。

でも綺麗。赤は嫌いじゃないから。

赤は「情熱」をあらわすの。そうでしょ?

…あらあら。どうやらまだ一人、残っていたみたい。

いいわ。最後の一人くらい、じっくりと遊んであげます。
















困っている人をほっとけない。それが「英雄」達の特性。

なら、それを利用するだけ。

仲間になったふりをすれば、きっと彼は釣られるでしょう。


ほら。こんなものに簡単に騙される。

私に壊されると知らずに「大丈夫か」って手を差し伸べる。その笑顔で。

でも何故? どこかで満たされるのは。

ううん。気のせい。そんなはずないわ。

そんなことは…


貴方は何故そう笑っていられるの…

他の「英雄」のようにすぐに破壊することができないの…

当たり前にやってきたことがどうして彼に抵抗を感じるの…

どうして…?


…あーらら。遂に襤褸が出て正体がばれちゃいました。

駄目ね。

いずれはこうなることを理解していたのに…

この胸の締め付けは何? 何故そんな顔ができるの? 私には全く理解できないの…
















勇ましく一人で乗り込んできた貴方。やはりね。

貴方の性格からして、仲間に黙って来たのでしょう?

戦う前に私は貴方に約束をした。「勝てたら、今まで壊したものを元に戻す」という。


「──さぁ、私と貴方。二人だけのダンスを…

            最後の戦いを、共に刻みましょう──」


そう言って、互いに手加減無しの真剣勝負。運命を…互いの全てをかけて。








結果…私は貴方に敗れた。

約束通り、全て元通りにした。

けれど…何故でしょう。気持ちがこれほどに満たされるのは。

やっと分かったのですね…

満たされなかったのは…足りなかったのは…


──仲間。


それを教えてくれたのは貴方。

やっと気がついて、涙が溢れてくる。

そんな私に、笑顔で貴方はこう答えた。


「一人は、誰だってつまらないものさ」


初めてであった、あの時のように、その手を差し伸べて──

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ