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超妹理論  作者: 揚羽常時
外伝
94/298

『夜にて統べる星』2


 下校は姉貴と別々になるが登校は姉貴と同じ車に乗るのが常だ。


 いわゆる一つのリムジン。


 車内は広く、幾つもの酒瓶が常備されている。


 俺も姉貴も呑めないのだが……。


(統夜。お勉強)


 ああ、そうだな。


 姉貴には伝わらない思念で六連に答える俺。


(お勉強頑張らないとね?)


 だな。


 俺は肯定する。


(そもそも私と交した契約さえなければ……)


 それ以上は言うな。


 俺は含みを込めて六連の言葉を遮る。


(むう……)


 呻る六連。


 俺が望んだことだ。


 後悔なぞしない。


 それは散々言ったことだ。


(でも……)


 という六連は不満そうだった。


 羽をパタパタ。


 金色の瞳が、


(納得いかない)


 と言っている。


 何でも一つだけ願い事を叶えてくれるんだろ?


 俺はそう皮肉った。


(そうだけど……)


 狼狽えるように六連。


 ならそれでいいじゃないか。


 俺は苦笑する。


(本当に統夜はそれでいいの?)


 真剣な六連の言葉に、


 じゃあ嫌だと言ったら契約を解消してくれるのか?


 と問うてみる。


(無理だけど……)


 答えは想定の範囲内だ。


 なら諦めろ。


 俺は思念でそう言った。


 どうも長年連れ添っているが六連は甘いところがある。


 自身から契約を持ちかけておきながら、俺が契約をすると心配げなのだ。


 情が移った。


 とも言えるし、あるいは、


 惚れた。


 とも言える。


 なんだかんだで十年近い付き合いだ。


 心を傾けるのも当然かもしれなかった。


 六連は俺にだけ声が聞こえ、俺だけが触れる。


 故に俺と六連は既に一線を越えている。


 俺以外に見えないし触れられない以上それは自慰行為に限りなく等しいが、俺にとっては六連との愛の重ね合せと言える。


 まぁつまり脳内彼女ですよ。


 つまらなそうに窓の外を眺める姉貴を見つめ、俺は苦笑した。


(何さ統夜?)


 何でもねぇよ。




    *




 リムジンは瀬野第二高等学校から少し離れた場所にて停車した。


 無論配慮故だ。


 こんなデカ物が正門の前に止まったらはた迷惑この上ない。


 そんなわけで俺と姉貴はリムジンから出ると、少し離れている正門へと足を向けるのだった。


(学校! 学校!)


 六連は嬉しそうだ。


 悪魔は人の思念を好むらしい。


 それに気づいたのはだいぶ前だが。


 さて、


「「「お姉様!」」」


「「「昴様!」」」


「「「昴さん!」」」


 より取り見取りの美少女が正門で酒奉寺昴……つまり姉貴に声をかけるのだった。


 性別は女だが、年齢は一年生から三年生まで多彩である。


「やぁ子猫ちゃんたち。今日もいい天気だね」


 歯の浮くようなセリフを吐く姉貴。


(昴……大人気!)


 だな。


 他に言い様が無かった。


 そんなわけで姉貴がハーレムに構っている間に俺は正門を潜り昇降口にて上履きに履き替える。


 それからクラスに顔を出すと、


「うーっす統夜」


「あ、統夜だ」


「はよっす」


 などとクラスの男子から声をかけられる。


「どうも」


 と返しておく。


 それから自身の席に鞄を置く。


 椅子を引いて座ると、


「おはよ。統夜」


 と隣から声がかけられる。


 美少女と見紛うほどの美少年……百墨真白だ。


 その女顔故に道を踏み外しかけた男子多数。


 女子も多数。


 真白は男でありながら美少女と間違える美貌を持っているのだ。


(真白! 可愛いね!)


 俺にしか見えず聞こえない声で六連が言う。


 まぁな。


 これだけなら真白はモテモテだろうが、手首にリスカの痕を持っていることと妹である百墨華黒ちゃんへの男子の告白を邪魔していることがマイナスに働き、俺以外の友人を持てないでいる可哀想な奴だ。


 とはいえ同情で付き合っているわけでもない。


 真白が面白いから付き合っているのだ。


(統夜は真白が好き?)


 んなわけあるか。


 俺は六連の疑問に即座に否定してのけた。


 そもそも俺には六連……お前がいるだろうがっ。


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