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超妹理論  作者: 揚羽常時
外伝
79/298

『トリックオアトリック』3


 学校が終わりアパートに帰ると一人の魔女が我が家の玄関の前に立っていた。


「………………あう」


 黒いマントに黒くつばの広い三角帽子。


 魔女のコスプレをした金髪セミロングに青い目をした美少女……って、あれルシールじゃん。


 しばらく華黒と一緒に隠れてルシールを観察していると、ルシールは我が家のインターフォンを押そうとしたり、しかし止めたりを繰り返していた。


 そろそろとルシールの背後にまわって、ポンとルシールの肩に手を乗せる。


「うちに何か用?」


「………………真白お兄ちゃん!?」


 そう驚愕して、それからキュウと倒れるルシール。


 僕は慌てて気絶したルシールを抱きかかえる。


 しかしそんなにショックなのか……僕に声をかけられたこと。


 地味に傷つくなぁ。


「ふふふ」


 華黒は楽しそうだ。


「なにか笑うところがあるっけ?」


「ええ、ルシールは相も変わらず可愛いなぁ……と」


 まぁそれは否定しないけどね。


 それから僕はルシールを御姫様抱っこして我が家に持ち込んだ。


 華黒が夕食の準備を始めるのを横目に僕はルシールを僕のベッドに寝かせた。


 ルシールが起きたのは夕食が出来た直後だった。


 僕が勉強机で本を読んでいると、


「………………ううん」


 と呻いて起き上がるルシール。


「お目覚めかい?」


「………………真白お兄ちゃん……!」


「はぁい。真白お兄ちゃんだぞ?」


「………………ここは?」


「僕の部屋」


「………………あう」


 そう言って頬を赤らめるルシール。


 可愛い可愛い。


「兄さん。食事の準備が整いましたよー」


 ダイニングからそんな華黒の声が聞こえてくる。


「ルシール。起きたなら一緒に食事をとろう。今日の華黒の夕食はタンシチューだよ」


「………………ふえ」


 そう言って真っ赤になったまま僕に手を引かれてルシールはダイニングに顔を出す。


 ダイニングテーブルにはタンシチューとトーストとコーンスープが三人分置かれていた。


「………………華黒お姉ちゃん、ごめんなさい」


「謝罪より感謝が欲しいですね」


「………………ありがとう」


「はい。よくできました。では食べましょう」


「「「いただきます」」」


 三人そろってそう言うと僕らは食事を開始した。


 僕はトーストをシチューに浸しながらルシールに問うた。


「それで? ルシールはなんで訪問してきたの? そんなコスプレまでして……」


「………………今日……私の中学でハロウィン祭があって、だからそのコスプレ……」


「なるほどね」


 咀嚼。


 嚥下。


「………………トリックオアトリート」


「お菓子は後であげるね。それよりやっぱりルシールだなぁ」


「………………どういうこと?」


「会う人会う人トリックオアトリックっていうからトリックオアトリートって言葉が新鮮に聞こえるよ」


「………………」


 沈黙するルシール。


「………………真白お兄ちゃん……悪戯されたいの?」


「まさか」


 そう言って僕はシチューをスプーンですくう。


「誰もがお菓子をもらって満足してくれればそれが一番の結末だよ」


「………………」


 ルシールはまた沈黙した。




    *




 ルシールに飴の残り全部をあげてルシールの両親の迎えに乗せて帰らせた後、待ってましたとばかりに華黒が僕にいちゃついてきた。


「兄さん兄さん兄さん! ようやっとこの時が来ましたね!」


「どの時が来たのかなぁ?」


「私が兄さんと結ばれる時です」


「じゃ、僕もう寝るから」


 おやすみ~と言って自分の部屋へと引っ込む。


「トリックアンドトリック!」


 そう言って華黒が僕の部屋に押し入ってきた。


「悪戯してばっかりじゃないか」


「今日は兄さんのベッドで寝ます」


「ちゃんとパジャマが着れるのならね」


「やん。脱がすところから始めたいだなんて兄さんのおませさん……」


「あんまり馬鹿言ってると叩きだすよ」


「なんでルシールにはあんなに優しいのに私には冷たいんですか~」


「ルシールが同じこと言ったら同じこと言い返すよ」


「では私達はいつ結ばれるんですかぁ……」


「自分で自分の責任をとれたらね」


「そんな……! 生殺しです……!」


「ほら、お菓子あげるから。トリートで勘弁して」


 そう言って僕は勉強机に常備してあるガムを華黒に差し出した。


「兄さんがまずガムを噛んでそれを私に口移しさせてくれるってプレイですか?」


「言ってる意味がさっぱりわかんないんだけど……」


 うんざりとそう言う僕。


「とりあえず悪戯は無し。僕と一緒に寝たいのならパジャマを着ること」


「ではせめて腕枕を……」


「まぁそれくらいならいいかなぁ」


「本当ですか!?」


 そう言うと華黒は自分の部屋に引っ込むとクマさんパジャマに着替えて、僕のベッドに飛び込んだ。


「さぁ寝ましょう兄さん! さぁさぁ!」


 僕のベッドの上でバタバタと両足を振りながら華黒が催促してきた。


 はぁ。


 ま……いいんだけどね。


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