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超妹理論  作者: 揚羽常時
外伝
74/298

『七夕祭り』2


「ありがたいお誘いですけど謹んで遠慮します。さ、いこ」


 僕はペコリと一礼してそう言うと、華黒とルシールを引っ張って通り過ぎようとする。


「ちょ! 待てよ! お高くとまってんじゃねえぞ!」


 僕の肩を乱暴に掴む男の一人。


「しつこいですよ」


 そう言ったのは華黒だった。


「兄さんに色目を使ったばかりかその下品な手で触れるなんて、許されざる大罪です」


 キッと睨んで僕の肩から男の手を振り払う華黒。


 手を振り払われた男が華黒を睨む。


「なんだとてめぇ……!」


「あなた方みたいに格の低い男に付き添うほど私達は暇じゃありません。早々に去ることですね」


「なめんなよてめぇ!」


 そう言って男の一人が殴りかかってきた。


 はぁ……。


 気の短い連中である。


 僕は《発症》しようとして、思いとどまった。


 男の拳が華黒に届く前にそれを阻止した人物がいたからだ。


 その人は、ツンツンはねている癖っ毛と自身に満ち溢れた双眸を持った女性だった。


「祭で舞い上がるのはわかるが私の可愛い子猫ちゃんに傷をつけようとするのはいただけないね」


 酒奉寺昴先輩が、そこにいた。


「先輩……!」


「げ……酒奉寺昴……!」


「………………?」


 驚く僕に、ドン引きする華黒、それから展開を読めないルシール。


「なんだてめぇ!」


「可愛い子猫ちゃんを下賤な輩から守るナイトといったところかな」


「ぶってんじゃねえぞてめぇ!」


 そう言って昴先輩に襲い掛かる男三人。


 そこからは惨劇だった。


 殴りかかろうとした男の一人の腕を絡めとり一本背負いを決める昴先輩。


 ハイキックを入れてきた男の一人の膝の伸びきったところに拳を撃つ昴先輩。


 最後の男はおたおたしているところに中指一本拳人中撃ちがきまった。


 こうして男三人が撃沈した。


「ぐう」


「げう」


「ぐげ」


 三者三様に呻く男達を眺めながら髪をかき上げる昴先輩。


「大丈夫だったかい子猫ちゃ……」


「ホワチャア!」


 昴先輩の言葉の途中で華黒が跳び蹴りをかました。無論、先輩に。


 先輩は地面に転がって、それから立ち上がると言った。


「何をするんだ華黒くん」


「何をする? それはこっちのセリフです。よくもまぁぬけぬけと私と兄さんの前に現れたものですね……!」


「私は何か悪いことをしたかい?」


「兄さんの右手……こうまで傷ついたのはあなたのせいだということ……忘れたなんて言わせませんよ!」


 華黒の言は半分正しく半分間違いだ。


 原因の那辺がどこにあろうと傷つくように促したのは僕の脳だ。


「わかっているさ。だから真白くんがまた傷つかなくていいようにこうやって現れたんじゃないか」


「ならその役目はもう終わりました。早々に立ち去りなさい!」


「お、可愛い子がいるね。私の名前は酒奉寺昴だ。君の名前は?」


「………………百墨……ルシール……です」


「百墨ってことは……」


「僕と華黒の従姉妹です」


「へぇ……君達にこんな可愛い従姉妹がいたなんてね。ルシールくん。私のハーレムに入らないかい?」


「………………ハーレム……?」


「この! 酒奉寺昴! 私達の従姉妹にまで毒牙をかける気ですか!」


 そう言ってハイキックをかます華黒。


 先輩はあっさりと避ける。


 それから先輩はルシールのおとがいを持って誘うように言う。


「君みたいな可愛い子がいるなんて……世界は広いな。惚れたよ。ルシールくん」


「………………ふえ……可愛い……?」


「そうだ。君は可愛い。それも格別にね。どうだい。先にも言ったが私のハーレムに入らないかい?」


「………………私、好きな人がいる……から……」


「そうかい。ま、そうだろうね。見ればわかるよ」


 そう言って僕を見つめてフフと笑う先輩。


「ねたましいじゃないか。こんな美少女二人をはべらせて」


「一応言っておきますけど妹と従姉妹ですから。色恋抜きの感情ですよ? 好意的ではありますけどね」


 と、


「昴様!」


 前髪をセンターわけしている可愛い美少女が現れて先輩を昴様と呼んだ。


 十中八九ハーレムの子だ。


「おや……なんだい穂波くん? 今私はルシールくんを口説くのに忙しいんだけどな」


「もうハーレムの子たちの準備は整ってます。皆、雪柳学園の正門で待っていますよ」


「そうかい。ではルシールくんに華黒くん、それから真白くんも、またね」


 そう言って酒奉寺昴先輩は去っていった。


 見れば正門に十五人くらいの美少女達が浴衣姿で集まっていた。


 もしかしてアレ全部が先輩のハーレムなのだろうか?


 考えたらうすら寒くなったので僕は思考を放棄した。


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