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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生三学期編

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背徳の下拵え4


 ピコピコ。


 タッチパネルを押して文章の作成。


「今度の日曜日。午後は予定ある?」


 そんな文面。


「ふむ……」


 素っ気ないような気もするけどご機嫌をとってもしょうがない……と思う。


 ので、送信。


 完了。


 返事はすぐ来た。


「暇ですが……」


 そんな文面。


「今度の日曜日なんだけど」


 つまり三月最初の日曜日。


「午前中に三年生の卒業式があるんだけど、それが終わったらデートしない?」


「お兄様とデートですか!?」


 ネットの向こう側。


 白花ちゃんが興奮した……のだろう。


「駄目?」


 と返信。


 次の着信には数分ほど間があった。


「でも何ゆえ? お兄様にはクロちゃんがいるでしょう?」


 先の数分は訝しがっていたのだろう。


「いくら私でもお兄様がクロちゃんに依存しているのは理解してますよ?」


 そうだね。


 華黒には世話になりっぱなしだ。


 ええと、


「一応バレンタインのお返しと云うことで早めのホワイトデーとしたいのです」


 上手い言葉が見つからない。


 まぁ美辞麗句で飾ってもしょうがないコミュニケーションではあるんだけど。


「チョコ美味しかったよ」


 さらに駄目押し送信。


「本当に本当に本当なんですか?」


「一応華黒は黙らせた」


 暗に、


「納得および理解はされなかったけど」


 とほのめかす。


 華黒は事情を知っているけど、


「なら最低限でいいじゃないですか!」


 という意見。


 気持ちはわかるんだけど、スーパーお金持ちに図書券進呈してもねぇ。


 夜に火をつけて玄関を照らしかねない。


「ふぅん?」


 と白花ちゃんはそんなメールを返信してきた。


 概要は掴めていないだろうけど事情が有ることぐらいは悟っているだろう。


 小学生らしからぬシビアな子だ。


 帝王学を学んできたのだから自然とそうなるのも頷けはするんだけど。


「じゃあ日曜日ね」


「はいな」


 そういうことに相成った。


「やれやれ」


 続けてピコピコ。


 スマホのタッチパネルを操作。


 メールの作成。


「今度の日曜日は暇ですか?」


 送信。


 こちらも返信は早かった。


「君の事情次第だね」


 らしいっちゃらしい。


「ちょっと早いですけどバレンタインのお返しにデートでもどうかと」


 送信。


「ふむ……」


 と返信。


 三点リーダが目についた。


 大方こっちも僕の背後を思案しているらしい。


 色んな女の子と付き合ってきている分経験豊富な直感が何かを告げているのだろう。


 酒奉寺昴先輩とはそういう人だ。


「私と真白くんだけかい? 華黒くんは?」


「華黒は来ません」


「ということは二人きりではないのだね」


 叙述トリックはあっさり見抜かれた。


 恐るべし。


 聡いってレベルじゃないなぁ。


「もう一つ」


「何でしょう?」


「その日は瀬野二の卒業式ではなかったかな?」


「ですから午後からですね」


 しばし返信が来るまで間があった。


「わかったよ」


 承諾のメール。


「いいお話にまとまって安心しました」


「真白くんとデートできるならこれ以上は無いよ。華黒くんもいればこの上なかったけどね」


 あはは……はぁ……。


「ブレませんねぇ」


 しみじみとそんなメールを送ると、


「真白くんの愛苦しさがそうさせるのさ。言っておくけど誤字じゃないよ?」


 そんな返信が返ってきた。


 昴先輩がそう言うのならそうなのだろう。


 少なくとも昴先輩は僕と華黒の過去を知っている。


 その上で華黒を保護したこともある。


 僕に対して偽悪的な言動に出たこともある。


 知識と認識で『あの地獄』を再現することは不可能だろうけど、それでも忌避しないで愛してくれる。


 昴先輩はそういう人だ。


「では後日だ子猫ちゃん? あまりデートの最中にスマホを弄り続けるのもアレなので今夜はここまでとしよう」


 あ、デート中でしたか。


 まぁ愛情仕事無限主義者だからわからないではないけど。


「ちょっと早まったかな?」


 ポツリと失礼な言葉を呟いてしまった。


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