その想いの向かう先3
時間は昼休み。
場所は屋内プールの裏。
それが懸想文の内容だった。
要するに呼び出しの連絡文書だ。
「でも……悪趣味ですよね……」
学食で昼食を取っていると華黒がそんなことを言った。
カモ蕎麦をすすりながら。
「何が?」
とオムライスを食べながら僕。
「………………あう……」
とルシールは平常運転。
「多分、虚無感についてですね」
とは黛の言。
「あう……」
とルシーる水月。
「ふられることがわかって告白するなんて意地悪としか思えません」
これを素で言うからなぁ。
うちの妹は。
「でも真理でしょう?」
さも当然。
そう言う華黒。
「まぁそうだけど」
僕としても否やは無い。
オムライスを一口。
「………………あのぅ……」
とルシール。
「黛さんたちはどうしましょう?」
黛がルシールの憂慮を言葉に変えた。
「ぞろぞろ揃って行ってもしょうがないから待機してて」
僕はそう答える。
「でもそれではお姉さんがひんしゅくを買いませんか?」
「今更だけどね」
「………………あう……」
身に覚えのあるルシールがルシーる。
「俺としては俺の想い人が華黒先輩だって伝えられたらそれでいいんですけど……」
「百合百合だね」
「心は男です」
それについては考えないようにしよう。
ともあれ食事を終えた僕らは(正確には僕と華黒と水月が、だけど)屋内プールの裏手に顔を出した。
待っていたのは一人の少年。
水月の登場に破顔した後、僕と華黒の登場に顔をしかめる。
さもあらん。
お邪魔虫以外の何者でもない。
わかって来ている僕らも何だかな……。
ともあれ少年は告白する。
「水月さん?」
「なんです?」
「好きです……!」
思いのたけを。
水月に惚れたのだということを。
「ごめんなさい」
それが水月の言葉だった。
完全なる拒絶。
完璧なる否定。
そして水月は華黒の腕に抱き着く。
「俺は華黒先輩が好きです故」
レズレズ。
と言っていいモノかどうか。
少なくとも男の人格である水月にはその意識は無いだろう。
子供は産めないけどね。
「そんなわけで諦めてください」
丁寧に断りを入れる水月に、
「華黒先輩は同性じゃないですか!」
少年は激昂した。
「それが何か?」
本当に、
「だからどうした」
と水月は言う。
心の底から。
それはきっと純情で。
それはきっと純粋で。
それはきっと純朴で。
だから偽りのない想いだった。
水月は華黒を愛している。
一目見て華黒に惚れた。
華黒の本質は知らなくても……だからこそ今の華黒を好きでいられる。
そう言ったのだ。
「このレズビアン!」
そんな少年の罵声に、
「それがどうかしましたか?」
飄々と水月。
「私は兄さんが好きなんですけど……」
華黒が僕と水月にしか聞こえない声でボソッと呟いた。
「…………」
水月が悲しそうな顔をする。
が、事実だ。
否定のしようが無い。
「用件は終わりですか?」
ギロチンを振り下ろす水月に、
「……っ!」
絶句する少年。
「それでは」
そう言って水月は華黒の腕に抱き着いたまま、
「行きましょう」
と言った。
とどめの言葉……だったろう……。




