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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生三学期編
284/298

天敵論1


 一月某日。


 今日から三学期が始まる。


 というわけで僕はのそのそと起きて華黒の淹れてくれたコーヒーで温まるのだった。


「はう」


 恋心および愛情増し増しのコーヒーが体内から温めてくれる。


「………………おはよう……お兄ちゃん……」


 おずおずとしたルシールに、


「おはようっす。結局サイクル変えられなかったっすね」


 ケラケラ笑う黛。


 まぁそうなんだけどさ。


「今日の朝ご飯は?」


「………………あう……ホットサンド……」


「うん。楽しみ」


 そしてコーヒーを飲む。


 ニュースを見ながら四方山話をしていると華黒が僕と自身の分のホットサンドを用意してダイニングに現れた。


「いただきます」


 一拍。


 そしてもそもそと朝食を開始する。


「美味しいですか」


「愛の味がする」


 なーんて思っても口にしないのがお兄ちゃん心。


「美味しいよ」


 しっかりと踏みしめて言う。


「あは」


 と可憐にほころぶ華黒だった。


 もはや僕のために料理を作るのがレゾンデートルと云えるのかもしれない。


「…………」


 有難く食べるけどさ。


 もむもむ。


「そういえば水月は?」


「そろそろじゃないですか?」


 時間的に。


 と、


「お出ましか」


 ピンポーンとベルが鳴った。


「はいはい」


 と黛が接客する。


 僕と華黒は食事中。


 ルシールは人見知り。


 なのでたまにこういうことがある。


 いえ。


 いつもは華黒が出るんですけどね?


「おやまぁ」


 と黛の声が聞こえてきた。


「そんな趣味が?」


「似合ってますか?」


「まぁ似合っちゃいるっすけど……」


 何の話だ?


 そんな疑問はすぐに氷解した。


 水月がダイニングに姿を現す。


 瀬野第二高等学校の『女子制服』を着て。


「おやまぁ」


 僕もまた黛と同じ言葉を繰り返す。


「あうぅ」


 スカートの裾を押さえながら恥ずかしがる水月。


 ニーソックスとの絶対領域は奇跡とさえ言えた。


「そういう趣味だったの?」


「違います」


 違うらしい。


 水月はダイニングの五つ目の席に座る。


「おにゃのこだったの?」


「男だと言った覚えはないですけどね」


 叙述トリックって奴だね。


「じゃあ百合百合なの?」


「心は男です!」


「性同一性障害っていうアレ?」


「あう……えと……まぁ……」


 ふにゃふにゃと肯定する水月だった。


 なーんかまだ隠してそうだな。


 正直そう思った。


 ツッコむほど野暮ではないけど。


 しかしそうなると、


「困ったな」


 僕はガシガシと後頭部を掻く。


 眠気なぞとうに失せていた。


「この美少女カルテットと登下校を共にしなくちゃならんのか……」


 刺されても文句言えないなこりゃ。


「兄さんが好きなのは私だけですから問題ないですよ」


「………………あう……」


「もはやカルマですねお姉さん?」


「俺は男です!」


 どの口が言う?


「信じてください華黒先輩!」


「別に納得したからって意見が変わるわけでもありませんしね」


 そんなトドメを刺さんでも。


「うぅ……」


 と水月。


「さて、どうしよう?」


 これは僕の心の声。


 実際瀬野二の女子制服は水月によく似合っていた。


 こうしてみると女の子だったと気づかなかった不明さを恥じ入るほどだ。


 まぁ心が男であるなら僕に惚れることは無いだろうけど。


 と、そこまで考えて、


「じゃあ何で開幕パンチがマウストゥーマウスだったのだろう?」


 そんな疑問が沸き起こる。


「?」


 ホットサンドを咀嚼しながら考えたけど答えは出ず。


 益体のない思案は馬鹿に似る。


 つまり僕も馬鹿だった。


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