表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生三学期編
280/298

新たな隣人6


 そんなわけでお隣さん(ちょっと皮肉成分入り)の引っ越し蕎麦を堪能した後、僕と華黒は水月の部屋を出た。


 とは言ってもお隣であるため、帰るも何もと云う話ではあるのだけど。


 華黒の淹れてくれた紅茶を飲みながら成功哲学の本を読んでいると、


「兄さん、お風呂が沸きましたよ?」


 そんな華黒の進言。


「それから……そのぅ……」


 あうあう。


 そう恥じらう華黒は愛らしかったけどガッツポーズはやめておいた。


 調子に乗らせたら事が事だ。


 愛い奴ではあるんだけど。


 何も恋慕を示すピンクの矢印は一方通行ではない。


 僕だって華黒が好きだし、調子に乗らせない程度に愛情表現もしている。


 が、それはそれとして、今日は色々あった。


 相互理解も必要だろう。


「いいよ。一緒に入ろう」


「っ! はい! えへへぇ」


 可愛いなぁ。


 自慢の妹です。


 えへん。


 ところで水着着用は必須です。


 サービスシーンはこの際カット。


 互いに体を重ね合ってアパートの狭い浴槽に二人で入る。


「兄さんは私のことを好きですよね?」


「そりゃまぁ」


 今更だ。


「嫉妬……とかしましたか?」


「はぁ? 何時?」


「私と水月が……その……デートしているときとか……愛を紡いでいるときとか……」


「ん~。いまいち」


「そうですか」


 ズーン。


 なんて擬音が何処から聞こえてきた。


「嫉妬してほしかったの?」


「はい。まぁ。人並みに……」


「とは言っても華黒が僕以外に靡く姿なんて想像も出来ないからなぁ……」


 ある種の天地真理だ。


 絶対的不等価交換。


 反対に僕が誰かに言い寄られれば華黒は全力で嫉妬する。


 ただしそれは敵意として現れるため、嫉妬のとばっちりがこっちまで届くことは無い。


 基本的にアダム(僕)とエヴァ(華黒)と実のなる樹があればそれで十分だという感覚の持ち主だ。


 蛇なぞ見たら容赦なく矢を射るだろう。


 だから好きにはさせているんだけど、今回は逆の立場だ。


 レアケースと云えるだろう。


「華黒が言い寄られて、真白が嫉妬する」


 口に出して言ってはみるものの、どうにも前節と後節がイコールで結べない。


 どうしたものでしょう?


 ……本当に。


「まぁ華黒の事は好きだよ」


「なんか言葉が安っぽいです」


 不便なツールだよね。


 言葉ってさ。


「まぁ嫉妬してはいいんだけどさ。それだけ華黒は水月に入れ込められるの?」


「………………あう……」


 ルシールみたいに狼狽する華黒だった。


 ルシ~る。


「兄さんは淡泊すぎます!」


「ま、都合上ね」


 もともと自分に対して壊れた身の上だ。


 目の付け所が眉の下にもなる。


 ハーレクインの真似事は僕の十八番だ。


 とはいえ華黒を異性として好きなのも事実で、


「ん」


「ん……っ!」


 華黒に甘いキスをした。


 エア砂糖とエアミルクありありの濃厚なソレ。


「大丈夫」


 華黒の丁寧な黒髪を撫ぜる。


「僕が華黒を手放すなんてありえないから」


 これくらいは言ってもいいだろう。


「兄さん……」


 華黒は瞳をトロンと溶かすと、


「……っ!」


 ギュッと僕に抱き着いてきた。


 ムニュウと華黒の乳房が僕の胸板に押し付けられる。


「兄さん。好きです。愛しています」


「僕も僕も」


「だから……!」


「だから?」


「えっちぃことしましょう!」


「えい」


 コキリ。


 と華黒の首を百八十度回転させた。


 まぁギャグ表現なので支障はないんだけどね。


「大学卒業したら幾らでも相手してあげるから」


「生殺しですよぅ」


「そんなこといわれたってそれくらいの状況が整わないと妊娠されたら不利益が生じるし」


「そーですけどー」


 華黒は不満そうだ。


 僕の言葉に一定の理があるのを認めても花も恥じらう乙女の純情が暴走するのも止められないと……そういうことなのだろう。


 それについては僕も人のことは言えない。


 僕だって少なくとも肉体面は健全な青少年だ。


 体を持て余すこともある。


 が、そんなことはおくびにも見せず、


「まぁその内……ね」


 ぼんやりと結論付ける僕だった。


「うう……兄さんの意地悪……」


 誠心誠意ですが何か?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ