お正月カプリッチオ6
「まったく兄さんは……!」
実家に帰っても華黒はプリプリ怒ってた。
「兄さんが美少年なのは今更ですけど、だからこそああいった場合に気を付けてもらわねば困ります!」
「そんなこと言われてもなぁ」
おでんを食べながら僕。
「何々? 何の話よ?」
食いついてきたのは父さんだった。
あらかたの説明をすると、父さんは腹を押さえてくっくと笑う。
「笑い事じゃないんですけど……」
華黒は冷ややかだ。
「ま、真白ならありうるわな」
僕らのトラウマを知ってるでしょう?
そう言いたかったけど止めた。
泥沼にはまりそうだ。
昆布巻きをもむもむ。
「兄さん」
「なぁに?」
「今日は一緒にお風呂に入りますよ」
「とか言ってるけどどうしますこの妹さん?」
「風呂ぐらい一緒に入ってやれ」
それが父親の言うことか。
「むしろまだ間違いが起きてないのが驚異的なんだが」
それが父親の言うことか。
「ですよね? パパもそう思いますよね?」
「ああ」
ダメだこいつら。
早くなんとかしないと。
というわけで、
「いいお湯ですね」
おでんを食べた後に一番風呂に入る僕と華黒だった。
ちゃんと水着着用。
さすがにそこだけは譲れない。
こっちの理性にもタガがある。
仮に華黒の裸でも見ればいつ外れてもおかしくない。
「じゃあ水着なら大丈夫か?」
と問われれば全然大丈夫じゃないんですけどね。
「に・い・さ・ん?」
「何さ?」
飄々と(表面的には)僕は答える。
「親も公認したことですし間違いに至りましょう?」
華黒は僕に抱き着いてきた。
僕の胸板にムニュウと二つのふくらみが押し付けられる。
あわわ。
六根清浄。
六根清浄。
「ダメ」
何とか絞り出した答えがソレだった。
「パパもママも良いって言ってくれてるんですよ?」
「そうだけど……」
「なら遠慮する何物がありましょうや?」
「華黒を都合のいい女にしたくない……」
「誠実ですね」
残念だけどね。
本当は抱きたい。
キスしたい。
乳房を揉みたいしセックスしたい。
けど心のどこかで引っかかる。
喉の小骨に例えてもいい。
「華黒はさ……怖くないの?」
「何がでしょう?」
「あんな過去があった後にそういうことするの」
「怖いですよ?」
「やっぱり?」
「ええ。でも兄さんと愛を確かめられない方がもっと怖いです」
まぁたしかに僕の言動には熱がない。
だからこそ華黒は僕に好き好きアピールをして気を引こうと一生懸命なのだ。
であるから、
「ご褒美」
僕は華黒にキスをした。
それもしっかりディープな奴を。
お湯とは別の要因で茹だる。
「……ん……ぁ……」
「……う……ぅ……」
唾液を交換して愛を確かめる。
ルシールや黛には見せられないけどね。
「ぷは」
さすがに呼吸が苦しくなって僕はキスを取り止めた。
華黒の顔は真っ赤になっていた。
風呂でのぼせた……わけもなく。
僕に中てられたのだろう。
その程度の客観的な判断は出来る。
「兄さん……大好きです。愛しています」
僕も僕も。
言葉にはしないけど。
「昼間の事は水に流してくれた?」
「ええ。兄さんを信用します」
というかこっちからアクションを仕掛けたわけでもないんだけどね。
言うのも野暮だろうけど。
「今日は一緒の布団に寝ましょうね?」
「嫌」
「何でですか!」
「秘密」
僕は唇に人差し指を当てた。
「強制的に潜り込みます。スニーキングミッションです」
嫌われたいのかな?
この妹は。