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超妹理論  作者: 揚羽常時
二年生三学期編
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お正月カプリッチオ4


 それから統夜を通り過ぎると主賓席(とは言っても立食パーティであるから正確には『席』ではないのだけど)に僕と昴先輩は顔を出す。


 そこには柔和な笑顔をたたえた女性がいた。


 着物を着ている。


 茶髪。


 どことなく昴先輩を想起させるけど年齢的に女性といって問題ない。


「あらあらまぁまぁ」


 女性は昴先輩を見やって、それから手を繋いでいる僕を見やると、


「あらあらまぁまぁ」


 と再度言った。


「どうもお母様」


 と昴先輩。


 お母様?


 首をひねる僕。


「こちらが件の百墨真白です」


 そう言って僕を紹介する。


「あらあらまぁまぁ」


 女性は納得したらしい。


「真白くん」


「何でしょう?」


「こちらは」


 と着物の女性を示す。


「私と統夜の母で酒奉寺真珠と云う」


 さいですか。


「あけましておめでとうございます」


 僕は頭を下げた。


「はい。あけましておめでとうございます」


 真珠さんも頭を下げた。


 視線を交わして、


「本当に男の子なの?」


 疑念を口にする真珠さん。


 言いたいことはわかる。


 僕だって鏡を見れば疑うくらいだ。


「ええ、まぁ」


 他に返答しようがなかった。


「とても可愛らしい子ね」


 それ。


 褒め言葉になってません。


 野暮なツッコミはしないけど。


「真白くん?」


「何でしょう?」


 昴先輩の母親ともなれば、その立ち位置は重要なのだろう。


 少し緊張。


「あなたが昴のお婿さん?」


「違います」


 即否定。


「恋人がいますし」


「あらあらまぁまぁ」


 真珠さんは穏やかに苦笑する。


「違うらしいわよ?」


「今はまだ……だね」


 昴先輩はそう言った。


 今はまだって。


 昴先輩が諦めていないのは重々承知してるけど、青写真で未来を語られてもなぁ……。


「真白くんはそれでいいの?」


「良くありません」


 そこだけははっきりさせておきたい。


「大丈夫だよお母様」


 何が?


「きっと近い将来……真白くんは私に惚れる」


 ……自信満々ですね。


 嘆息する他ない。


「あらあらまぁまぁ」


 真珠さんも何考えてんだか。


「昴をよろしくお願いしますね」


 ええ~?


 この天然母娘に何を語れと?


 そんなことを思ってしまう。


「真白くん? 君は私の王子様だ」


「百合上等の先輩の発言じゃないですね」


「狂おしいほどに愛らしい」


「華黒に刺されますよ?」


「華黒くんになら本望だ」


 これを本気で言うからなぁ。


 嘆息せざるを得ない。


「あらあらまぁまぁ」


 真珠さんも苦笑した。


「愛されてるわね真白くん?」


「業が深いのは認めます」


 ハンズアップ。


「それにしても本当に女の子にしか見えないわ」


 否定はしない。


 僕のせいでもないけど。


 ムスッとする僕に、


「あらあらまぁまぁ」


 と真珠さんが苦笑した。


「もしかしてコンプレックス?」


「ええ。まぁ。人並みには」


「でも酒奉寺を継ぐならこんなお婿さんでも良いわね」


 不和の白坂の血統ですけどね。


 やっぱり言葉にはしないけど。


「昴は結婚する気なんでしょう?」


「ええ」


 即答。


 おーい。


 こっちの意向は?


「なら何としても掴み取ってね? これに関しては制限を設けないから」


「ありがたいお言葉です。断じて行えば鬼神も之を避く……という故事があります。私の全霊を以て真白くんを陥落させて婿に迎えましょう」


 ……多分ツッコミは野暮なんだろうね。


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